高天神城の敗戦で、信長は「殲滅戦への一線を超える ー 宮下英樹「センゴク天正記 02」

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「センゴク権兵衛」こと「仙石久秀」の戦後時代一のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズSeason2の第2巻。

前巻で、武田信玄のカリスマ性を受け継ぐ「シンゲン」としての再生をした武田勝頼によって織田領侵攻が宣言され、さらには、信長の仇敵・本願寺顕如によってまとめ上げられた越前一向門徒・伊勢長島の一向門徒・雑賀衆が武田と手を組んでの包囲網構築が宣言され、再び周囲から敵に攻められる苦境をどう打ち破っていくかが、この巻から始まる。

【構成と注目ポイント】

構成は

VOL.10 粗葉粕太郎
VOL.11 武田軍 高天神城侵攻
VOL.12 権兵衛隊の行軍
VOL.13 戦いに行く意義
VOL.14 信長と家康
VOL.15 時間との戦い
VOL.16 包囲開始
VOL.17 信長の決断
VOL.18 信長を殺せ
VOL.19 ご存分に属し

となっていて、まずは前巻でセンゴクの領内で盗人働きをした仲間から裏切られた、顔の右半分の黒いそばかすのたくさんある、自称「粗葉粕太郎」をセンゴクの部下にするところから開幕。

顔の右半分の「そばかす」といえば、戦国時代ファンの方はご存知のように、「鉄砲打ち」の証みたいなもんですね。ただ、このへんにはセンゴクは全く気付いていませんな。

そして、話をのほうは、織田領攻めを配下に宣言した武田勝頼と本願寺顕如が同盟を結び、武田勢が本格的に織田・徳川へ攻めかかってきます。「信玄の弔い合戦」という位置づけですから、武田勢の意気は上がるばかりでありますね。

で、まず攻められたのは、徳川の高天神城。当然、徳川方は信長に援軍を頼むのですが、回答は

ということで、真面目に援軍しようと思えないような答えですね。この信長の後詰め(援軍)の一員として派遣されるのが、もちろんわれらがセンゴクなのですが、今回は戦らしい戦はないですね。むしろ、高天神城を武田に奪われた後、信長と家康が会見するところのほうが見どころがありますね。この会見は、徳川方の酒井忠次の

といった喧嘩を売るようなところから始まるのですが、二人の前では、酒井が超小物に見えてくる内容です。
こうした徳川を見捨てたような心ならずもの敗戦で信長が決意したものは

ということで、こうした決意を知らずに対陣した伊勢長島の一向門徒こそ不幸ですね。

この長島一向一揆との戦いでは、センゴクは先陣を命じられた羽柴秀長の寄騎として参陣します。
この長島の一向一揆の戦では、信長は織田勢の火器を集めて

といった攻撃で、砦一つ一つを個別に落としていく作戦を展開するのですが、砦に籠もる門徒たちが降伏を申し出たところ、命を助け、その代わりに長島の城に全員が入るように命じます。情け深い措置のように思えるのですが、さて、本意は・・・、ということでこれ以降、信長軍の攻撃が苛烈な殲滅戦に移行したように思えるのですがどうでしょうか。

もちろん、ただ殺されるのを待っている長島の一向門徒であるはずもなく、また助命というのは一箇所に敵兵を集めて一度に殲滅するための騙し討とわかり、信長軍へ向かって捨て身の攻撃を仕掛けてくるので、もう大乱戦です。かなり迫力のある戦闘シーンが連続するので、そこらは原書で確認してくださいな。

【レビュアーから一言】

巻の後半のところで、長島の一向門徒に逆襲される羽柴秀長の軍を救援するのが、センゴク隊なのですが、そこで大きな働きをするのが

と、「そばかす」の銃の腕前です。なぜ彼の銃の腕前がプロ級なのかは、彼が覚醒する前の「杉ノ坊殿、殺(ころし)むるなかれ、・・・むしろ死すべし」という言葉がヒントになるのですが、真相は次巻以降ですね。

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