相手を怒らせずに「反論」するコツを学ぶ ー 斎藤孝「上手に「切り返す」技術」

「和を以って貴しとなず」が国是といわんばかりに教育されてきた我々日本人は、物事を荒立てないことを優先して、相手のいうことを否定したり、逆らったりしながら交渉をまとめていくっていうのは苦手なところが多い。

日本人は、反論されたり、切り返されたりするのを嫌がります。・・・理由は簡単です。自分が否定されたように思うからです。
まして、上司という立場では、会社で部下たちのいる前で反論や切り返しにあうと、恥をかかされたと感じてしまうのです。

ということで、日本の組織において、特に地位の上お人がつくる流れに逆らうのは、かなりの抵抗感を伴うもので、「長い物には巻かれろ」という誘惑にかられてしまうのは、誰しも経験があることだろう。ただ、今の時代、

ビジネスの社会で、そのような姿勢、態度はこれからのグローバル社会の中にあって許されません。反論下手な日本人が国際社会の中で生き延びていくためには、切り返しの意識的な練習が必要となります。
損をしてもいいと思うなら、話は別ですが、ここ一番、大切な局面では、ハッキリと会社の立場や自分の考えを説明し、相手の主張に対して明確な販路にゃ、切り返す必要性がでてくるはずです。

ということで、「良い人」を演じてばかりいるわけには」いかない情勢となっていることは、誰しも感じているところである。ただ、同じ「切り返し」「反論」をするならうまいやり方をしたいよね、ということで「感情面でのシコリを残さず、上手に反論や切り返しの方法はある」と、その手法の数々を教えてくれているのが本書『斎藤孝「上手に「切り返す」技術」(辰巳出版)』である。

【構成とチェックポイント】

構成は

はじめにー人は痛みによって学ぶ
序章 臆せずに自分を主張する
第1章 嫌われない反論、切り返し方を身につける
第2章 相手の立場を理解する
第3章 究極の切り返し技術を知る
第4章 孔子、ブッダ、キリスト、そして文学から学ぶ
第5章 反論、切り返し方の実例解説(ケースタディ)
おわりに

となっていて、「切り返し」「反論」の技術・テクニックがアドバイスされるのが第1章から第3章、うんちくが語られるのが第4章というつくりになっていて、とりあえず、テクニカルなところを身に付けたいよね、という人は第1章から第3章のあたりを中心に読めばいいだろう。

そして、そこで紹介されているテクニックを少々ネタバレすると、まず「反論の態勢」をつくることが」大事で

上手に反論や切り返すためには、まず一歩引いて冷静になることが肝要です

結論は先延ばしにすることで切り返します。つまり、反論に慣れていない方は取りあえず金きゅゆ避難的な方法を取ることです。

であったり

次に有効なのは、流すという技術です。流すというのは、相手に言わせるだけ、言わせといて、とくにことらは、意見とか結論を出さない。
(略)
言いたいことを吐き出させるのがコツです。その不満が爆発している間は、とくに反論や切り返すことは」しません。相手に喋るだけ喋らせて、相手を疲れさせる。そして相手の勢いをそぐという戦略が有効な場合もあります。

ということで、「溜め」をつくって、相手に攻め込まれて蹂躙されることを防止することが決め手のようですね。

ただ、そうやって「溜め」をつくっても、攻め込んでくる人はいるもので、これにまともにぶつかって反論すると、たちまちに戦闘開始となってしまう。そこで本書では

反論や切り返しをしないで、有利になるように会話を動かす方法があります。それが、質問という方法です。
質問をすることで、議論全体をリードすることが可能です、直接的に反論や切り返すわけではにのですが、結果的にはそのようになり、状況を変えていくのです。

要約をする存在がいると、強引に意見を押し通そうとする人がいても、その人の勢いが止まります。加えて、いろいろな意見が出るようになり会議はよい結果をもたらすのです。
要約力のある「ファシリテーター」が、一方的な見解を述べている人に「退治する力」となってきます。一見すると、それは反論しているようには見えないのですが、結果的には反論、切り返しているんと同じ効果をもたらすことになるのです。

といった、まず「柔らかい」戦法が提案されているので、まずはお試しを。
そして、そうやって相手の勢いを削いだら、

言葉を発するとき、言いたいことを二つか三つ考えておくのです。そして喋るときにそれを選ぶという習慣をつくります。

私が大学の授業とか、若い社員を対象とした会社セミナーで、指導していることですが、次から次へと質問されたときに、即座に答えられるように訓練をします。
しかも、15秒で返答ができるようにと、セミナーの出席者には要望します。
(略)
言いたいことが言えて、主張がくどくなり過ぎず、簡潔に伝えられるのです。前置きも少ないし、ポイントだけを言う。
テレビのCMの時間というのは、基本的に15秒に設定されています。

といった準備をしておいて立ち向かうといったことが有効なようですね。このほかにも難し気な「四字熟語」や「諺」を使って相手の鼻を折ったり、厳しいことを言って撃退したりといった「剛」の方法もアドバイスされているので、詳しくは原書で確認してくださいね。

【レビュアーからひと言】

今までの「謙譲が美徳」みたいな雰囲気がだんだんと変わってきていて、ビジネスの場面に限らず日常生活の面でも、それぞれの主張がぶつかり合う、といった場面が増えているように感じるのは、当方だけではないはず。そんなとき、「黙って」いると、いつの間にか相手の主張の染められて後悔することとなるのは明らか。といって「なんでも反対」「とにかくケチをつける」では、人の信頼が得られないのもまた事実。
本書のアドバイスなどを参考に、「うまい切り返し」の技を磨いてみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました