幼年期の出会いが、シェイクスピア・チームの基礎となる ー 「七人のシェイクスピア(Part1) 4」

七人のシェイクスピア

大英帝国が絶頂を迎えたエリザベス一世の時代に、イギリス・ルネッサンスの本場ロンドンで、劇作家として世に出現。以後、演劇の世界に大きな影響を及ぼし続けている「シェイクスピア」の半生記と彼の創作の秘密を描く「七人のシェイクスピア」Part2のビフォーストーリーであるPart1の第4巻。

前巻までは、まだリヴァプールで塩と砂糖の商売をしながら演劇の脚本を書いていたシェイクスピアが、チャイナタウンを襲った洪水から逃れてきた「リー」という少女を救い、彼女の力も借りながら、「十二夜」のギルド対抗の芝居のコンクールで良い出来の芝居を書くが、旧勢力の政治的な動きのせいで「試合に勝って、勝負に負けた」状態への不満からロンドン行を考え始めたところで終わっていたのだが、、これからの数巻は、リヴァプール以前のシェイクスピアとワースの幼少時から青年時代が描かれます。

【構成と注目ポイント】

第4巻は

第35話 ストラトフォード・アボン・エイヴォン
第36話 父の教え
第37話 新教と旧教
第38話 サイモン・ハント
第39話 2人の神様
第40話 ジェントルマン
第41話 没落
第42話 ジョン・コタム
第43話 クーム家
第44話 キャシー・ハムレット
第45話 カワカマス
第46話~第47話 エイヴォン川①②

となっていて、シェイクスピアと彼の相棒となるワース(本名は「ジョン・クーム」)との幼少期の出会いから、青年期のはじめまでの、比較的穏やかであった時代が描かれています。

もともと、ワースの家は、スドラドフォードで不動産業から大工や庭師の人材派遣、金融業まで多岐にわたる事業を営んでいる家で、彼の父親はワースを「跡取り」として厳しく育てているのですが、このおかげもあって、ロンドンに出てから劇場経営やシェイクスピア・チームの暮らしを支えた彼の「商才」の基礎がつくられることになるのですから、ここはクームの親父さんに感謝しないといけないところでしょう。

一方、シェイクピアの一家のほうは、中産階級で羊毛取引をやっていてそこそこの羽振りの良さはあるのですが、シェイクスピアの父親の「郷紳(ジェントリー)」階級へ成り上がりたい、という上昇志向のおかげで、「大転落」の道を歩んでいきます。

商売が順調な時は、お妾さんも囲っていて羽振りがいいのですが、ジェントリーになるための認証機関への費用を湯水のように使っているうちに商売に身が入らなくなり、そのお妾さんに羊毛をだまし取られたり、と栄えていた家を潰していく、典型的なルートを辿っていきます。

このへんの父親と母親の苦悩を見ていたのが、後に、シェイクスピアが「ナイト(騎士)」階級となるのに、かなりの意欲を示していた遠因があるのかもしれません。

そして、ここで舞台は、シェイクスピアの幼馴染のワース(ジョン・クーム)のほうへ転じます。彼の幼馴染にキャシー・ハムレットという美人の従姉妹がいて、彼女はクームに好意を寄せてます。しかし、若者たちが勝手にくっついてしまうのを避けるために、縁談を勝手に進めていきます。

望まない結婚が決まり泣き出すキャシーを慰め、近くの小屋に行く二人で、そこでキャシーがジョンにキスを迫るが、なんと彼は拒絶。てっきりジョンも自分のことを好いていてくれると思っていたので、かなりのショックを受けてしまいますね。

さらに、なんと結婚式の日取りが決まった日の夜、キャシーは二人が別れた川で入水自殺をしてしまいます。当時のキリスト教の教えでは。自殺は神に背く大罪と考えられていたので、これは「一族」揺るがす大事になってしまいますし、ワースの受けたショックもかなりのものですね。

で、クームが彼女を拒絶したのは、これまた、彼が同性愛の傾向があったような感じなので、これまた問題を複雑化させます。

今巻は全体として、カトリック教徒への迫害が強くなっていく一方ですし、ワース(クームの幼馴染の自殺もあり、このシェイクスピア家の「没落」のあたりから、物語のほうは、陰鬱な方向へと進んでいくのですが、シェイクスピアが成り上がりを目指す「原点」みたいなところを理解するには、ここらもおさえておくべきだと思います。

【レビュアーからひと言】

シェイクスピアやワースの育ったストラドフォードのあたりは、カトリック教徒も多く、イギリス政府としては、「難治」の地であったと思われます。もちろん表面的にはクリスチャンに改宗したように見えても、クーム家のように「秘密のミサ」を開催したりしていいますし、このシリーズでも「魔女裁判」とか多くの迫害事件や政権内の対立が起きていて、こうした「宗教問題」の難しさを感じます。

もっとも、日本でも、戦国時代には「一向門徒の一揆」といったこともあって、当時の統治者の政策によっては、こうした宗教対立が起こりかねなかったと思うのですが、そうならなかったのは、日本の戦国時代の信長、秀吉、家康の宗教政策が見事であったせいでしょうか?

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