「交渉」の決め手は、「話す」より「聞く」こと ー 本郷陽二「沈黙がコワい人のための聞き上手のコツ」

ビジネスにおける対人系の能力というと、「交渉力」とか「折衝力」といったコミュニケーションに関する能力が一番大事だと言われることが多いのだが、

コミュニケーションに自信のない人たちがよく口にするのは、
「初対面の人と、何を話していいのかわからないから困る」
「沈黙が怖くて、できれば親しくない人とは話したくない」
「どうも会話が続かない。」

といった悩みを持っている人はかなり多いのでなかろうか。

そんな時に多くの人は、自分の言うことをどう伝えるか、あるいは、相手にいかに理解してもらえるか、という「動」の部分に注目することが多いのだが、それよりも「聞く力」をアップしたほうが効果がありますよ、として「聞き上手になるコツ」をアドバイスするのが、本書『本郷陽二「沈黙がコワい人のための聞き上手のコツ」(朝日新聞出版)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

Chapter1 なぜ「話す」より「聞く」なのか
Chapter2 相手が”話しやすい”環境づくり
Chapter3 上手に話を引き出す聞き方のコツ
Chapter4 やってはいけない聞き方とか
Chapter5 聞く力を土台に、会話力をアップ!

となっていて、まず本書では「実は会話が続かない原因のほとんどは、間く側にあると言えます。」「会話をスムーズに運ばせるには、話のナビグーター役となる人間が必要ですが、それはたくさん発言をする人のことではありません。」として、「話すこと」に力を込めてしまう常識にまず疑問符が呈されている。

たしかに、相手の発言を封じて、自分の言うことばかりを主張する営業マンが有能な営業マンであるかというとそうではない例は多々あって、『「優秀な営業マンには一相手7割、自分は3割」という法則がある』というのは、このあたりを示している。特に、政治の場面ではなく、ビジネスの場面では得にその傾向が強いのは間違いない。

で、こうしたことを背景に、

好感度の高い間き方を探ってみると、次のようなポイントが見えてきます。
①すぐに相手の話を否定しない
②抑揚と間を意識して話す
③いつもユーモアを忘れずに

といったことや、

まず大事なのはラリーを続けることですから、途中で話の腰を折ったり、会話を中断さ時々「会話力を磨く」というような言葉を見かけますが、会話力とは、うまく話す力というよりも「スムーズに会話を持続させる力」のことだと思います。

であるとか

自分が聞き手に回ったら、話の主導権は相手に委ねたままにして、話をリードしようと思わないことです

といった「上手な聞き方」のテクニックが、数々示されているので、ここは原書でしっかり習得しましょう。

そして、これに加えて、

皮肉屋にはプライドが高い人が多く、こちらが下手に出て「間かせてほしい」「うかがいたい」という言い方をすれば、悪い気はしません

とか

女性は、こうした一貫性のない、とりとめもない会話が得意なのですが、男性はある程度のところまでくると、まとめたり、結論を出したがる傾向があります

といったタイプ別・ジェンダー別の「上手な聞き方」のコツもアドバイスされているので、ここらは自分の取引先とか環境にあわせておさえておきたいところですね。

【レビュアーから一言】

ビジネスにおける「上手な交渉」というのは、自分の主張だけを押し通すという「剛」の部分だけではうまい交渉とならなくて、相手の主張や希望を汲み取りながらWinWinを目指すというのが、一番上手いやり方であろう。
そんな時「上手い聞き方」のテクニックは、必須の技術として注目すべきなのは間違いない。「会話力」を磨くことに一所懸命なビジネスマンこそ、その補完となる「聞く地力」を本書のアドバイスを参考に磨いてみてはいかがでありましょうか。

初対面でも、相手がどんどん話し出す!  沈黙がコワい人のための聞き上手のコツ
初対面でも、相手がどんどん話し出す! 沈黙がコワい人のための聞き上手のコツ

コメント

タイトルとURLをコピーしました