松井忠三「無印良品は、仕組みが9割」ー無印良品を再生させた秘訣を学ぼう

良い品質と、品が良くシンプルなデザインで、根強いファンが多数いる「無印良品」の提供企業で、2020年度の大学生の就職の人気企業ランキングでも45位という高ランクに位置する「良品計画」の社長・会長を務め、業績が極度に低迷していた同社世界的企業にまで育て上げた筆者による「無印良品本」の第一作で、「MUJIGRUM」といった無印良品の「マニュアル」人気を高めたのが本書『松井忠三「無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい」(角川書店)』です。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめにー「努力」を「成果」に直結させる
序章 なぜ無印良品には”2000ページのマニュアルがあるのか
 ー「標準」なければ」「改善」なし
1章 売り上げとモチベーションが「V字回復する」仕組み
 ー「人を変える」ではなく、「仕組みをつくる」
2章 決まったことを、決まったとおり、キチンとやる
 ー「経験」と「勘」を排除せよ
3章 会社を強くするための「シンプルで、簡単なこと」
 ー「他者」と「他社」から学ぶ
4章 この仕組みで「生産性を3倍にできる」
 ー「むくわれない努力」をなくす法
5章 自分の仕事を「仕組み化する力」をつくろう
 ー「基本」があれば「応用」できる
おわりにーあせらず、くさらず、おごらず

となっていて、本書の前提としてあるのが、無印良品を経営している「良品計画」がいかにしてどん底の状態からの復活があります。筆者によればその復活は

「努力を成果に結びつける仕組み」「経験と勘を蓄積する仕組み」「ムダを徹底的に省く仕組み」。これが、無印良品の復活の原動力になったのです。

であり、

セゾンから、経験と勘を重視しすぎる体質を受け継いだため、社員が上司や先輩の背中だけを見て育つ〝経験至上主義〟がはびこっていました。仕事のスキルやノウハウを蓄積する仕組みがなかったので、担当者がいなくなったら、また一からスキルを構築し直さなければならなかった のです。
これでは昨今の、めまぐるしく変化するビジネス環境についていけません
そこで私が考えた解決策が、本書のテーマである「仕組み」です。

ということで、ビジネスの現場では嫌われることの多い「マニュアル」が無印良品の復活の肝であったようです。なので、筆者のMUJIGRUMに象徴されるマニュアルへの信頼感が厚いものがあって

①「知恵」を共有する
②「標準なくして、改善なし」
③「上司の背中だけ見て育つ」文化との決別
④チーム員の顔の向きをそろえる
⑤「仕事の本質」を見直せる

といった効果を見出しています。ただ、ここで注意しないといけないのは「マニュアルは、それを使う人がつくるべきなのです」とあくまでも現場主義、現場重視の視点が基本にあることは忘れてはいけないようですね。さらに、

マニュアルは、業務を標準化した手順書であるだけではなく、社風やそれぞれのチームの理念とも結びついています。マニュアルがこの二つの 架け橋としての役割を担っていると言ってもいいでしょう。  ですから、マニュアルは時間がかかったとしても、自分たちの手で一からつくり上げていくしかないのです。MUJIGRAMも軌道に乗るまでは五年ほどかかりました

ということのようなので、コンサルに丸投げして出来上がるものではないようなので、そこは腰を据えて取り組まなければ効果はでないということを覚悟しておかないといけないようですが、そのあたりの勘所も本書の中にでてくるのでぜひご一読ください。

このほか「私は抵抗勢力に対し・・”ゆでガエル”状態にして、染め上げていく方法を取っています。・・・私は、反対勢力の彼らを、あえてMUJIGURAM作成の委員に任命しました。責任者として、積極的に作成に関わらざるを得ない状態にしたのです。」であったり、「行き過ぎたホウ・レン・ソウは人の成長の芽を摘んでしまう行為だと、私は考えています。常に上司が絡むので、部下の自主性や自分自身で創始工夫しようとする意識gあ育たなくなるのです。・・・また、ホウ・レン・ソウを過度に行うと「縦のつながり」が中心になってしまい、「横のつながり」がおろそかになります。上司への報告と相談ばかりが重視されると、他部署との連帯を考えなくなるのです。」といった、他のビジネス書とは一味違うアドバイスもあるのが特徴的ですね。

【レビュアーから一言】

本書は、単に成功した経営者のビジネス指南の書、という性格ではなく、実務者が企業をどん底から再生したノウハウが数多く記載されている、という点で、「精神訓話)的なビジネス書とは一味違うのは間違いありません。会社の風土・文化を変えていこうと奮闘している総務部門のビジネスパーソンの必携の書といえるのではないでしょうか。

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