傾国の仕立て屋は「花嫁ドレス」もスゴイ出来 ー 磯見仁月「ローズ・ベルタン 2」

フランス革命期に、ルイ16世の王妃・マリーアントワネットのモード商を務め、40年間にわたってフランス宮廷、すなわちフランスのファッションをリードした平民出身の女性ファッションデザイナーの元祖「ローズ・ベルタン」の成り上がり物語を描く「傾国の仕立て屋」シリーズの第2弾。

前巻で故郷のアブヴィルの町を後にして、首都パリへ上京し、小さな仕立て屋でお針子を勤めているときに、後のルイ15世の公妾となるマリー・べキューの衣装をしたてて、べキューの成り上がりをアシストして一躍注目を浴びたベルタンが、その後、パリの売れっ子仕立て屋として、さらに上昇を目指す姿が描かれるのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

6針目 トレ・ガラン
7針目 女の幸せ
8針目 同志
9針目 鎧
10針目 道

となっていて、前巻のべキューの衣装を仕立てる活躍で、パリの人気仕立て屋・トレ・ガランの売れっ子お針子としてキャリアアップしたところからスタート。新しい店では

といった売れっ子ぶりなので、前の店でお茶を挽いていたとは想像もできない人気ぶりです。これは、ベルタン単独の力というものではなく、べキューと彼女が射止めた貴族の権勢と考えるべきなんでしょうね。

そして、そんな彼女のもとにさらにランクアップできる話が舞い込んできます。王族の一員であるシャルトル公爵とパンティエーヴル家お嬢さんの結婚式の花嫁衣装の製作なのですが、このシャルトル公爵ルイ・フィリップ2世は、この後、オルレアン公爵家をついで、マリーアントワネットの批判者として、ルイ16世と対立する立場の貴族ですね。

で、今回、ベルタンが担当する花嫁なのですが、そばかすいっぱいで痩せっぽちという、当時としては美人として評価されていなかった風貌で、

さらにお婿さんのシャルトル公は有名な遊び人という状況に加え、オルレアン公の誘いを断ったため、絹の布地が手に入らなく、という苦境に陥ることになります。ここで、彼女が使った手段は、以前知り合ったヘアデザイナーの「レオナール」を通じて、現在はルイ15世の公妾となっているべキューに依頼するということで、この場では難局を脱することができるのですが、これから先、どういう影響をもってくるかは未知数ですね。
で、こうして手に入れた布地によってつくったドレスは「愛と美の女神の凱旋風」と名付けられた

というもので、これがシャルトル公を虜にしてしまいます。これによって、ベルタンはさらに有名な「お針子」となっていきますね。
そして、もともと上昇志向の強いベルタンが次に目指すのは「もっと上」ということで、

新しい王妃付きの「モード商」を目指すのですが・・・、という展開ですが、詳細は本編でどうぞ。

【レビュアーからひと言】

今巻で結婚式の花嫁衣装をつくったシャルトル公とパンティエーブル妃ですが、本編ではベルタンの作ったドレスでシャルトル公はパンティエーブル妃に夢中になる設定なのですが、

現実のほうはそう甘くはなく、彼の浮気性は治ることなく、かなり寂しい結婚生活だったようですね。ただ、夫のルイ・フィリップ2世は、自由主義派の貴族として王家と対立したり、フランス革命成立後は共和制を転覆させ王政を復活させようとした容疑で処刑されるといった波乱万丈の人生を送った人なので、彼に付き従ったほうがよかったかどうかは、それぞれの価値観によるんでしょうね。ちなみに彼女の長男・ルイ・フィリップはフランス最後の国王となってますね。

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