劇場戦争勃発。シェイクとマーロウの対決はどうなる。 ー 「七人のシェイクスピア(Part2)5」

七人のシェイクスピア

大英帝国が絶頂を迎えたエリザベス一世の時代に、イギリス・ルネッサンスの本場ロンドンで、劇作家として世に出現。以後、演劇の世界に大きな影響を及ぼし続けている「シェイクスピア」の半生記と彼の創作の秘密を描く「七人のシェイクスピア」Part2の第5巻。

前話で上演した「ヨーク・ランカスター両名家の戦い」の評判が良かったことが原因で、ストレンジ卿が、この劇の詩篇や台詞を書いている本当の人物に会いたいと言い出し、リーの運命があわや、という危機が訪れます。この危機をなんとか脱したのもつかの間、海軍大臣一座との「芝居」での雌雄を決する闘いが始まるのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

第39話 50ポンド
第40話 不死鳥と雉鳩
第41話 魔女①
第42話 魔女②
第43話 7人のシェイクスピア
第44話 処刑
第45話 ”協力”
第46話 海軍大臣一座VS.ストレンジ卿一座
第47話 きれいは汚い、汚いはきれい

となっていて、今回だけでなく「リチャード三世」の上演の頃から力になってくれた「ストレンジ卿」スタンレーに何かお礼をしなきゃいけないと、シェイクスピアたちは、リーにスタンレーとアリスに感謝をささげる「詩篇」を書かせて、二人に献上します。

ただ、これがもとで、劇のセリフや「詩篇」を書いているのがシェイクスピアではないと推察され、

スタンリーの屋敷の礼拝堂でリーと面談をすることを承服させられてしまいます。

面談はスタンレーひとりで、カーテン越しに行うことを条件とするのですが、もし「リー」の黒い髪と黒い目、喉につけられた×印の焼きごての跡、そして未来を予言する能力のことがばれれば、最悪の場合、「魔女」として処刑されてもおかしくないシチュエーションです。

面談の行方を心配するリー以外の「シェイクスピア・チーム」のメンバーなのですが、リーは、スタンリーの喉の調子が悪いのが喉の奥に小さなポリープができているせいであることや4日後にスタンリーの敬愛するカトリックの司祭が逮捕されること、そしてそれに知らない素振りをすればスタンリーの疑いが晴れることを予言します。

かつて、リーの喉の×印とチャイナタウンで命を落としそうになった能力が最大限発揮されることとなるのですが。スタンレーは

といたく感動し、さらにストレンジ卿夫妻の信頼を深めることとなりますね。

さて、劇場の方は、ストレンジ卿一座と海軍大臣一座の座員同士がケンカをし大騒ぎをおこしたため、ロンドン市長が劇場の閉鎖を言い出し始めます。当時、芝居は風紀を乱すものとして行政関係者から嫌われていたようで、この芝居への役人の考え方は、洋の東西を問わないもののようですね。

ロンドン市長の暴挙を阻止するため、バーベッジとヘンズロウ、二人の座長は、王室祝宴局に、この2つの劇団が4ヶ月間「合同興行」をして双方の友好を深める取り組みを始めることを申し出ます。もっとも、表面上は、手打ちの儀式なのですが、実態はそのあいだの興行収入の多寡で勝負し、勝ったほうがを総取りするという「劇場戦争」の」勃発です。

この「劇場戦争」にかける演目については、当然、シェイクスピアにも「お鉢」がまわってき、バーベッジから演目として提案されるのが「リチャード三世」なのですが、それを聞いたウィルは猛反対します。

最初の上演のときに観客にボロクソいわれたのがよほど頭にきていたようですね。そして、「リチャード三世」を上演しないのはシェイクスピアも同感で、彼は劇場戦争で上演するのは「新作」と決めたようです。その題材は・・・ということで、ここから先は本書のほうで。

【レビュアーからひと言】

今回、ストレンジ卿スタンレーたちが保護していたカトリックのハートレー司祭が捕縛され、生きたまま、自分の臓器を引っ張り出され焼かれるという残虐な処刑で殺害されてしまいます。
文化の香り豊かなエリザベス一世時代に、魔女狩りのような刑が平然と行われたいたあたりが、ヨーロッパの「闇」を感じさせるところですね。

今巻の最初のほうでも、前巻でシェイクスピアの芝居が大好評となるところに冷たい視線を送っていたマーロウが、シェイクスピアの出身がカトリック教徒の多い「ウォリクシャー」であることになにか疑惑を覚えたようです。

今巻では大きな動きはないのですが、次巻以降の火種とならないとよいのですが・・・。

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