センゴク属する藤吉郎隊の突撃によって、浅井勢は崩れるのだった ー 宮下英樹「センゴク 14、15」

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第1Seasonの第14巻と15巻。

第1Seasonの終りとなる、14巻と15巻では、近江の雄として、かつては織田信長の盟友でありながら、金ヶ崎の戦で信長を裏切り、姉川の戦で奇襲作戦で徳川・織田連合軍をあわやというところまで追い詰め、反信長勢力の一大柱石となった浅井長政の率いる「浅井家」の滅亡までが描かれる。

【構成と注目ポイント】

構成は

第14巻が

VOL.130 第二関門畝堀
VOL.131 三者三様
VOL.132 汚し
VOL.133 小谷城の主
VOL.134 花弁
VOL.135 虎口突破
VOL.136 鬨の声
VOL.137 権兵衛の決意
VOL.138 見てみたい
VOL.139 虎口の敵

第15巻が

VOL.140 信長に非ず
VOL.141 虎口突破戦
VOL.142 京極丸
VOL.143 信長と長政
VOL.144 信長と市
VOL.145 長政と市
VOL.146 信長の弟
VOL.147 二つの旗
VOL.148 珍奇の御肴
VOL.149 天下統一の道

となっていて、まずは前巻で、浅井勢の牙城・小谷城の第一関門の大手門を降した藤吉郎軍が、第二の関門の畝堀に攻めかかるところからスタート。

ここで軍師・竹中半兵衛がとった作戦は

ということで、日頃いがみあったり、功を争っている三人の競争心を煽るというものなのですが、センゴクが他の二人の援護射撃をするという助け合い精神を発揮することによって、

自らに対する敵兵を減らす、という奇策が見事成功します。この後、第三の関門は敵の内応にとって陥落するのですが、この内応は「虎口」に藤吉郎軍を導く策略であったことが後で判明します。

この「虎口」にセンゴク、藤堂、加児たちが

と突入するのですが、待っていたのは銃撃や焙烙玉による「光」と「爆音」で、あっという間にほとんどの兵が倒れます。

この危機で活躍するのは、やはりセンゴクで、彼が一人で「虎口」に突入します。もちろん、相手の銃撃に倒れるのですが、瀕死の彼が見た、「虎口」の秘密は

ということで、土壁の低い位置に穴を掘り、銃座を据えた上で、銃を撃つ覗き口だけをあけて再び泥で塞ぐ「隠し銃座」という仕掛けらしいですね。

そして、この鉄壁の守りとも言える「隠し銃座」に向かって、藤吉郎の命令で「捨て身」の攻撃をしかけるのが15巻の幕開け。多くの味方の兵を犠牲にすることを覚悟の戦法で、藤吉郎が武将としてレベルアップをする場面ですね。

そして、この捨て身の攻撃に浅井勢は多くの犠牲者を出して「虎口」を失ってしまいます。これがもとで、長政の父・久政が立てこもる「京極口」が陥落することになり、このままずるずると浅井勢は滅亡に向かって転がり落ちていきます。ただ、浅井勢のうち、若い兵は退却しても、年取った兵は最期まで徹底抗戦するのですが、その理由が

というあたりは、時代に取り残された者の潔さを感じるのは当方だけでしょうか。信長軍の「織田木瓜」の紋が古いものを踏み潰していく象徴と思えるのでしょうか。

で、本編のほうは、ここから、長政の信長に対する回想が続くのですが、なぜ長政が信長を裏切ってしまったのかは

といったことに象徴されているのでしょうか。

そして、いよいよ場面は、小谷城落城のところに変わり、お市の方とともに、本丸と京極丸の間の「大堀切」を挟んで、信長と向かい合った長政は

とお市の方を信長勢に向かった突き放します。「なぜ自分を捨てた?」と怒るお市に方に対し、長政は

というのですが、ここらは無理やりに自分の「お市の方」に対する愛情を断ち切ったというところでしょう。この「お市の方」は後年、再婚した柴田勝家も「天下争い」の場面に連れ出して敗北させることとなるのですから、美人ではあるが男の人生を狂わしてしまう女性でありますね。

【レビュアーから一言】

稲葉山城の攻略から始まった、このシリーズも、Season1の最終話に至って、織田勢の勢力範囲も、尾張、美濃、近江、越前、伊勢、そして京と武田家や毛利家と方を並べるセンゴク時代の巨大勢力にのし上がります。とはいえ、武田も勝頼の代に移行して力を再び蓄えつつありますし、石山本願寺勢力はほぼ無傷のまま健在です。

といったように、朝倉義景、浅井久政・長政の薄濃(漆で固め、金で彩色したもの)を前に、信長はどんな戦略を練っているのか、といったところでSeason2の「センゴク天正記」へ続きます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました