マンガの価値を再定義する ー 堀江貴文「面白い生き方をしたかったので仕方なくマンガを1000冊読んで考えた →そしたら人生観変わった」

毎回センセーショナルな問いと挑戦的な言葉で世間を騒がせる筆者が、今回は、市民権を確立してきたとはいえ、まだまだ陰に回ったところでは軽視されている「マンガ」について、おもいきり、ヨイショしてモチアゲているのが本書『堀江貴文「面白い生き方をしたかったので仕方なくマンガを1000冊読んで考えた →そしたら人生観変わった」(KADOKAWA)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

PROLOGUE 「遊びが仕事になる時代」に漫画が必要なワケ
CHAPTER1 「仕事はセンス」と教えてくれるマンガ
CHAPTER2 想像力は観察力だ
CHAPTER3 人は情報を食べて生きている
CHAPTER4 鉄文という生き方
CHAPTER5 栄光なき天才たちが社会を動かす
CHAPTER6 著者で読むマンガ
CHAPTER7 ”読書家”に負けない知識がつく、実用マンガ
CHAPTER8 いろんな「if」
CHAPTER9 忘れられないトラウマ・マンガ
CROSSTALK 堀江貴文×佐渡島庸平 マンガは新しい「遊び」をつくる

となっていて、冒頭のところで

はまだ存在していない想像上の知識が次々に仕事を生み出し、未来をつくってゆく時代だということだ。今はまだ遊びの中にある想像的知識の中から新しく仕事を生み出していく人が、これからの時代で活躍してゆくのだろうと感じることが最近明らかに増えた。  これからは、遊びが仕事になる時代なのだ。

ということで、基調的には「僕たちはもう働かなくていい」や「情報だけを武器にしろ」と同じ路線で、本書は新しい時代の新しい生き方をするための「読書論」という位置づけであろう。

なので、

そもそもマンガとは、言い換えれば「時短メディア」なのだ。マンガは絵がある分、情報量が多い。文章であれば数行読まなければならないような人物描写や風景描写も、1枚の絵で表現することができる。そうして視覚情報で示されることで、難しいテーマでも理解しやすい。しかも細かなデータは文章で補足することも可能だ。
マンガはこれからの時代に必要なメディアだ。

ということで、マンガは「娯楽」という限られた視点にとらわれがちな当方たちの「常識」を揺さぶってくれるのは、かなり嬉しい知的刺激でもある。そして、マンガの中に筆者はビジネス書顔負けの、様々なアドバイスを見出していて、

やりたいことが見つからないダメな若者の落語家の弟子入り修行を描いた『尾瀬あきら「どうらく息子」』に

読み進めるうち、「幸せの尺度は人それぞれ」だということに何度も気づかされる。給料が多い少ないと一喜一憂する人生よりは、好きなことに集中しているほうが幸せなことは多いはずだ。それは本人にしか分からないことである。この作品はそんな基本的なことを分からせてくれるだけでなく、それを本当に上手く落語の古典にマッチさせたストーリーに落とし込んでいる

といったことを見出したり、『三田紀房「インベスターZ」』で

そもそも起業するということは、イノベーションを起こすことと同義だ。それゆえ今の世の中には存在しないもの、まだ誰もやっていないことが対象になる。作中の私の発言にある通り、「イノベーションは周りの反対から生まれる」のだ

と筆者の「起業論」との共通点を見出したり、といった具合なんである。

筆者の他の著作と同じように、世間の風に気落ちしそうになっているときには絶好のカンフルになるのは間違いない。さらに、筆者オススメのマンガ・リストも紹介されています。

【レビュアーから一言】

本が売れなくなった、日本人の読書にかける時間が短くなったといわれ久しく、書籍の売上も伸びていない印象はあるのだが、

マンガとの出会いをつくっていたのは、昔は雑誌だったんだと思うんです。それか書店の平積みですね。しかし今後はそうした役割が全部キュレーションメディアに移行していくんだと思います。もちろんツイッターやフェイスブックも重要なんですけど、大切なのはキュレーターへのフォローの仕組みですね。たとえば「食べログ」や「Retty」の中でもレビュアーをフォローできる仕組みがある。キュレーションとして誰をフォローするかで情報を取り合っていくようになるんじゃないかな。

最初は「本、売れなくなるんじゃないか?」って思ったけど、実際は逆で、本は売れている。要約を読んで、気に入った本を買って、置いておくんだね。

といったあたりは、書籍のメディアとしての存在価値を再確認させてくれる話である。ここらも、「常識」というやつに巻かれてしまわないようにしないといけないらしいですね。

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