センゴクは、大友勢と合流し守りを固めるつもりなのだが・・・ー 宮下英樹「センゴク権兵衛 8」

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第8巻。

長宗我部の四国攻めのときは、秀吉あてに出された文書が闕字の礼を欠いていたという「いちゃもん」から始まったように、今回も、島津側がとても納得するとは思えない「国分け」の提示に始まっていて、平和に事を治めようとはおもえない筋書きが書かれている「九州攻め」。

そんな「噛ませ犬」的なあつかいにめげることない、派遣軍となるセンゴクや長宗我部の働きぶりと、大友、龍造寺、伊東といった九州の名家の支配層を打ち破って強大化した島津家が、全国統一を目指す豊臣政権とぶつかり合りあう前夜を描くのが本巻。

【収録と注目ポイント】

収録は

VOL.56 国分け
VOL.57 婿取り
VOL.58 九州へ
VOL.59 大友義統
VOL.60 出会い
VOL.61 筑後動乱
VOL.62 戒厳令
VOL.63 合戦場

となっていて、まずは、秀吉と島津との間の「和平」と「国分け(九州の領地配分ですね。この案は、大友の旧領がかなり回復されている上に、毛利、豊臣の直轄領が出来上がってます)」の交渉を、黒田官兵衛とセンゴクとで仕上げてこい、という秀吉からの命令を黒田官兵衛が伝えてくるところからスタート。

もちろん、この交渉のキモは

ということなのだから、まとまらないことを折込済ではありますね。

この九州入りと並行して、センゴクの娘・葛の婿選びが始まります。根来に帰参した「妙算」を慕っていた彼女だが、お年頃にもなり、さらには、いがぐり坊主であった「某」も家督を継いで立派になって、ということで、二人のぎこちない「恋バナ」が始まりますね。

さて、センゴクのほうは、長宗我部勢、十河勢とともに九州に渡り、大友勢と合流し、大友氏が代々本拠としている「府内」に入ります。ところが先代当主の大友宗麟は「津久見」、現当主の大友義統は「臼杵」に陣取っているという、奇妙な布陣となっている。そのわけは

ということであるらしいので、大友家の内部事情はかなり複雑な上に、とても「寒い」状況であるようですね。
さらに、領主である大友家も大友宗麟と義統は、キリスト教の改宗を巡って、親子分断状態という状態である上に、義統の実の弟が謀反を企んでいるらしい、というおまけつきの、家中ガタガタの状態である。

唯一の収穫は、長宗我部の若殿・信親と、仙石家の婿候補・「某」こと田宮四郎の間に友情関係が芽生えたことでありますね。

当時の大友氏の領土である豊前の状況はけして治まったとは言えない有様で、島津の攻勢の中で、次々と島津へ寝返っている状態。秀吉からは「軽率な行動はとるな」と厳命されてはいるのだが、放っておけばジリ貧状態になるのは間違いないという状況である。
この状況に対し、

と分析したセンゴクは

と宣言します。まあ、センゴクらしいといえばセンゴクらしいのだが、これが、急落下への前触れであります。
もちろん、秀吉の命令は「籠城で時間を稼ぎ、秀吉の出馬を待て」というもので、さらに島津家久のことを知るセンゴクの家臣・森長吉も

と、彼を諌めるのですが、どこまで効果があったのかは、次巻以降と史実で明らかになりますね。

【レビュアーから一言】

このまま秀吉の命令に従って「府内」を固めていて、秀吉軍が到着すれば島津勢も幸福せざるを得ず、九州攻めも終わり、といったところで、センゴクが砦の見張り台に登り

といった感想をもらします。

ただ、この後に彼の脳内に去来するのは、戦闘で失った仲間や、戦闘で戦いあった敵と味方の姿で、ここらが、秀吉政権の中心となりつつある石田三成などの官僚群との違いでもあり、センゴクがこれから「命を捨てる」ような行動を起こす原因でもあります。ただ、「戦」の中で人生を過ごしてきた彼にとっては、どうしようもない衝動であったのかもしれないですね。

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