悪夢の比叡山攻め始まる。センゴクは脱走し、お蝶のもとへ ー 宮下英樹「センゴク 7、8」

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第1Seasonの第7巻と第8巻。

前巻で浅井、朝倉、斎藤、本願寺で形成する第1次信長包囲網にまんまとはまり込んだところをなんとか逃れたのだが、本願寺の武力と金力の前に翻弄しまくられる信長軍であるのだが、この7巻と8巻で史上悪評の高い比叡山の焼き討ちが描かれる。

【構成と注目ポイント】

7巻の構成は

VOL.60 報恩講
VOL.61 膠着
VOL.62 会いにゆく
VOL.63 各個撃破
VOL.64 望みなし
VOL.65 鳥居兵庫助
VOL.66 焼き討ち前夜
VOL.67 比叡山突入
VOL.68 脱走
VOL.69 にない堂

8巻は

VOL.70 強き者
VOL.71 闘え
VOL.72 死線を超えて
VOL.73 地獄の業火
VOL.74 突破
VOL.75 堪忍な
VOL.76 比叡山陥落
VOL.77 武田法性院信玄
VOL.78 三河徳川家
VOL.79 将棋の駒

となっていて、まず7巻では、本願寺顕如が改めて登場。民衆のまえで説教し、大人気の姿を見せるのだが、

一旦舞台を降りると、戦国大名の冷徹な姿を見せる二面性が印象的ですね。この顕如が取った策が、延暦寺に立て籠もる朝倉、浅井軍を包囲した信長軍の美濃との通路を封鎖して、信長軍の食料を断つという手段にでます。金を湯水のように使って、南近江の豪族や門徒宗を放棄させる作戦で、こういうのは金と宗教を握る「本願寺」でないとデキない技ですね。

この危機を救うのは、もちろん藤吉郎隊なのですが、自らが全滅してしまうかもしれないという恐怖に打ち勝って、信長救援に行くよう藤吉郎の闘志をかきたてたのは、もちろん、我らが主人公。センゴクの脳天気な説得でありますね。

ただ、信長包囲陣は、本願寺の武力と金力でびくともせず、信長は朝倉勢に自分が天下への志を持たないことを宣言して和睦します。こういう時に捨て身の戦いをせずに、敗北宣言を受け入れて時季を待つ、というのが信長のすごさでありますね。

ようやく包囲網を逃れた信長なのですが、そのままおとなしくしているはずもなく、戦力を回復させると、浅井・朝倉を匿った「比叡山」に向かって牙を剥きます。

このとき、比叡山に残った包囲網軍の中に、斎藤龍興に従っていた「お蝶」と朝倉勢の若武者・鳥居景近がいたことが、これからの話を複雑にしていきます。

そして、いよいよ信長の「比叡山攻め」は本格化し、比叡山に籠もる老若男女、武士も僧もすべて殺戮せよ、という命令がくだります。本来なら、こうした宗教施設を攻めるときは、女人や僧侶は逃がすものなのですが

というように苛烈な命令が下ります。比叡山に「お蝶」がいることを知ったセンゴクは、彼女を救うため、藤吉郎軍から脱走することを決意して比叡山に向かいます、そこで出会ったのが、斎藤勢のくノ一・お鹿と朝倉勢の鳥居景近。お鹿に導かれてお蝶のもとへ向かう途中で、鳥居と壮絶な決闘を繰り広げます。

このあたりのアクションシーンは、ぜひ原書で。

この比叡山で、センゴクは

とお蝶と再会できるのですが、再び生き別れとなります。しかも、お蝶は朝倉勢の本拠地へ連れ去られることになり、ますます複雑な成り行きになっていきますね。ちなみに、センゴクに一途に想いをよせる「お鹿」が可愛そうな運命を迎えるのですが、ここらはちゃんと原書で呼んでやってください。

【レビュアーから一言】

フツーは、比叡山攻めは、自らに逆らって浅井・朝倉勢を匿った比叡山へのうっぷん晴らしであるとか、宗教を隠れ蓑にしている寺社勢力の横暴をなんとかするためといったことが語られるのだが、8巻の光秀の解釈によれば、

ということで、しっかりとした戦略であったのですね。
いやぁ、信長という人物は侮れんですわ。

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