医療の現場を舞台にしたコミックやミステリーの主人公というと、たいていは医師か看護師で、最近ちょっとかわったところがでても放射線技師といったところまでで、診察か治療の現場で活躍するキャストが中心です。
その中で、主な仕事は「処方箋の調剤」と「服薬指導」という、どちらかといえば縁の下の力持ち的な役割(アンサング(unsung)の意味自体、「讃えられない」とか「目立たない」ってなことですね)を果たしている「薬剤師」をメインキャストに取り上げたのが、2020年に「石原さとみ」さん主演でTVドラマ化された『荒井ママレ「アンサング・シンデレラ』のシリーズです。
【収録と注目ポイント】
収録は
第1話 「普通」のために
第2話 飲めない薬
第3話 近くて遠い目の前
第4話 資格の覚悟
第5話 病院とお付き合い
となっていて、まずシリーズ開始に第一話は医師の薬の処方箋に主人公の「葵みどり」がいちゃもんをつけるシーンからスタート。
まあ、担当の医者に処方ミスを認めせるのだが、逆ギレの嫌味をいわれるあたり、医療界のヒエラルキーを見せられる感じですね。
で、話のほうは、第1話で入院してから禁煙したことを医者に伝えていなかったことが誘発した調剤ミスを防いだり、
第2話の「飲めない薬」では、薬を嫌がって飲まない息子に苛立つシングルマザーの悩みを解決したりと、医療直接ではないながら、しっかりと患者を支えている姿が描かれます。
ただ、医療の現場にいる、ということは当然、患者の生命に直接関わる立場にいるということで、第3話の「近くて遠い目に前」では、蜂に刺されて運び込まれた患者の薬の内服薬の確認を怠ってあわや、という状況となるのですが、この危機を乗り越えたところで
と顔の見えない「薬剤師」ではなく、名前のある医療に携わる「同志」としての扱いを医師と看護師から受けることとなりますね。
で、この成果といえるのが第5話の「病院とのおつきあい」で、小児糖尿病で長期にわたる注射と、外からは見えない疾病を抱える女児二人の苦悩を解決するのですが、詳細なところは本書でどうぞ。
【レビュアーから一言】
病院の中でも、患者の立場からは一番見えないポジションである「薬剤師」にスポットライトを当てた、このシリーズは医療マンガの中でも異色のセッティングといっていいでしょう。その分、類似の医療マンガに劣らない盛り上がりや人間ドラマをどうつくっていくか、楽しみでありますね。
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