やり手営業ウーマンによる「サーバント・リーダーシップ」論 ー 和田裕美「奉仕するリーダーになりなさい」

リーダー論

元・ブリタニカでフルコミッションの営業パーソン時代に、日本でトップ、世界142カ国で2位の営業成績をあげ、その会社で女性では最年少の代理店支社長となり、その企業の撤退後は、その営業の才能を活かして営業やコミュニケーションに関するセミナーや講演活動を精力的に行っている筆者が、「新しいリーダー像」について著したのが本書『和田裕美「奉仕するリーダーになりなさい」ー世界ナンバー2セールスウーマンの奮闘記(角川Oneテーマ21新書)』です。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに 新しいリーダーシップが現在求められている
 ー「サーバントリーダーシップ」とは

第1章 「奉仕する」とはどういうことか?
第2章 「リーダー・和田裕美」はどうやって生まれたか?
第3章 奉仕型リーダー 和田裕美の奮闘編
第4章 価値観の違いをどう乗り越える?
第5章 あなたもリーダーになれるんです!

おわりに リーダーがワクワクしているか?
 -あなたが「ワクワクするリーダー」になるために 

となっていて、第1章が、いわゆるサーバントリーダーシップがいま注目されているのかについての筆者の考え、第2章から第4章までが筆者の営業パーソン時代の経験譚、第5章が、新しいリーダー像についての提案といった形になっていて、理論だけであれば、第1章と第5章を読めばだいたいのところはわかるのだが、当方としての雄ススメは、第2章から第4章までのところも拾い読みでもよいからざっと目を通しておいてから、理論編の第1章と第5章を読む、というやり方です。

というのも、こういうやり手の営業パーソンの著作というのは、営業成績を伸ばすために自分はこんな人並み以上の工夫をした、ですとか、こんなふうに部下や同僚を説得して組織を引っ張った、といった話が続出するもので、筆者の「営業系」のほかの著作にはそんな気配もあるのですが、本書は、そんな「やり手」が自分の力を頼みにこうやってリーダーシップを発揮したら・・・うまくいかなかった、といった失敗事例が多く掲載されています。例えば、美人で営業トークも抜群の部下がいながら、

自信がありすぎる人って、弱い人の気持ちがわからないし、相手の話をしっくり開く姿勢を持てないものです。とにかく自分の話したいことを話してしまう傾向があります。そのことに気づいていたのに、そこを根気よく直そうとしなかった私はリーダー失格だったのです。

といったところなど、やる気があって前向きなリーダーほど陥ってしまう失敗譚の数々は、リーダーとしての振る舞いに悩んでいるビジネスパーソンが自分を振り返るよい材料となるのではないでしょうか。

ちなみに、筆者による部下の四分類は
①ポジティブ素直
②ネガティブ素直
③ネガティブ頑固
④ポジティブ頑固
となっていて、一番仕事で伸び悩んでしまう可能性の高いのは④の最初から自信形成ができていて積極的なタイプだそうなのですが、こうした、様々な性格や行動性向をもった部下たちの力をうまく発揮させるコツは、けして自分が戦国時代の猛将のように前へ前へとでていくのではなくて、

リーダーとしての考え方も、部下をどうやって使うかではなく、「フォワード」に活躍してもらうにはどうしたらいいか」に変わっていきます。
いちばん末端の現場にいる人が会社の主役であるという考え方はまさにやる気を引き出す奉仕型のスタイルです。

ハンドルにも″あそび″があるように、人間にもこの程度のゆるさがあったほうが、部下はノビノビできるのです。楽しい環境づくりをして、やる気を引き出すのがリーダーの仕事なのですから。ときにリーダーはピエロにもなるのです。

といったあたりが、「今風」のリーダーには大事であるようなのですが、詳しいところは本書のほうで。

【レビュアーからひと言】

世の中の方向性が見えないどころか、今まで考えてもなかったような世界をい揺るがす事態が突然おきて右往左往させられる現代ほど、「望まれるリーダー像」が定まらない時代も、今までなかったのではないか、と思います。そんな時代であるからこそ、いろんなタイプの「リーダー像」の抽斗を多くして、その時々の状況に応じて考えていく、というのが大事なのではないでしょうか。本書の提案するリーダー像も、その大事な一つのパターンとしておさえておいたほうがいいと思います。

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