何かを始めたい人は”未来食堂”から「ビジネスの秘訣」をすくい取れ ー 小林せかい「やりたいことがある人は未来食堂に来てください」

「未来食堂」といえば、一種類の定食しか提供しない、かなり限定された飲食店でありながら繁盛店で、さらには「まかない」「ただめし」といったユニークなサービスで有名な店なのだが、その経営者である筆者が、自らのビジネスを分析して、「新しいことをやりたい人」に向けた”応援”の本が本書『小林せかい「やりたいことがある人は未来食堂に来てください」(祥伝社)』である。

とかく、こういう成功している人のノウハウ本というと、途中から妙な精神論とか世直し論とかが入り込んできて、ギョッとすることがあるのだが、本書はそういうことはなく、あくまで、何かを始めたいと悩んでいる人への丁寧なメッセージになっているので、純粋に「未来食堂」のエッセンスがすくい取れるビジネス本となっている。

【構成と注目ポイント】

構成は

これから新しいことを始めるあなたへーまえがきにかえて
序章 未来食堂とは
第1章 何かを始める前、知っておきたいこと〜考え方〜
第2章 何かを始める時、やること〜アクション〜
第3章 何かを始めた後、続けるために
第4章 始めたことを、伝えるために
第5章 人が心を動かす瞬間
第6章 注目を集めるということ
第7章 注目された時に気をつけること
特別対談 出口治明氏(ライフネット生命保険会長)×小林せかい(未来食堂店主)
あれから1年経ったあなたへーあとがきにかえてー

となっていて、「まえがき」のところによれば、何かをやる際に必要なステップを①考え方、②やり方、③続け方の3つのパートにわけて伝えるとされていて、「未来食堂」という斬新なアイデアにあふれた飲食店事業の根底に流れる「共通のキモ」を読むことが出来る一冊といっていい。

ちなみに本書は、「未来食堂ができるまで」、「やりたいことがある人は未来食堂に来てください 「始める」「続ける」「伝える」の最適解を導く方法 」に続く三作目である。

まず注目すべきは、新しい事業を考えたり、新機軸を考えたりする「考え方(プランニング)」のところで、多くの人が感じるプランの「ありきたり感」について、筆者によれば

当初はなぜ同じようなアイデアばかり集まるのか不思議だったのですが(例えば『人が繋がる・地域を活性化』は特に頻発します)、おそらくそれは彼らのアイデアが「世の中で″正しい”と思われている概念のパッチワークにすぎないからではないか」と考えるようになりました。(P35)

ということであるらしく、その解決法として

あなたがこの世の中に軋むように感じる,違和感をヒントに、皆が理解できるレベルにまで落とし込み、そのイメージを描いていけば、必ずそれはあなただけの、あなたにしかできない取り組みになるはずです。(P36)

とするところを読むと、「自分なりのこだわり」というものが新しいアイデアを出すときに必須のことで、そのこだわりを確信できるまで煮詰めることが大前提となるのか、と実感する。
ただ、それは、しゃにむに突き進むというものではなく、「私がおかしいと思うのは、「こっちは頑張っているんだからそんなこと言うな」と、現状を変えずに生産性の低い”激務”に溺れることを正当化する姿勢です」ときちんと釘がさされているので、ご注意を。

とはいいつつも、プランニングした後の「行動」の場面で

スタート時点が低くても、どれだけそこから詰め込むかで結果は変わってきます(P74)

未来食堂は、食堂の仕組みを「まかない」『あつらえ」など、すべてひらがな4文字で揃えています。こういったこだわりからか「せかいさんはどうやってこういうネーミングを思いつくのですか?」と聞かれることがよくあります。
偶然ひらめくのでも、考え続けて出るのでもありません。思考がジャンプするまで,2情報を頭にインプットするのです。(P92)

といったところを読むと意外にハードにスパルタ的なのであります。そして、

いろんな人が参加することによるPDCAサイクルは、どの業態でも存在すると思いますが、”まかない”は、一日最大7人の″初心者”が入れ替わり立ち替わり参加する仕組みのため、経験値(PDCAサイクルでいうところのDo)が溜まるスピードがとてつもなく速いのです。PDCAサイクルが速ければ速いほど、どんどん改善していくことは想像に難くないと思います(P113)

といったあたりは、多くのビオジネス本で共通して言われていることで、斬新な飲食業であっても、根っこのところは共通していることが多いようですね。

このほかにも、「まかない」や「あつらえ」「ただめし」といったユニークなサービスや運営で、飲食業界を超えて、ビジネス誌や一般マスコミの注目を集めた「未来食堂」の実例を踏まえた数々のアドバイスが書かれているので、ここらは注目を浴びるかもしtれない人は目を通しておいたほうがよいかも、ですね。

【レビュアーから一言】

ユニークなサービスや事業を始めても、いつの間にかコモディティ化してしまった袋小路に入ってしまうのは、「お笑い業界」だけでなく、我々の普通のビジネスでもよくあること。そういう時に筆者が提案する「5倍ルール」というのがあって、それは

『5倍ルール」とは『自分が提供したい内容の5倍の価格のものに慣れ親しむ』ことです。私の場合、未来食堂のランチは800円(初回のみ900円)ですので、ランチ価格が4000円程度のお店に通い、レシピやサービスを学びます。
800円ランチを出すシェフが他店の800円ランチしか食べないのは、私に言わせると正しくありません。真似は必ず劣化するからです。800円のサービスを真似ても800円以上の価値は生めません。4000円を真似た800円だから価値があるのです。(P119)

ということであるのだが、マンネリに陥らず、常にブラッシュアップしてレベルを保つ手法として参考になるかもしれないですね。

やりたいことがある人は未来食堂に来てください  「始める」「続ける」「伝える」の最適解を導く方法

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