「ゆいか」はリモート推理で犯人探し ー 水生大海「ランチ探偵 容疑者のレシピ」

住宅メーカーの大仏ホーム本社の経理部に勤務する「天野ゆいか」と「阿久津麗子」とをメインキャストにして、ランチで合コンする相手やその知り合いの近辺に起きる謎の数々を、ランチを食べる間に解決するグルメ系お気楽ミステリーの第2弾が本書『水生大海「ランチ探偵 容疑者のレシピ」(実業之日本社文庫)』。

山本美月ちゃんが主演を務める「ランチ合コン探偵」の原作本ですね。

【構成と注目ポイント】

構成は

MENU1 その部屋ではなにも起こらない
MENU2 密室における十人の容疑者
MENU3 小日向家の犬はなぜ狙われる
MENU4 秘密の扉を開くのは
MENU5 そして、いなくなった

となっていて、第一話の「その部屋ではなにも起こらない}の合コンのお相手は、前巻の「金曜日の美女はお弁当がお好き」で知り合ったレストランの経営者となった楢崎から紹介されたホームケア商品を製造している会社の社員2人。持ち込まれるのは、彼らが住んでいる社宅用マンションで、部屋にいると視線を感じたり、スマホに電話がかかってきて出ると女性が「申し訳ありません、申し訳ありません」とエンドレスの謝ってくるという怪異の謎解き。そのマンションではつい最近、この会社の単身赴任中の管理職と秘書室勤めの女性との不倫、失踪という騒動がおきているので、「その二人の呪いか?」と疑われているというもの。おまけに、このマンションは病院の跡地に建設されているので・・、というおまけつきですね。ネタバレ的には、ヨ世の中に怪異はあまりない、ということと美人には興味をもってる男が寄ってくる、というところですかね。

第二話の「密室における十人の容疑者」は、麗子がいきつけにしているヘアサロンで起きた事件の謎解き。そこで、麗子が出くわしたのが、美人であることを鼻にかけているような女性(もっとも、麗子は自分のほうが上だ、と思ったようですが)なのだが、彼女は美人が案内されるという噂の席が、麗子と金髪に染めた美女がすでに案内されていて、座れなかったことが不満で、ヘアサロンで電話の着信音を鳴らしまくったり、スタッフにすでに読んだ雑誌しかないと文句を言ったりとかなりの顰蹙ものの行動を繰り返します。その時、店の前で車の衝突事故があり、それに店にいる人が気をとられて窓際に集まっているうちに、彼女の持っていいたスマホが失くなってしまう。という事件。このスマホは、店のゴミ箱の中から発見されるのだが、さて、このスマホを隠した犯人は?、という筋立て。この謎解きをするため、ヘアサロンのスタッフとの合コンをしかけて、現場の聞き込み捜査を始めるのが、「ゆいか」の乱暴なところですね。
犯人のほうは、店にいる人物の中でも最も動機のないと思われる女性ですね。

第三話の「小日向家の犬はなぜ狙われる」では、二人の上司である経理部の亀田部長が持ち込んでくる、お金持ちの青年の謎解きです。お金持ちといっても、どうやら、親戚の老人から、死後、愛犬3匹の面倒をみることを条件に1000万の遺産をもらったというもので、遊んで暮らせるというわけではありませんね。
で、事件のほうは、その犬たちに関するもので、餌にニコチンが混ざっていて、死にかけるというもの。実は、その遺産を遺してくれた親戚には三人の子供がいて、彼が犬の世話をすることで遺産をもらったことを快く思っていなくて、この犬たちに何かあれば遺産を取り戻せるのでは、と思っています。さて、犬の毒殺を企んだのは一体誰・・、という筋立てです。謎解きのほうは、ここで今まで出てこなかった人物が急に浮上してきます。ここはちょっと唐突な印象を受けますね。

第四話の「秘密の扉を開くのは」では、二人の上司だった亀田部長が異動して、後任にやり手の女性部長がやってきます。ここでお決まりのプチ衝突があるのですが、これは今のところ本題の謎解きとは関係ないですね。
謎解きと合コンのほうは、麗子の通っているスポーツジムのインストラクターが持ち込んできたもので、そのジムでおきたロッカー内の荷物の紛失事件です。その被害者は、ここのマタニティコースの通っているお客さんロッカーを使って、他のお客さんと荷物のやり取りをしていたのですが、入れたはずのロッカーから別のロッカーに荷物が移動していた上に一緒に入れていた封筒がなくなっていた、というものです。ロッカーには会員であれば誰でも入れるわけで、今回のキーは、この犯行を行った動機ですね。紛失した封筒には、荷物のやり取りをしている元同僚と交換している「編みぐるみ」の編み図が入っていたというのですが・・・というところがキーになりますね。

第五話の「そして、いなくなった」では今まで同じ職場で働いていた「ゆいか」が「麗子」と別れて営業所のほうへ異動してしまいます。このため麗子は、今まで「ランチ合コン」のいい相棒であった「ゆいか」がいなくなったことで、合コンのやり方自体も変更を迫られ、大学時代の友人たちを巻き込んで、「夜」の合コンを仕掛けることとなります。事件のほうは、その合コン相手の住んでいる「シェアハウス」で起きたもの。そのシェアハウスには男性2人と女性3人が住んでいたのですが、その中でカップルが成立します。ところが、このカップル、男性の持っていた秘蔵の写真に、女性の子供が落書きをした疑いがかかったことで喧嘩がちになって、遂には最近別れてしまった、というもの。果たして、この落書きをした真犯人は誰、動機は?といったところが謎解きのキモですね。この謎解きに、ゆいかが麗子が現場から送ってくる情報で解いていく、というところが今話の読みどころですね。

【レビュアーから一言】

このシリーズの特徴は、ランチで合コンしている短い間に、ゆいかが情報を集め、謎解きをするというところと、そのランチの料理なのですが、たとえば、第二話のベトナム料理店の「フォー」は

メインのフォーがやってきた。フォー・ボーとフォー・ガーは、トッピングされている肉が違うだけでなく、スープも牛と鶏というそれぞれの肉から取っている。鉢は白地に模様を描いた陶器で、赤い菊の模様がフォー・ボー、青の蓮がフォー・ガーだった。
(略)
フォー・ボーを頼んだ麗子が、スープをスプーンですくった、スープは灰汁の色が出て茶色がかっていたがくどさは感じない。パクチーは、増量しなく点もじゅうぶん多かった

であったり、第四話の「肉バル」では

次の肉がやってきた。牛タンだ。表面に切り込みの入った厚めのタンが、肉側に濃い目のピンク色を見せて、積み上がっていた。添えられた浅漬けの白菜も山盛りだ。
(略)
麗子はお勧めに従って、タンの上に青唐辛子味噌を載せ、口にいれた。弾力のある肉にピリッとした辛さが合い、肉の甘味が引き出されている

といった具合です。麗子とゆいかの合コンで出てくる料理を食べながら、本書の謎解きを楽しむ、ていうのもアリかもしれないですね。

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