浅井・朝倉滅亡後、仇敵の本願寺がいよいよ織田勢の前に牙を剥く ー 宮下英樹「センゴク天正記 01」

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「センゴク権兵衛」こと「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズのSeason2の開始の巻。

前シリースで、浅井・朝倉や延暦寺といった、信長の天下布武に向けた行動を、突然の裏切りなどによって邪魔をしてきた旧勢力を木っ端微塵にした信長軍が武田・上杉といった強力な戦国大名や、旧勢力の象徴・本願寺とのがっぷり四つの戦いを繰り広げるのがSeason2である。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.1 仙石権兵衛
VOL.2 羽柴藤吉郎秀吉
VOL.3 信長の城
VOL.4 失敗と挽回
VOL.5 武田軍
VOL.6 軍師 竹中半兵衛
VOL.7 石山本願寺
VOL.8 間者働き
VOL.9 権兵衛の災難

となっていた、今までの功績で、美濃本巣・近江野洲を領することになった仙石権兵衛秀久、通称「センゴク」が一向一揆の鎮圧のため、伊勢長島に布陣している藤吉郎の弟・秀次の陣にやってくるところからSeason2が開幕。このあたりは、延暦寺の焼き討ちで悪名を高めた織田勢と、乱暴なことではひけをとらないセンゴクの様子を、このSeasonから読む読者にお披露目するといった出だしですね。

本筋のほうは長島の一向一揆が小康状態になったので、今度は越前敦賀に布陣している羽柴藤吉郎のもとへ参陣するところからが本格的なスタートなのだが、間違って織田勢に抵抗する一向門徒の陣に迷い込んでしまうとことがセンゴクらしいところ。

もっとも、根っからの明るさと屈託のなさで敵陣営で計画されることなく、内部情報を手に入れることができたのは怪我の功名というものですね。
で、なんとか敵陣を脱出して羽柴陣営にたどり着いたセンゴクに対して、藤吉郎から命じられたのが、近江の国友村へ行き、国友藤太郎を味方にしろ、というもの。今の滋賀県長浜市で、当時、堺、根来と並んで鉄砲の一大産地ですね。これから火器を重視する戦術転換を目論む織田勢にはぜひとも味方につけておきたい勢力なのですが実は

といった事情があって、そう簡単には味方になるわけもありません。
ところが、この難局を解決するのが、藤吉郎の「人たらし」の力で

と忙しい中、危険を顧みず、国友籐太郎のもとへ出向いて直接説得を行います。ここらは、竹中半兵衛を口説き落とした時と一緒ですね。
そして、国友を味方にすることによって新作の銃を手に入れた藤吉郎は、これをセンゴクに託して、信長のもとへ届けさせます。陳情の商人やら貴族やら、大量の協議ものを抱える近臣たちを差し置いて、

と信長の興味を引くのですが、この後、センゴクらしいドジなシーンが相次ぐので、ここらは原書で確認してください。

で、物語のほうは、武田勝頼が織田侵攻を始めます。さらに、信長の仇敵・本願寺は武田と結び、越前、長島、石山の本願寺勢で、再び信長包囲網をつくりあげることに成功します。さらに、信長勢がまず伊勢長島へ攻めてくると革新した本願寺顕如は、伊勢長島の願証寺に日本全国から一向門徒を集結させます。この長島の一向宗勢力のもとへ「間者」働きをするよう命じられたセンゴクが忍び込むのですが・・・といったのが巻の後半部分です。

ここから先は、原書のほうでどうぞ。

【レビュアーからひと言】

巻の中ほどで、武田信玄亡き後、武田家を率いることとなった武田勝頼に対し

と老臣、宿老たちが宣言します。神のようなカリスマ性を発揮していた「信玄」の後継となるのですから、カリスマ色のまだ薄い「勝頼」のポジションがこうなるのもしょうがないことなんですが、これが最後のほうまで跡を引いたのが、武田家滅亡の原因でもあるように思います。
代替わりは、少々混乱が起きても、先代を否定する形でないとうまくいかないのかもしれません。

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