現代の農業高校女子高生は、信長の天下統一の大黒柱となれるか? - 「戦国小町苦労譚【コミック版】1~2 農耕戯画編」

現代の農業高校に通う女子高生が時空を超えて、過去に迷い込む。迷い込んだのは、戦国時代後半の尾張。ちょうど織田信長がみの攻めをする前の天下一統に乗り出す前夜であった・・・というタイムスリップものが「戦国小町苦労譚」シリーズの第一巻と第二巻が、その「農耕戯画」編。

もともとは「小説家になろう」にWeb連載をされていて、評判が良くて出版化されたものの「コミカライズ版」がこのシリーズである。小説の実写化やコミカライズは、演ずる俳優さんであるとか、描かれる漫画のタッチとかで、原作との乖離とか、イメージの対立とかがありがちなんであるが、本シリーズは、原作の「蘊蓄」の煩雑さを上手く薄めながら描かれていて、読みやすい仕立てになってます。

構成と注目ポイント

構成は、第1巻が

第一幕 邂逅
第二幕 開梱
第三幕 狩猟
第四幕 入浴
第五幕 謁見

第2巻が

第六幕 稲作
第七幕 収穫
第八幕 栽培
第九幕 褒賞
第十幕 余興

となっていて、まずは

といった感じでタイムスリップしてしまうところからシリーズ開幕。
このシーンの前に雨粒のようなものが落ちるシーンはあるのだが、他のタイプスリップものように、マッドサイエンティストのつくった車が登場するわけでもなし、突然のストームに巻き込まれるといったこともなく、地味なタイムスリップである。
タイムスリップしたところがちょうど、織田信長が領内の見回りをしているところで、スマホをみつけた彼から、「南蛮の技術」で登用させることとなる。そこの得体のしれない女子高生を登用することに不安を言い立てる家臣に

というあたりは、お決まりながら「信長らしい」ところである。

で、信長から年貢も滞る村の采配を任され、現代から持ち込んだ

さつまいもを大量生産して村人の栄養改善を図ったり、迷い込んだ狼を手なづけた上に、

といった西洋の武器をつくって鹿などの獣害を激減させたり、大活躍である。そして、かぼちゃやさつまいもの料理に感激した信長からは、小間使の「彩」が派遣されるのあわせて、村で「米を25俵収穫しろ」という難題がくだされる。

ご想像のとおり、この「彩」は、静子の技術や知識の秘密を探るための密偵ですね。こういった素直そうな娘が派遣されるときは「裏」がありますね。

この信長が出した難題「米25俵の収穫」を達成するため、彼女は、

といった器具を使って「正常植え」の技術を駆使したり、明治時代に発明された「回転式除草機」を導入したり、と後世の技術を惜しげもなく使うのだが・・・、といった展開をしていきます。

この1~2巻は、主人公の知識や偶然、現代から、この時代にもってきた「作物」を活用して成り上がっていく展開なので、ワハワハと彼女の行動と、織田や徳川の重臣たちを驚かせたり、屈服させたりといった胸のすく行動を楽しめばいいと思います。

もっとも、歴史的事象を直接変えるのではないにせよ、後世に発明された農業機械を使って作物を大量につくったり、クロスボウを使って害獣駆除したり、普通のタイムスリップものであれば、主人公が悩みこんで躊躇してしまう「時代改変」を”ひょい”としてしまうところは、口うるさい向きは「むっ」とくるところかもしれないのだが、当方としては「あっけらかん」とした時代改変で、主人公が数々の難局を突破していく姿は、「スカッ」とするので、高く評価しておきます。

さらに加えて、話の中で、「静子が栽培に成功した「椎茸」は当時56Kg(15貫目)あれば城が買えるといわれてほどの貴重品であった」といった原作の「蘊蓄」の数々もあちらこちらに出てくるので、歴史についてのTipsを仕入れておきたい方にもおススメしておきます。

レビュアーからひと言

「おっ」と思った”蘊蓄”は、主人公が、信長に城に呼ばれて、他の家臣たちと年賀の儀式に参列するために城の廊下を一列になって歩く

といったところで、当時の人からみたら、現代ではフツーの背格好の彼女でも「大女」で、かなりの迫力がある女性に見えたのだろうな、と推測。きっと、巴御前とか古の女性英雄が出現といったぐらいのショックがあったに違いなく、主人公の静子が村人たちや信長の武将たちを圧倒できたのも、案外、こういう「体格の良さ」のおかげもあったのかもしれません。

【参考サイト】

「戦国小町苦労譚」の原作はこちらのサイトで読めます。

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