「怒り」の感情をコントロールする秘訣を教えます ー 安藤俊介「アンガーマネジメント実践講座 」

最近、仕事場で怒りの衝動にかられて声を荒げてしまったことや、なにげない会話をしていたつもりが相手に怒られてしまたったり、といった経験をした方はいませんか。本書によれば、最近流行の「働き方改革」にしても「現実には、実際の施策になった時点で、疑間を持たざるをえないものが多くなり、結果、私達がイライラしたり、怒りを感じたりすることが多くなってしまっているのが今の姿」であったり、ワークライフバランスにしても「問題となっているのは、「多様な価値観を尊重する職場で、画一的なワークライフバランスが推奨されていること」です」といったように、なにかと職場のイライラを増やしたり、怒りを感じさせる要因は増える一方であるらしい。

ただ、こうやってイライラしたり、怒りっぽく周囲に当たり散らすのは、なんとかしないといけないような~と思っている人に向けて、「怒り」をコントロールする秘訣についてアドバイスしてくれるのが、本書『安藤俊介「アンガーマネジメント実践講座 」(PHPビジネス新書)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 これからの仕事の必須スキル「アンガーマネジメント」
第2章 アンガーマネジメントの基礎理論
第3章 職場の「突然の怒り」に対処する技術
第4章 「怒りの耐性」を高くする技術
第5章 仕事でも角が立たない!上手な「怒りの伝え方」
第6章 タイプ別・特徴別「他人の怒りの対処法」
第7章 怒りを「明日の活力」に変える方法

となっていて、こうした怒りをコントロールする、というと、とかく感情を沈めましょうとか、グッと堪えるものは堪えて、といった具合に、こちらにかなりの「人格者」となることを求めるものがあるのだが、本書でいうアンガーマネジメントは

アンガーマネジメントでは怒ること自体は全く問題がないと考えています。
アンガーマネジメントは怒らないことではなく、怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らなくて済む、その線引きが上手く引けるようになることです

ということであるのが、そこは当方の少し認識を改めて安心したところで、「アンガーマネジメント」は、道徳的なものというより、「怒り」についての極めて「テクニカル」なものであるようだ。

なので、例えば

怒りの感情というのは、日に見えて表現されている部分はほんの一部分で、実はその怒りの感情の裏には、不安だ、苦しい、寂しい、悲しい、辛い、といった一般的に言うところのマイナスな感情が隠れています。
この隠れた感情を第一次慇情と言います。
怒りの感情は、この第一次感情を上手に伝えることができずに、怒りという感情を使って表現しているといえます。
この仕組みを理解しておくと、怒っている人と上手に付き合うことができるようになります。
なぜなら、怒っている人は怒っているということが一番伝えたいことではなく、その裏に隠れている第一次感情を理解して欲しいと思っているからです。

といった風に、「怒り」というものが起こる「メカニズム」からアプローチしていることろが当方的には斬新に感じたところですね。で、こうした考察に基づいて、まず、自分が「怒りのコントロール」を行うためのテクニック、例えば

これからは怒りを感じる度に尺度を使って温度(点数)をつけていきます。
点数をつけることで、自分の怒りを目に見えるようにすることができ、怒りの感情を扱いやすくすることができます。
その結果、ムダに不安になることなく、冷静に判断する余裕ができ、6秒間待てるようになるのです

という「スケールテクニック」や

自分の気持ちを落ち着かせることのできる魔法の言葉をあらかじめ用意しておき、怒りを感じた時にその言葉を自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせる

「コーピングマントラ」といった「怒りの衝動」をコントロールする手法に始まって、「コアビリーフ」という「怒り」の思考を生み出す心理的要素のコントロール手法が解説されてます。で、こうした「怒り」の衝動と思考のコントロールを学んだ次は、実際に沸き上がる怒りをどうするか、ということで、本書では

・湧き上がってきた怒りにその場で対処する緊急避難的なテクニック
・怒る必要のあることは上手に怒れるように、怒る必要のないことは怒らなくて済むようにする体質改善的なテクニック

にわけて詳述されていて、「緊急避難的なテクニック」では

・怒りを感じたら、数を引き算で書終えて、目の前でおきていることから意識を逸らす「カウントバック」
・自分を元気づける、気持ちを強く持たせる言葉を自分にかける「ポジティブセルフトーク」
・怒りの感情を、色や動作、肌触り、温度といった具体的な「目に見える形」で表現してみる「エクスターナライジング」

といったテクニックが10個紹介されています。また、「体質改善的なテクニック」でも

・怒りを感じたり、少しでもイラっときたら、その場でそれを記録する「アンガーログ」
・自分を活からせるコアビリーフを見つけ出す「べきログ」とか

などの10個のテクニックが紹介されているので、原書で具体のところを確認してください。

このほか、「怒り」の上手い伝え方や、怒っている他人にどう対処するか、といった、「怒り」をマネジメントするコツが豊富にアドバイスされているので怒りっぽい自分をなんとかしたい、と思っている方は、一読しておいて損はありません。

【レビュアーからひと言】

怒りの感情というのは、なくそうと思ってもなくなるものではないし、かといって野放しにしておけば、様々な人間関係を阻害する要因にもなりかねないものなのだが、ビジネスに限らずプライベートにおいても結構扱いが難しいものなのだが、この怒りを「健全な」方向にもっていくことができれば、これほど心強いものはない。

怒りの感情を持つのは人として自然なことです。そしてその怒りを生かすも、怒りに負けるも、自分ですべて選ぶことができるのです。

といった気持ちをもって、本書でアドバイスするテクニックを使ってみてはいかがであろうか。

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