ハロウィンに現れたコアラ・マスクの殺人狂を追い詰めろ ー 佐藤青南「ハロウィンの花 犯罪心理分析班 八木小春」

警視庁捜査一課の新米女性刑事・八木小春を主人公にして、ASD傾向の警視庁科学捜査研究所所属のプロファイラー・土岐田秀一、サイコパスの警察庁公安部所属の捜査官・塚本拓海、コンピュータを使った情報収集・分析を担当するハッカー・エイジ、小春の先輩刑事・間柴という一癖も二癖もある警視庁プロファイリングチームの活躍を描く、「犯罪心理分析班 八木小春」シリーズの第三弾が、『佐藤青南「ハロウィンの花 犯罪心理分析班 八木小春」(富士見L文庫)』。

【あらすじと注目ポイント】

今回の事件は、ハロウィンの夜の渋谷のスクランブル交差点で、群馬からこのイベントを目当てにやってきた女性が殺される、というもの。犯人と思われる人物は、ラテックス製のコアラのマスクで顔を隠しての犯行なのだが、たくさんの人出の中で、その女性を「13箇所」も刺して殺すという残虐性で、まさに「シリアル・キラー」の犯行間違いなし、という事件で、ここは「プロファイリングチーム」の出番となるはずなのだが、そこは警視庁の反対派が邪魔をして、操作情報すら届かない・・・、といったスタートである。

まあ、ここらは捜査本部の内通者というか協力者の間柴刑事が、操捜査情報とかも持ち込んできて、土岐田チームが捜査活動を開始、という前巻と同じような動きなのだが、ちょっと違うのは、前巻で土岐田たちと顔見知りになっている間柴が、プロファイリングチームの秘密のラボに頻繁に出入りするようになったこと。さらには、チームのメンバー・エイジも、違法捜査の様子を、間柴に隠そうともしなくなっていて、チームの秘密がバレバレになってしまうのでは、と心配になる筋立てである。

 

本筋の捜査のほうは、エイジのお得意のハッカー技術で、犯人が犯行の時に高価なオーダーメイドのスーツを着ていたり、25万円を超える靴を日常的に履いているといった情報をつかんだり、雑踏の中で躊躇なく殺人を犯していることで、過去にも複数の犯行をしているに違いないと推理し、過去の記事データから推測した犯人像は、能力が高く、実力至上主義の外資系企業で高い地位にあるか、自ら事業を起こして成功している人物というところまでは推測したのだが、それだけでは特定していく材料にはならなくて・・、ということで、いつになく現場捜査は難航しますね。

それでも、事件当夜に犯人が最初に襲おうとして止めた女性の存在が判明するのだが、彼女が隠している「秘密」を暴いて捜査協力させたり、犯人のスーツをつくったテーラーハウスを見つけるのだが、すでに倒産している店内へ無断侵入して顧客名簿を探したり、といった、無茶な捜査で、犯人へと近づいていくのは流石というもの。

そして、真犯人が、今度はクリスマスの日、幕張の巨大遊園地で犯行に及ぼうとすることを推理した小春、土岐田たちは、その遊園地に潜入し・・・、といった感じでクライマックスシーンに突入するのですが、ここから先は原書のほうで。

このほかに

シリアルキラーは事前に組み立てられた緻密な計画を破綻なく成功に導く頭脳と冷静さをもつ「秩序型」から「無秩序型」に移行する

とか

相手を必要以上に攻撃する手口は大きく分けて三通りの解釈ができる。一つは・・相手に並々ならぬ加害感情をもっていた場合。二つ目は腕力がなく、一撃では相手に致命傷を与える自信がない場合。そして最後、たんに相手を傷つける行為に悦びを見出している場合

といった、プロファイリング的なTipsがあちらこちらに散りばめてあるので、そこらを探して読んでも面白いかもしれません。

【レビュアーから一言】

今巻の最初の方で、小春は土岐田に連れられて、「楠木ゆりか」という、十二件の殺人で収監されているサイコパスの女性犯罪者に面会します。ここで、楠木から「いや、もしかしたらあなたもこっと側の人間なんじゃないかと思ったから」と言われて、自分もひょっとしたら、と悩み込んで、これが今巻の捜査にかなりの影響を及ぼすことになります。
この「楠木ゆりか」という名前は、行動心理捜査官・楯岡絵麻シリーズを読んだ方は、記憶に残っているかもしれません。楯岡絵麻シリーズの「サイレント・ヴォイス」にでてくる女性二人組の殺人狂ですね。さらに、土岐田のプロファイリング・チームの一員である公安部所属の「塚本拓海」というのも、そのシリーズにでてくる例の・・、ということで、楯岡絵麻の物語とのシンクロがありますので、絵麻ファンにも嬉しい筋立てです。

 

犯罪心理分析班・八木小春 ハロウィンの花 (富士見L文庫)
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