ロシアからの異邦人の秘密を解き明かせ ー 山本巧次「北からの黒船 八丁堀のおゆう」

元OLのフリーター・関口優佳が、祖母が遺した東京下町の古い家の押入れから江戸時代へとタイムスリップし、江戸と東京を行き来しながら、南町奉行所の同心・鵜飼伝三郎配下の小粋な岡っ引きとして、江戸市中の事件を解決していく「関口優佳」こと「おゆう」の捕物帳の第6弾が本書『山本巧次「八丁堀のおゆう 北からの黒船」(宝島社文庫)』。
前巻までは市井の庶民や商家の事件解決が中心であったのだが、事件解決の手腕がだんだん定着してきたのか、今回は背後に幕府の役人の思惑も見え隠れする「ロシア人の難破漂着事件」に関わることとなります。

【構成と注目ポイント】

構成は

 第一章 静かなる侵入者
 第二章 謎のロシア人
 第三章 駒込の密議
 第四章 常陸沖の黒船

となっていて、最初のところで、オロシャ(ロシアのことですね)の船から逃げ出して、日本へ逃れてきた異国人の対応に「おゆう」が駆り出されるところからスタート。

最初は、前巻の「ドローン、江戸を飛ぶ」で、「蘭学の先生」として名をあげた「宇田川」へ白羽の矢が立つのですが、彼が「東京」のほうでの仕事で「江戸」へくることができず、「おゆう」が主力になるということになります。もっとも、最初、東京を離れられない「事件」ということで、ひょっとすると、「おゆう」が関わっている」「江戸時代」の事件に関係が?、とも思わせるのですが、これは「ガセ」。単に「おゆう」単独の力で事件を解決させるための作者の手のような気がします。

で、事件のほうは、今でいう茨城県の鉾田あたりに漂着したロシア人(?)のステパノフという外国人が、幕府の役人によって保護され、長崎に護送されることになるのですが、途中、安孫子宿で何者かに連れ去られたというもの。さらに、その後、その外国人たちは江戸に向かったらしい、ということで江戸の町奉行所が捜索に乗り出す、という筋立てです。

その後、その外国人が連れ去れた安孫子宿を管轄する代官所の役人が殺されたり、といった第二の事件を経て、吉原の北側の大川の堀端で、その外国人を確保することに成功するのですが、どうやら、この外国人が安孫子宿で連れ去られた事件の背後には、廻船問屋が関係した抜け荷の企みが隠れているようで・・・、という展開です。

今回は、単なる殺人事件ではなく、日本国を取り巻く国際問題が絡んでいるので、奉行所の役人だけではなく、老中や老中の意を受けた「目付」といった大物の幕府役人、あるいはロシアのエカチェリーナ女帝にも面会した大黒屋光太夫まで登場する大事になるのですが、現代娘の度胸の良さなのか、「おゆう」が臆することなく行動していくのが、さばさばした感じで好感がもてますね。

毎巻、事件解決のキーとなってくる、宇田川のラボを使った科学分析ですが、今回も、代官所役人の殺害の犯人捜しでまずは威力を発揮します。そして、それ以上に、驚きの事実を明らかにするのが、保護されたロシア人「ステパノフ」が隔離されている座敷に仕掛けられた録音マイクに収められた音声で、彼の、さらに隠されて秘密を明らかにし、これがペリー提督の黒船来航につながってくることになるのですが、詳しくは本書のほうで。

【レビュアーからひと言】

当時の日本の鎖国制度のことについて素人知識ながらふれておくと、本書の舞台となるのは、1822年(文政五年)6月の出来事となっているので、1853年のアメリカのペリー提督が浦賀にやってくる約30年前ですね。その10数年前に、ロシア使節のレザノフがやってきたり、イギリスのフェートン号が長崎に来航したり、ということはあっても、まだまだ一般庶民にとって、外国の話は現実感のない頃ですね。
公方様は第11代の徳川家斉公の頃ですので、時代小説的には、有馬美季子の「はないちもんめ」や「縄のれん福寿」の舞台と同じ頃です。どちらかというと、札差や両替商などの大商人が金にあかせて「粋」の限りを尽くしていたり、庶民もそれなりに暮らしを楽しんでいた時代のように思います。

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