中澤一雄「外資の流儀  生き残る会社の秘密」ー日本企業の活路を「アメリカ企業」に探る

日本マクドナルドを皮切りに、たくさんの外資系企業の要職を歴任し、日本企業の仕事のスタイルと外資系、主にアメリカの企業の仕事のスタイルの違いとその優れている点を熟知している筆者による、「外資系スタイル」による日本のビジネススタイルの変革のススメが本書『中澤一雄「外資の流儀  生き残る会社の秘密」(講談社現代新書)』。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめに 日本企業は「外資型」に変わる
序章 外資「勝利の方程式」はなせ強いのか
第1章 効率の国 アメリカ
第2章 外資に飛び込む
第3章 アメリカは日本の30年先を進んでいた
第4章 外資の高い効率と生産性
第5章 日本の生産性を落としているものの正体
第6章 外資系記号の核心「勝利」の方程式
第7章 今後日本に押し寄せる効率化と生産性向上の波

となっていて、冒頭のところで

日本の社会では、外資というと、まだまだドライで冷酷なイメージが強いようです。 しかし、私の経験から申し上げるならば、外資系企業のシステムは知れば知るほど効率的・生産的であり、「利益を上げる」という、企業としてどく当然の仕組みを徹底的に追求したシステムです。 そしてそれが世界のスタンダードでもあります。

とし、

生産性や効率を重視した外資のやり方を採り入れるのが最短の近道であると私は思います。

としているところには、『今度は「外資礼賛」?』と、流行り物に弱いビジネス書の世界に鼻白む人もあるかもしれませんが、「冷たい」やり方のイメージが強い中で

マクドナルドの場合、ヒューマンエラーは「起こる」という前提に立ちます。 だから、売り上げの0・1%までの現金差は許容されていました。 レジ上の売り上げよりも実際の金額が少なくても、誤差が0・1%までならば許されるという意味です

といったところを読むと、単純に「ドライ」ということではなくて、人間のどうしようもない欠点や弱点をしょうがないことと認識して、それを前提にどうするかを考えるシステムであるような気がしてきます。
さらに、

あなたの後任者は決まっていますか?」そう問われて、明快に後継者を思い浮かべられる日本企業の社長はほとんどいないのではないでしょぅか。 なぜなら、サクセッションプラン(後継者育成計画)を実行している日本企業がほとんどないからです。 サクセツションプランを担うのは「指名委員会等設置会社」です。 指名委員会等設置会社は、取締役会の中に設けた指名委員会、報酬委員会、監査委員会によって取締役が経営の監督を行い、取締役会が選任する執行役が、取締役会から権限を委譲されて業務の執行を行う形態をとる会社を指します。

といったところでは、日本企業は「組織」を大事にするとはいうが、「組織の存続」という点については、むしろ外資系のほうが考えをめぐらしていて、日本企業の方は、「組織」というより「血統」の存続というべきなのかな、とも思えてきます。中小企業での二代目社長とか同族社長の多さあたりにそんな感じが見え隠れするかもしれません。

そして

この点は大きく誤解されているかもしれませんが、いくら優秀でも人格的に問題があれば、その人にも退職勧奨が行われます。 外資とはいえ、いえ、外資だからこそ、仕事はチームで行うものです。 人柄が悪ければチームでの仕事に支障を来たし、ほかの人の仕事にも悪影響を与え、生産性と効率が低下する怖れがあるので不適格と認定されます

といったあたりには、「才能」や「仕事ができる」という意味は、外資であれ、組織・チームとして動くという形態であれば、普遍のものはあるのだね、とおしえてくれています。

【レビュアーから一言】

ビジネス・スタイルに関しては、古くは「日本式」や「トヨタ・スタイル」が持ち上げられたり、韓国企業が絶好調の頃は「サムソン」方式が注目されたり、とその時の企業の隆盛の状況で変転の限りを尽くすのが「ビジネス書」の世界なので、今度は「アメリカか・・」と思う人もいるかと思いますが、生産性の面で、外国企業に比べ、日本企業が劣っているといわれている今、相手のやり方を知っておくことは、けして損になはならないと思います。
「相手を知り、己を知れが百戦危うからず」というのは、「孫子の兵法」でも言われていることでもありますしね。

外資の流儀 生き残る会社の秘密 (講談社現代新書)
好むと好まざるとにかかわらず、近い将来、日本の企業は必ず「外資型」に変わっていくでしょう。なぜなら、外資型に変わらなければ生産性が低いままで生き残れないからです。 2018年9月、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長が、新卒を対象とし...

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