織部の遺した「へうげ」はめんめんと続いていく ー 山田芳宏「へうげもの 25」(モーニングKC)

茶人大名・古田織部の戦国末期から江戸時代初期まで、武人から転じて「へうげ」を追い求めた男の物語が、今巻で完結する。

シリーズの後半は、豊臣と徳川との融和を図るために悪戦苦闘している姿が目立っていて、とうとう、その努力も実らず、豊臣家の滅亡を迎えてしまうのであるが、実は・・といった秘史・野史的なところもしっかり盛り込んである。このあたりは、既巻で、信長が非業の死をとげた本能寺の変の犯人を「秀吉」とした本書らしいところが随所にみられる仕上がりとなっている。

【構成と注目ポイント】

構成は

第二百六十三席 BOSSA NOVA
第二百六十四席 Be Free
第二百六十五席 風神RYDEEN
第二百六十六席 DRAGONへの道
第二百六十七席 Greatest GIFT
第二百六十八席 返事はいらない
第二百六十九席 RIDE on TIME
第二百七十席 FRUTA BoA
第二百七十一席 ROUTINE’S MAMA FUNK
第二百七十二席 Summer Breeze
第二百七十三席 棕櫚の影に

となっていて、時代的には大坂冬の陣が終結した直後、1615年5月10日の午後、大阪城の山里丸から秀頼らしき焼死体が発見されるところからスタート。

当然、この死体が本物かどうか徳川方も疑心暗鬼に陥るのだが、そ秀頼一族の捜索は続けながらも

といった風に織部が丹精込めて育て上げた美濃焼や唐津物を破棄させたり、

といったように美濃窯で織部好みの器を焼くことを禁止したり、と豊臣を助ける「人」だけでなく「文化」そのものを抹殺しようとするところに、家康の「へうげ」に代表されるものへの怨恨を感じますね。

ただ、こうした「文化の撲滅」というのは思ったより手強いもので、

といった感じで、絵画で「武」でもって戦を終わらせようとした徳川に対し、「風流を以て 戦を終わらせようとした者がいた」ことを表現しようとする者がいるし、徳川方の中にも、松平忠輝のように

といった武将や、

という感じで、家康のやり方がこれからの「泰平」にマッチしないことを感づいている秀忠のような二代将軍も出てきているので、織部の努力も全くムダではなかったように思えます。

ただ、こういう事態になってくると、助命にすがらず「粋」を通そうというのが古田織部という人物で、処刑を受け入れ、その最期の姿を多くの者に

といった感じで見せることで、自分の価値観を後世に残そうとするあたりに、衰えない曲者ぶりが見えますね。
もっとも、家康のほうも曲者ぶりでは負けていなくて、当初、介錯を命じられていた小堀遠州を押しのけて

と、自ら乗り出してきて、武と文の両巨塔の対決が繰り広げられることになります。

そして、最後の最後で、織部渾身の「へうげ」が炸裂することになるのだが、詳細は原書で確認してくださいな。

【レビュアーから一言】

シリーズの最後は、織部の処刑後、この時代をリードしてきた織田有楽斎、北の政所、徳川家康の死去、そして、織部の残滓を求めて九州・琉球まで旅をしていく岩佐又兵衛と宗箇の姿で終わっていくのだが、当方が注目したのは

という徳川家康の死去の場面で、勝負は「古織」の勝ちとなったように思うのであるがどうでしょうか。

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