「失敗」は誰しも嫌なのだが「喉元」すぎれば ー 『飯野謙次「仕事が速いのにミスをしない人は何をしているのか」

「仕事にはミスがつきものだから」と慰められても、心の中では、もっと注意をしておけば・・・といった後悔の気持ちでいっぱいになっている、といった経験ありませんか。とりわけ、近くにかなり完璧に仕事をこなす先輩などがいた日には、自己嫌悪に陥って、モチベーションだだ下がり、といったことになるもの。

そんな「失敗したくない」あなたに向けて、「失敗学」のオーソリティから、迅速な仕事とミスのない仕事をセットで実現する仕事術の数々をアドバイスしてくれるのが、本書『飯野謙次「仕事が速いのにミスをしない人は何をしているのか」(文教社)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

1章 なぜあの人は、仕事が速いのにミスをしないのか?
2章 仕事の質とスピードを同時に上げる方法 入門編
3章 うっかりを防ぐ「最小・最短・効率」の仕事術
4章 メールを制する者が、ビジネスを制する
5章 自分のパフォーマンスを最大まで高める仕事術
6章 「ずば抜けた仕事」の決め手となる人間関係とコミュニケーションのコツ
7章 仕事の質とスピードが同時に上がる逆転の発想法
8章 「自己流・万能仕事術」のつくり方
9章 自己実現を最短でかなえる仕事の取り組み方

となっているのだが、まず最初にガツンと言われるのが、

失敗学会での取り組みを通して見えてくることは、 世の中の事故も不祥事も、「まったく新しいこと」「まったく想定外のこと」が原因で起こることはほとんどない

注意力では、失敗もミスもなくすことができない

ということで、部下や自分のこどもが失敗した場合、「注意力が散漫だったからなどと叱ることがよくあるのだが、どうやら、そういう対策では「失敗」はなくならないらしい。

じゃあ。どうしたらいいの、という点については

実は、個人のミスについて考える際にも、大事なのが、現状の「ミスを起こさないために注意して作業しなければいけないしくみ」から、「注意しないでもミスが起こらないしくみ」に切り替えていくということ

という視点が大原則のようで、これに則って、「付箋を使ったToDoリスト」とか「リマインダーメールの活用」「履歴をつけてメールは返信する」といった具体の手法がアドバイスされているので、詳しくは原書で確認を。

もっとも、

一方で、どんな失敗対策も、この方法をとれば万全、とは残念ながらいえません。なぜならこの方法は、 どんなに徹底してネガティブな要素を考えていっても、その可能性が分析者の知識や思いつきから出ることがない からです。
私たちがこの方法を駆使するためには、日頃から思考を柔軟にして、「どうやったら失敗できるか」「どんな失敗ができるか」を考えておく必要がある わけです。

というように、万全の対策をとったつもりでいても、我々の想像力に限界があるのと、人間は「いやなこと」はあまり考えたくないのが人情というものだから、事前の想定だけに頼り切るだけでなく、臨機応変に動ける「心の余裕」を持っておくことが大事であるように思いますね。

ついでにいうと本書では

たとえこなせない量が割り振られたとしても、そのときには「あなたがもし、その仕事を納期までに終えられなかったら」という前提でリスクヘッジがなされています。それができるから、あなたの上司は「上司」という役割に就いている

といった「組織より」の考察がところどころにあるのだが、当方としては、組織と上司をそこまで信用してはまずいんじゃないの、と思ったところもありますので、ご注意を。

【レビュアーからひと言】

「失敗学」というのは、総じて、何か大きな失敗ごとがあったときに、皆が押し寄せるようにして飛びついてくるのだが、時間の経過につれて人っ子一人いなくなるといった現象が通例化している。ただ、そうした心のスキをついて「失敗」はやってくるもので、いつもピリピリしている必要はないにせよ

私たちが人生を十分に楽しみながら、なおかつ失敗しないための一番のコツは、 失敗しても落ち込んで立ち止まってしまわないこと、そして「試行錯誤」を続けること

といった適度の警戒心を持ちながら、想定できる準備をしておくってのが心構えとして大事でありますね。

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