大門美智子の生みの親が教える「失敗のコツ」 ー 内山聖子「私、失敗ばかりなので へこたれない仕事術」

主演の米原涼子さん演じる「大門美智子」の「私、失敗しないので・・」で大人気となった、医療ドラマ「ドクターX」の女性プロデューサーによる「仕事論」が本書『内山聖子「私、失敗ばかりなので へこたれない仕事術」(新潮社)』である。

テレビ会社の生え抜き社員で、こうした人気ドラマのプロデューサーの女性、と聞くとバリバリの隙のないキャリアウーマンで、若い頃から周囲を睥睨した「ブイブイ」言わせる仕事ぶりといったイメージを抱いてしまうのだが、「はじめに」のところによると

そもそもテレビ朝日は記念受験で運良く入った会社だから、ドラマづくりの基本も知らない。コンプレックスの塊のような人間だった。

ということらしく、「失敗ばかり」でもめげないで、ヒット作をつくってきた筆者のアドバイスが期待できる。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 「好き」をあきらめない
第2章 味方を増やす
第3章 失敗するが勝ち!
第4章 本音で向き合う
第5章 ヒットの種を見つける
第6章 成功体験はすぐ捨てる
第7章 すべては「自分」から始まる

となっていて、もともと頑強な「マスコミ志望学生」でもなく、テレビ朝日に入社できたのも、「入社試験でも面接でも、ありのままの自分をさらけ出したら、なぜか受かったのだ」と本人が言うぐらいであるし、しかも入社してからしばらくは「秘書室」で重役の秘書業務をやっていた、というのであるから、プロデューサーとしては異色の経歴には間違いない。

ただ、そんな筆者が、プロデューサーに転身し、人気ドラマをつくれたのは

やりたいことをやりたいなら、多少わがままになった方がいい。
結局、上からは「こいつ、面白いことをしそう」、下からは「この人についていくと面白いことがありそう」、同僚からは「こいつといると面白い」と思われるその信頼が、楽しい仕事を連れてくるのだ。

といった突進力がキモになっているようで、慎重と言われる方々はときには、こうした無鉄砲さを見習うと、目の前の幕がぱっと開くことがあるので試してみたほうがいい。

ただ、幕が開けばすべてが順調、とはならないのが世の常で、筆者の場合も現場スタッフに受け入れられなかったり、信頼され任されたドラマで低視聴率をとって打ち切りになったり、と失敗もかなり多いのだが、

失敗したくない人に限って、キャリアプランを立てたがる。失敗したくない人に限って、何でも効率や合理性を考える。
「でもそんなの、つまんなくね?」と、私は思ってしまう

であったり、

何事もトライ&エラーで学ぶのが一番だと確信もしている。ムダを省いたり、自分のやり方を固定化してしまったりする方が、リカバリーのできない失敗につながることも多いからだ。
嫌なことでも、興味がないことでも、後に役に立つことはたくさんある。約束された未来なんてないのだから、「ムダなことしちゃったな」と後悔する必要は全くないのだ。

といった調子で乗り越えていくあたりは、見習わないといけないですな。

このほか、個性強すぎの人たちが集まるテレビ業界で人間関係をうまくやってきたコツであるとか、ヒットメーカーだかさこそ言える「成功の罠」であるとか、お仕事アドバイスが満載です。

【レビュアーから一言】

こうしたヒットメーカーというと、どんどんとアイデアが湧いてくるものかと思うのだが、本書によると

企画書は、一朝一夕に書けるものではない。
私の場合、企画書は、文章に落とし込む100倍のネタが頭の中にないと書けない。
そのため、街中で聞こえてきた気になる会話があると、本やネットで調べたりしなじみうせしがら醸成させて、頭の中で整理する。その後、企画書にまとめられるようになるまで、半年から一年かかることもある。

ということなので、アイデア出しには、神業というのはないようですね。どうやら、地道にうんうんいって「ひねす出す」しか方法はないのかもしれません。

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