父の犯した犯罪の真相を、タイムスリップで解き明かせ ー 東元俊哉「テセウスの船 1」

過去に戻って、あの瞬間のあの出来事を変えることができたら、というのは、誰しも思うところで、昔からタイムスリップした人物が過去の歴史を変えてしまったり、タイムパラドックスのために変えたと思っていた歴史がいつの間にか修復されていたり、といったようにSFのテーマとしては確立した分野である。

難しいのは、その歴史を変える動機で、変えてしまった歴史の魅力であるとか、変えたい歴史がどんなものであるとか、といったことが大事になるのだが、父親の犯した(とされている)大量殺人事件の謎を解く、といった家族の不名誉を子どもが晴らすという、タイムパラドックス・ミステリーが、東芝日曜劇場の2020年1月から竹内涼真の主演で放映される、この「テセウスの船」シリーズである。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一話 加害者家族
第二話 1989年1月7日
第三話 交わせない握手
第四話 過去は変わった
第五話 目撃者たち
第六話 変わらない過去
第七話 暴かれた秘密

となっていて、表題の「テセウスの船」というのは、

クレタ合間から帰還した英雄テセウスの船を後世に残すために。修復作業が行われた。古くなった部品を新しい部品の交換していくうちに当初の部品はすべてなくなって、新しいものに置き換わるのだが、では

ということで「同一性のパラドクス」といわれるものですね。これに派生して、交換した部品で、もう一つ船をこしらえたら、どちらが「テセウスの船」なのか?というものもあるようですね。

さて、話のほうは、本シリーズの主人公「心」が妊娠している妻・由紀と、彼の父親が犯した事件を語るシーンからスタート。
その事件というのは、北海道の音臼小学校で、16人の生徒と5人の学校職員、あわせて21名が、オレンジジュース入りの青酸カリで集団毒殺される事件で、その犯人として、当時、その村で駐在の警察官をしていた彼の父親が犯人として捕まり、その後、家族はとんでもない辛酸をなめることとなります。

その最終形が、「心」の妻・由紀がお産のために子どもを残して死んでしまった後、彼女の実家の両親が、孫を連れていくそうになるところで、その話し合いのために北海道へ出向いたときに、タイムスリップに巻き込まれ、事件のおきた1989年に迷い込む、という筋立てですね。

実はこの事件が起きる前に
・村の5歳の女の子が除草剤を誤飲して死亡
・数月経過後、その女の子の姉が行方不明に
・その翌月、村人の変死事件が発生
と矢継ぎ早に事故が起きており、実はこれは「事件では」と心の父親が密かに捜査していた、という伏線がありますね。
で、タイムスリップした主人公は、父親の犯した事件を「変えてしまおう」と思い立つのですが、それは、彼の姉が当時雪の中で遭難し顔が凍傷にかかってしまったのを、早期に救出して軽症におさめたことがきっかけになってます。

これに意を強くして、5歳の女の子の農薬誤飲事件をふせごうと、女の子の家から農薬を盗み出すのですが、どういうわけか、女の子は「農薬」を飲んで死んでしまい、過去を変えることに失敗します。

そして、この事件の捜査で犯人として疑われた彼は、この女の子を、父親が連れ出していたことを知ったり、農薬を父親が隠していることを発見したり、と父親への疑いが強まっていくのだが・・・、といった展開で、シリーズが展開していきます。最後のほうでは、真犯人のものらしい、モノローグもあって、真相はどんどん混迷していく、といった感じですね。

【レビュアーから一言】

今回、タイムスリップする道具立ては、突然、「白い霧」に包まれる、という定番の設定ですね。

こういう時の「白い霧」で有名なのは「バミューダ海域」での船や飛行機の失踪事件で、アメリカ空軍の戦闘機が行方不明になる時、「白い霧」に包まれた、といった無線が入ったというのが、この類の話のリーディングケースになっているのかもしれません。

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