「愚者風リーダーシップ」とは、どんなもの? ー 長尾彰『宇宙兄弟「完璧なリーダー」はもういらない 』

リーダー論

「リーダー」というとグループの中で一番頭がキレて、行動力もある人物がなるもので、自分はそんなタイプではないよね、と思っているあなた。世の中が大きく変わったり、新型コロナウィルスのように考えてもいなかった災厄への対応が求められている今、リーダーの在り方も大きく変わっていきつつあるようです。
「リーダーがすべてを引っ張らないといけない」という今までの固定観念をぶち壊して「誰でもリーダーになれる」と教えてくれるのが本書『長尾彰「宇宙兄弟 「完璧なリーダー」はもういらない」(学研プラス)』です。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 どんな人でも必ずリーダーになれる
第2章 愚者風リーダーシップのススメ
第3章 自分らしいリーダーシップを発揮するコツ
第4章 チームの成長とリーダーシップ
第5章 魅力的なリーダーが備えているもの

となっていて、まずは『「リーダー=優秀で選ばれた人物」というイメージを、頭の中から取っ払ってしまいましょう』と最初のところでの提案に驚かされます。

筆者の意図するところは、時代の変化が大きすぎて、誰も「正解」がわからない時だから、「率先垂範・不動不惑」のカリスマ・リーダーの手法が「使えない」状況も増えたのでは、という認識のもと、より良い選択をしていくためのベターな「リーダーシップ」のあり方について考えてみようということにあるのですが、筆者が本書で分析するリーダーの型には「賢者風」と「愚者風」の二つのパターンがあるようです。

賢者風のリーダーは、いわゆる優等生タイプで、頭脳明晰で決断力に長け、先頭に立ってみんなを引っ張りながらチームをまとめていく、「優秀な人」ですね。ただ、

賢者風リーダーシップを発揮するときには、乱暴な表現をすれば「しんどい」が常につきまといます。
そしてそこにギャツプがあると、「正しく評価されていない」と、大きなストレスになってしまうのです。
「間違えてはいけない」というプレツシャーもそうですし、自分が優秀であることを自負しているため、周囲に対しても同等の評価を求めます。

といったことがあるので、誰でもができるわけではなさそうですね。

一方。愚者風のリーダーは、一見すると優秀な人物には見えず、先頭に立って引っ張るというよりは、チームや相手の意見をききたがるタイプなのですが「愚者風リーダーシップのいいところは、この「しんどい」がありません」ということのようです。
どちらが望ましいリーダーかは、その時の情勢や環境によって違うとは思うのですが、

賢者風は、問題を「解決」しようとし、愚者風は、問題を「解消」しようとする

と筆者はその持ち味の違いを表現しています。

ここらはどちらが正しいということではなくて、正解や目標が明確に見えている場合は「賢者風」、状況が刻々と変わったり、誰もが経験したことのない中で、方向性をつけていかなければならない時は「愚者風」がもとめられるのかな、と当方は考えたところであります。

さらに本書で参考となったのは「マネジメント」と「リーダー」の違いで、

「マネージャー」と「リーダー」の役割をごちやまぜにして捉えられていることがあるようなのです。
そもそもマネージャーの役割とは、「管理・コントロール」することなので、テームビルデイングに直接関わることはありません

というところでは、マネージャー、すなわち管理的な立場に立つと仕事に関するすべての面で優れていないといけないと考えて「鬱」傾向になる人の気持ちも少しは「楽」になるでしょうし、

片やリーダーはチームに内在し、「~したい」という意思の元に行動することで、チームビルディングに大きく関わっていきます。
注意しておきたいのは、あくまで管理する立場であるマネージャーがチームビルディングに干渉しようとすると、チーム全体の人間関係が混乱し、こじれる危険性があるということです
反対に、リーダーがマネジメントまで行おうとすれば、今度はチームの中に階層が生じてしまいます。
ヒエラルキー型の組織ならまだしも、ネットワーク型を目指しているのであれば、なおさらそこに矛盾が生まれ、崩壊するパターンに陥ってしまうでしょう。

といったあたりには、マネージャーとリーダーの役割分担や自分がどういうポジションでチームに関わろうとしているかの自己分析の重要性を認識させてくれています。

本書では「リーダーとマネージャーは補完関係にありますが、それぞれの役割は違うということを意識しておくと。両者の持つ特性をより効果的に発揮できると思います。」とされているのですが、今、日本の組織がぎくしゃくしているのは、マネージャーの役割の人が無理やりリーダーも務めようとしているところにあるのかもしれません。

【レビュアーからひと言】

「リーダー論」とはちょっと離れるのですが、本書の最初のほうで、なにかに挑戦する時の「want思考」の大事さがアドバイスされているのですが、この時に出現するのが、「ドリームキラー」。人のヤル気や夢を食いつぶす悪役キャラなのですが、本書では

ドリームキラーに関しては、理解してもらおうと無理に対処する必要はありません。
「出たな― ドリームキラー!」そう心の中で叫び、受け流しておけば十分。
大事なのは、相手の言葉に自分が振り回されてしまわないことです

という対処法が示されています。かなりシンプルなものなのですが、理解してもらおうとするとかえって、自分のパワーを吸い取られることになるのも事実です。あえて無視するのが一番の防御法のようですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました