庶民の味方の中華料理「ギョーザ」の名店の数々 ー 今柊二「餃子バンザイ」

今 柊二

中華料理の中でも、「餃子」は日本全国の共通言語のようなもので、他の中華料理、いまどきは「ラーメン」や「チャーハン」でも豪華で高価なものがあっても許されるのだが、こと「餃子」に限っては、どこでもいつでも食べることができて、しかも安価というのが必須になっているような気がしている。
そういう「庶民の味方」である「餃子」について、定食評論家でもある(最近はスイーツ評論家でもあるのかな)筆者が、東京圏だけでなく、日本各地の名品をレポートしたのが本書『今柊二「餃子バンザイ」(本の雑誌社)である。』

【構成と注目ポイント】

まえがき 餃子のヨロコビ

①名店・老舗
蒲田編その1 「歓迎」で餃子三昧で大歓迎されたのだ
蒲田編その2 「你好 恵馨閣」でランチに餃子をつけたのだ
蒲田編その3 「金春新館」でチャーハン餃子なのだ
蒲田編その4 「春香園」でラーメン+焼餃子なのだ
神保町編その1「北京亭」で古本と焼餃子なのだ
神保町編その2「天鴻餃子房」で餃子二種類ランチなのだ
神保町編その3「SANKOUEN」で大餃子定食なのだ
神保町編その4「揚子江菜館」で食べるほどにうまい餃子なのだ
神保町編その5「スヰートポーツ」で最強のおかず餃子なのだ
亀戸     「亀戸餃子」でわんこそば的餃子なのだ
立石     「蘭州」で水餃子+焼餃子なのだ
西荻窪    「博華」で和のみの焼餃子なのだ
三鷹     「餃子のハルピン」でホタテ餃子なのだ
野毛     「萬里」で餃子4人前!なのだ
横浜中華街  「山東」で大ボリュームの水餃子なのだ
コラム1 横浜軒のこと

②首都圏
東大宮    「ぎょうざの満州」でダブル餃子定食なのだ
柏      「ホワイト餃子」で日曜日の餃子定食なのだ
南柏     「麺王」でギョウザセットなのだ
北千住    「りんりん」で餃子と焼きそばなのだ
白山     「留園」で焼餃子セットなのだ
飯田橋    「餃子屋じなんぼ」で、ねぎ味噌餃子なのだ
武蔵小杉   「原宿餃子楼」でツルツル水餃子なのだ
武蔵小杉   「一番」で、みそだれ餃子なのだ
町田     「ぎょうざ専門 黒がね」で家族連れ揚げ餃子なのだ
藤沢     「古久家」でごりそう五目焼きそばと餃子なのだ
藤沢     「高砂食堂」ですき焼きうどんと餃子なのだ
伊勢佐木町  「鳳凰楼 点心舗」で白粥と焼餃子なのだ
横浜駅西口  「龍味」でご飯をがまんできなかったのだ
新横浜    「博多餃子写03」で一口餃子なのだ
コラム2 餃子がいかにしておかずになったか

③全国
札幌     「みよしの」でカレーと餃子セットなのだ
札幌     「龍華苑」で焼餃子と鶏の唐揚げ定食なのだ
札幌     「布袋」で餃子定食でサプライズなのだ
仙台     「八仙」で美しい餃子定食なのだ
宇都宮編その1 「元祖 宇昧家」で水餃子なのだ
宇都宮編その2 「餃天堂」で衝撃の餃子作法なのだ
宇都宮編その3 「宇都宮みんみん」で持ち帰り餃子なのだ
浜松編その1 「福みつ」で念願の餃子定食なのだ
浜松編その2 「むつぎく」で浜松メソッドの焼餃子なのだ
静岡     「華福楼」で台湾ラーメンと餃子ランチなのだ
大阪梅田   「揚子江ラーメン」で深夜の焼餃子と蒸餃子なのだ
大阪梅田   「華風菜館 新京」で大阪的餃子定食なのだ
大阪日本橋  「隆盛園」でどんどんおいしきなる水餃子なのだ
京都     「ミスター・ギョーザ」で餃子2人前なのだ
神戸元町   「三宮一貫楼」で味噌ダレ餃子なのだ
神戸元町   「ひょうたん」で味噌+酢+ラー油なのだ
神戸三宮   「餃子屋 社領」で羽根餃子に出会ったのだ
渋谷     「九州藩」で軟骨入り餃子なのだ
コラム3 水餃子との出会い

④チェーン店
「大阪王将」でふわとろ天津飯セットなのだ
「餃子の王将」で焼そば、餃子に小ライスなのだ
「幸楽苑」で313円中華そばと餃子なのだ
「天狗」で水餃子のランチなのだ
「日高屋」でイワシフライ餃子セットなのだ
「551蓬莱」でおみやげ餃子なのだ
「中華東秀」でチャーハン+餃子の鉄板コースなのだ
「バーミヤン」でファミレス中華の王道餃子なのだ
「大連餃子基地DALIAN」で円形羽根つき餃子なのだ
「リンガーハット」であえて餃子定食なのだ
「テムジン」で焼餃子と焼小龍包セットなのだ
コラム4 ユニーク餃子料理あれこれ

⑤番外編
ソウルで餃子三昧なのだ
ハワイで揚げ餃子なのだ

あとがき 仲間と餃子のヨロコビ

となっていて、国内だけで59店の「餃子」の数々である。

で、この「餃子」という食べ物、安くて、どこでも食せるという性質や、皮に餡を包んだ形状や、多くの場合、醤油+酢+ラー油でタレをこしらえるという定型的なところが災いして、画一的な扱いや、ラーメンやチャーハンの添え物のような扱いを受けることが多い、少々、不幸な育ち方をしています。

ただ、本書で筆者が行脚を重ねた餃子の数々を読めば、そうした見方が一変することは間違いないと思います。

例えば亀戸の「亀戸餃子」の

餃子1皿目が到着。すでに来ていた辛子つきの小皿に醤油と酢を入れてタレをつくり(ラー油もあるけど今回は入れません)、さっそく餃子をつけてパクリ。皮は薄眼で具がキャベツのサクサク感がうれしい。軽い餃子だ。こりゃどんどん食べられるな。(略)ラー油を入れないで辛子と酢醤油だけだから、よけいサクサクと食べ進めることができるのかも知れない。定食主義者の私もご飯のことを考えないで食べられるね。

といったところでは、餃子のもつ「スナック」感覚を味わうことができるし

三鷹の「餃子のハルピン」の「ホタテ餃子」の

では、いよいよ餃子へ。皮が厚いな!表面はカリッとしつつ、かみしめるとじわりとおいしいタイプ。中の具自体にそれほどホタテ感は感じないが、具としての肉の頼もしさはバッチリ。なによりもジューシー!皮の中に肉汁が入り、その中に具の世界があるという3層構造になっている。そして香辛料の香りが実にいい。いやはや、これはおいしい。何よりもボリュームがある。ご飯の量が控えめなのもわかりますね。この餃子はおかず方面・つまみ方面どちらでもなく、単独でもぐもぐ食べるタイプだな。

といったあたりでは、餃子の皮を破った時に出てくるスープの旨さが蘇ってくるようであるし、

さらに、宇都宮と並ぶ日本有数の餃子消費地「浜松」の「むつぎく」の

おお、こりゃステキだ。まさに絵に描いたように美しい「浜松メソッド」の餃子。中央にもやしを廃し、くるりと餃子が円を描いている。まずはタレをつくろう。あら、ここは酢と醤油ではなくて、最初から酢醤油なんだね。辛味も少し入れておこう。

(略)

では餃子。羽根も少しついているな
福みつの餃子より皮は柔らかめでもちもち。その上、皮は薄めで中のキャベツのサクサク感が心地よい。具のキャベツは細かく刻んでいるようで、スルスルと食べられる感じ。ここの辛みはそんなに強くなくてマイルドでいいな。キリンフリーと一緒に食べるとさらにシアワセだ。

といった餃子には、ご当地ならではの「ザ・ギョーザ」を感じてしまいますし、味が均質なところが持ち味のチェーン店でも「大阪王将」の

餃子のタレ、酢、そして鉄ラー油でタレをつくって食べる。うん、軽やかな餃子だ。皮はパリッともちもちの真ん中くらいで、やや薄眼の皮かな。餃子自体もおいしいいけれど、この鉄ラー油をつけて食べるとパワーが倍増するような気がする

といった安定した味の「餃子」の様子 を読むと、よくぞここまで、我々民衆のために・・・と感謝の気持ちがこみあげてくる、というものです。(大げさすぎるか・・・)

まあ、なにはともあれ、餃子を注文しておけば、他にラーメンを注文しようが、チャーハンを注文しようが、あるいはお金がなくて「白飯」だけにしようが、かなりハイレベルの満足感と満腹感を味わえることは間違いなしのメニュー。本書を読むほどに、もちもちの皮と熱々の餡のコラボレーションが脳裏に浮かんできて、おもわず生唾を呑み込んでしまうこと間違いなしでありますね。

【レビュアーからひと言】

餃子というと、一人で中華料理屋にやってきて注文するものの代表格であるのですが、一方で、「餃子パーティー」で、焼餃子にしろ水餃子に、仲の良い仲間が集まって陽気の食す代表格でもあります。皆が集まってワイワイできる、そんな日が早く復活するとよいですね。

餃子バンザイ!
餃子には数えきれないほどの楽しみがある──肉汁と餃子愛がほとばしる満腹スーパーガイドエッセイ!

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