「脳科学」から仕事の効率化を考える ー 菅原洋平「朝イチのメールが残業を増やす」

日本人のビジネススタイルというのは、まだまだ「精神論」優勢のところがあって、長時間働いているほうが頑張っている、であるとか、気合でなんとかしようといったことが、口には出さないのだが、意識の底に染みついているようだ。
そういうビジネススタイルに対して、理学療法やリハビリテーションの経験から得た「脳の働き」の知識を使って、ビジネスパーソンが行動を変えたり、一番効果的な働き方についてのアドバイスをしてくれるのが、本書『菅原洋平「朝イチのメールが残業を増やす」(日経プレミアシリーズ)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 「睡眠」からはじまる働き方改革
第2章 重要な仕事は午前中に済まそう
第3章 一度に2つのことはやめてみる
第4章 「視覚」を使ってできる人になる
第5章 「言葉」で脳を動かす
第6章 いつも「やる気満々」でいるために

となっていて、本書でまず提案されるのは「睡眠」についてで、一昔前は「徹夜でどうこう」といった睡眠時間を削って仕事をすることが賞賛された時代もあったのだが、いまどきのパフォーマンス重視のビジネス社会では、睡眠不足がもたらす注意力や集中力の低下のほうが問題。いかに良質の睡眠をとって体調管理をするか、が問われるようになっているのだが、本書の
①眠くなったらベッドに入る
②就寝をそろえるより起床をそろえる
③本番の睡眠前にうとうとしない
や、「気象から4時間以内に光を見て、6時間後に目を閉じ、11時間後に姿勢をよくする」という「4-6-11の法則」なんかは、実践例として参考になるのではなかろうか。

次に注目しておきたいのは「脳の時間割にあわす」という視点で、「人間に備わっている時間割、つまり体内時計に合わせてスケジュールを機見直せば、自然と発揮できるパフォーマンスが上がる。」といった考え方に基づくと

私たちは、日覚めて2時間後あたりに、思い切った決断ができる状態になります。
この時間は、男性ホルモンであるテストステロンが増えます。
(略)
テストステロンはこういった特定の状況下でも増えるホルモンで、もともと増えやすい時間帯があります。それが起床2時間までなのです。それならば、この時間に大きな決断をしましょうというのが、脳の時間割に合わせた働き方です。

であったり、

1日のうちで、もっとも記憶力が高まる時間帯は、起床から3時間後です。この時間帯は、新しいことを覚えるのに最適です。先ほど、朝イチのメールチェックをやめてみることを提案しました。出勤した直後あたりが1日のうちで記憶力がピークになる時間帯ですから、ここは、もっとも大事なことを覚える時間にしたいところです。
(略)
自ら想定外の仕事を呼び込むのを避けてみましょう。前述の朝イチのメールチェックで、すぐに回答しなくてもよいメールに返信したことによって、やることが増えてしまい、本来やろうと思っていたことができなくなるのは、脳の時間割から見ると、もったいない力の使い方です。

といったあたりは、「真逆のことをやってるな」と思い当たる方も多いのではなかろうか。さらには、、お互いの親密さに作用するセロトニンという物質は、他幸感をつくり、セロトニンが増えると気分がよくなる効果があるのだが、この物質は15時あたりに増えるリズムがあるので、言いにくいことをこの頃に伝えると、ギスギスした感じになりにくくなるといいったアドバイスは、どこまで効果があるかは別にして、試してみても損はない感じがする。

このほか、仕事ができる人になるには「スモールステップをつくるのが秘訣」であるとか、「脳の「場所」と「行為」をセットで記憶するという特徴」のうまい使い方とか、うまくいっているアスリートや起業家に共通するのは

両者に共通するのは、何をやっても、常に「本番」ではなく、未来への「練習」ということです。このことを表面的にとらえると、「高い目標を持つことが大事」と思うかもしれません。しかし、先程の脳の仕組みからみれば、日標の高さや意識の高さが重要なのではありません。日の前の課題の1つ上を見ることが重要なのです。

といったものなど、ビジネスの現場で即座に使えるものもたくさんあるので、一読しておいて損はないであろう。

【レビュアーからひと言】

ビジネスの効率化や仕事のパフォーマンスを上げる話になると、「やればできる」論が頭を持ち上げてくるのが常なのだが、このあたりは

脳は特別な存在なのではなく、ただの内臓です。脳を胃と同じ内臓だと思えば、食べれば食べるだけン王録画上がるなどということはありません。情報を食べた分だけ消化をすることが必要です。脳に消化する時間を与えることは、間食を控えるのと同じ位置づけです。

といったように、生物学的な特徴を考慮にいれておかないと足をすくわれてしまうことになるのはよくよく認識しておかないといけないだろう。仕事術を語る上で、こうした医学的、脳科学的な知識には常に気を配っておきたいものですね。

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