「人生100年時代」とあちこちで言われ始めてから、かなり時間を経過しているのだが、本書で
仕事から解放されて自由に使える時間が増えたのなら、自分のために有効利用してもいいはずです。ところが、気がつけば仕事以外にやることがない。そういう人が多いのかもしれません。
という事情そのままに、時間はできたのだがゴルフ以外何をしていいのかわからない、暇なときはゴロゴロしてTVを見るだけ、果ては奥さんに邪魔者扱いされて・・・、という人は、結構多いのではなかろうか。
そして、若い人は若い人で、スマホゲームとYoutubeばかりで、新しい人と出会ったりするのはためらいがち、といった人も、これまた多いはず。
でも、こうした環境は変えたいんだよね、と思っているあなたに、幅広い活動で有名な教育学者である筆者が提案するのが本書『斎藤孝「可動域を広げよ」(日経プレミアシリーズ新書)』である。
【構成とチェックリスト】
構成は
序章 「人生100年」をどう過ごすか
第1章 可動域を身体で実感しよう
第2章 あなたの視野は、まだまだ狭い
第3章 可動域は挑戦する者に微笑む
第4章 「偶然の出会い」が脳を刺激する
第5章 関心領域を広げる「ハブ本」読書術
第6章 「逆境」は可動域を広げるチャンス
終章 あなたが変われば世界も変わる
あとがきー日本人の可動域は意外に広い
付録 あなたの「人生100年」は大丈夫?-可動域チェックリスト30
となっていて、まず筆者が警告するのが
「自分はこの程度が限界」「もうこの道を進むしかない」「誰が何と言おうと自分が絶対に正しい」などと考え始めたら要注意。
「硬さ」に支配されると、いわゆる「視野狭窄」に陥って好奇心も失い、世界がどんどん小さくなるのです。
ということ。
当方は、これは最近話題の堀江貴文さんの「多動力」のアドバイスとも共通しているように感じていて、今まで「美徳」として考えられていた「この道一筋」的な発想は、否定する必要はないが、相対的な思考として考えておきべきだな、と思うところである。
そして、これは
「幸福」は自分の内側を掘ってもなかなか出会えない。とにかく好奇心を持って意識を外の世界に向けよう。新しい出会いこそ幸福感をもたらす」ということです。
ということで、自分の興味の範囲や行動の範囲を意識して広げる、ということが本書の「可動域を広げる」ということの意識的な第一歩となる。で、これに伴う行動というのは、実はそう固苦しく考える必要はなくて、
アイドルやアニメの歌にチャレンジしてみてはいかがでしょう
であったり、映画を
片っ端から見る。中には傑作も駄作もありますが、どんな作品であれ、そこには自分とはまったく違う何らかの人生があります。それを主人公とともに疑似体験することが、映画の醍醐味でしょう。
といった感じでシャワーを浴びるように見たり、といった感じで、しり込みしたり、えり好みせず、とにかく「来た球は打つ」という、ダボハゼのような姿勢でいることが大事であるようだ。こういう前提にいると、「新聞」も
新間の大きなメリットは、一覧性があること。開けば興味のなかった記事も日に入ってきます。ざっと読むと、世界中で今、何が起きているかがわかる。
世界に対して当事者意識を持ち、自分なりに見識を持つことができます。つまり、知の可動域が大きく広がるわけです。
といったことで、単なる情報収集の手段だけではない別の価値も見つけ出すことができるようですね。
もっとも気ままにふらついていればいい、というわけではなくて、
結局、知識が増えたとしても自分の考え方や感覚、行動様式が変わらないとすれば、その知識は自分の内面を補強するか、もしくは意に沿わずに頭の中を通り過ぎるだけ。
「痛気持ちいい」というプロセスを通っていないわけです。
逆に言えば、自分の可動域を広げようと思うなら、「痛気持ちいい」という状態を自ら生み出す必要があります。つまり、違和感や面倒くささをくぐり抜けるような「チャレンジ」が欠かせません。
であったり、
スポーツにしろ芸術にしろ、上達には大きく二つのアプローチが必要だと思います。いわば「積み上げ方式」と「飛び石方式」です。
まず日々の訓練が不可欠なことは、言うまでもありません。これが「積み上げ方式」です。
しかしもう一つ、外から強い刺激を受けて目標を再設定したり、訓練の方法を大きく変えてみたりという試行錯誤も欠かせません。これが「飛び石方式」です
ということであるようなので、好き嫌いせずにあちこちに顔を出し、情報のシャワーを浴び、その情報によって「痛気持ちいい」咀嚼を自分なりのしないといけない、ということのようですね。
このほか、いかに「身軽さ」を手に入れるか、とか、「良寛和尚」に見習う高齢者の心得とか、いろいろ参考になるTipsは多いので、詳しくは原書で確認してくださいな。
【レビュアーからひと言】
本書の中で、「おっ」と興味を引くのが、『偏愛マップ』。これは、A4の紙一枚に、とにかく自分の好きなモノ、偏って愛しているものを列挙していくもので、本書で実例が掲載されています。
この「偏愛マップ」を定期的に更新してみて、その変化が大きければ可動域が広がっている、逆に変わらなければ可動域が変わらない、狭まっている、というチェックにも使えるので、一度「自分」の世界を確かめる意味でも、一度試してみてはいかがでしょうか。
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