戦国時代随一のジェットコースター人生をおくった男の物語始まる ー 宮下英樹「センゴク 1・2」ネタバレ

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第1Seasonの第1巻と第2巻。

戦国時代の末期、織田信長が天下統一に乗り出していくところから描かれる大長編なのであるが、この時代を描く小説やコミックは、たいてい信長や秀吉、家康といったトップ層か、かれらの側近や軍師として近くにいた黒田官兵衛や石田三成といったところを取り上げることが多いのだが、秀吉の側近とはいっても、戦働きがメインで、しかも大名から一介の浪人までのアップダウンを経験しながらまた復活するという戦国時代でも稀有な人生をおくった「変わり種武将」が主人公という、「変わり種戦国コミック」の幕開けである。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1巻が

VOL.1 権兵衛登場
VOL.2 馬上の武者
VOL.3 信長の指令
VOL.4 殺し合い
VOL.5 天下布武
VOL.6 藤吉郎秀吉
VOL.7 試し合戦
VOL.8 竹林の軍師
VOL.9 藤吉郎の煙管

第2巻が

VOL.10 最強の軍団
VOL.11 激突
VOL.12 形勢逆転
VOL.13 センゴクvs可児
VOL.14 決着
VOL.15 武士への本分
VOL.16 信長への使者
VOL.17 センゴク上洛
VOL.18 お蝶の決意
VOL.19 邂逅

となっていて、まずは斎藤龍興の治める稲葉山城が織田信長に攻められ、落城するところからシリーズがスタート。

本シリーズの主人公「センゴク」こと「仙石秀久」は、織田軍ならぬ負ける側の斎藤勢の下っ端武者である。そんな立場であるから、落城のときも

といった感じでかなり小物感が漂うのだが、

といったふうに龍興の侍女の「お蝶」との関わりができたのが、せめてもの幸いです。城から落ち延びる際に織田軍に突入し

といった力任せの奮戦をするのだが、しょせんは多勢に無勢で捕らえらます。その後、信長のもとへ引き出され、あわや処刑か、といった場面を迎えることに。

ただ、この場面で、今後ライバルとなる織田軍の若武者「堀久太郎」との命をかけた戦闘で健闘し、

といった逆襲をすることで、自らの命を救い、秀吉配下となる「幸運」をもたらします。こうした捨て身の後の幸運は、彼の人生で多く出現していて、「頭」で考えずに直感とやけくそで動くことも大事なのだ、と教えてくれますね。
そして、秀吉配下になって最初の仕事が、秀吉が竹中半兵衛を配下になるよう口説きに行くときの随行なのですが、ここらは通常、秀吉視点でしか語られない逸話を横の方から見ることができて興味深いところ。

そして第2巻では、織田家中での模擬戦での柴田勝家軍との対決が圧巻です。当時、秀吉軍は柴田、丹羽、滝川といった織田のそうそうたる武将たちの中で最弱、そして、柴田隊は「最強」です。

で、この柴田勝家部隊と戦う最強に武器は、秀吉は竹中半兵衛の立てた策略。

これに従って槍部隊30名と弓部隊30名の武器をそっくり入れ替えます。
当然、武器を入れ替えたのでそれぞれが使い慣れていないことは間違いなく、柴田の部隊に押しまくられます。そして、堪らず、武器を捨てて逃げ出したところを柴田隊が追撃。それを見た秀吉隊は、それぞれが元の武器を拾い上げて・・・、

と半兵衛の立てた策が見事ハマります。
ところが、さすが武勇で鳴らす柴田隊は、そのままやられてはいません。武将の一人で槍を使う猛者・可児才蔵が秀吉隊を蹴散らします。そこで、彼に立ちはだかるのは、武器交換の指示を忘れて、弓部隊ながら槍をもったままのセンゴクで・・・、といった展開です。
まあ、戦いの結末はやはり番狂わせはそんなにおきないよね、ということなのですが、あっという間に蹴散らされると思われていた秀吉隊が食い下がったのは半兵衛の策とセンゴクの暴勇にあるのでしょう。

そして、物語は1568年(永禄11年)の信長の上洛の場面に移ります。この上洛は足利義昭を奉じて、三好三人衆と戦い、室町幕府を再興する、大きな歴史的イベントなのですが、本作の関心事項は、斎藤龍興に従って京都にいる「お蝶」とセンゴクが会うことができるか、といったところ。果たして二人は、といった詳細は原書で確認してください。

【レビュアーから一言】

本シリーズは桶狭間で織田信長が今川義元を倒した1567年から始まっているので、すでに信長は徳川家康と同盟し、尾張統一をなしとげ、有力戦国大名として拡大成長をはじめているところから始まっていて、今のところは、日本の高度成長期のような高揚感が漂っています。
これから、その波をとらえて、センゴクは成り上がることができるのか、楽しみな戦国大河ドラマの滑り出しです。

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<センゴク・シリーズの第4Seasonの第1巻はこちらから>

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