磯見仁月「ローズ・ベルタン 傾国の仕立て屋3」ーマリー・アントワネットの婚礼に仕掛けられた罠を防げ

フランス革命期に、ルイ16世の王妃・マリーアントワネットのモード商を務め、40年間にわたってフランス宮廷、すなわちフランスのファッションをリードした平民出身の女性ファッションデザイナーの元祖「ローズ・ベルタン」の成り上がり物語を描く『磯見仁月「傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン」』シリーズの第3弾。

前巻で、ベルサイユの新王妃専属モード商の選抜で見事落選し、高くなる一方であった鼻をへし折られて意気消沈のベルタンなのだが、将来のルイ第16世の王妃となる、マリー・アントワネットの輿入れに仕掛けられた罠から彼女を救い、ベルタンがフランスのファッション界を牛耳っていく足がかりをつくっていくのが本巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

11針目 ハプスブルグ
12針目 メディア
13針目 ルイ・オーギュスト
14針目 ダイヤモンド
15針目 優しさの形

となっていて、まずは、フランス革命派の標的となった「マリー・アントワネット」の幼少期からのハプスブルグ王家の様子が描かれます。

アントワネットの生家である、「ハプスブルグ家」は、13世紀の先祖のルドルフ1世が神聖ローマ帝国に皇帝になってから以降、ヨーロッパ中央部を支配した一族で、オーストリア、ハンガリー、ボヘミアといった大領土を支配していた上に、一族がスペイン王になっているので、まさにヨーロッパを支配した一族でありますね。

で、このハプスブルグ家は、多産な上に婚姻政策にも熱心で、それによって同盟国と領土を増やしていった一族なのですが、マリー・アントワネットのフランス王との婚姻もその一つで、オーストリア継承戦争以来、対立の続くプロイセンへの対抗策でもあったようですね。

ただ、このアントワネットが嫁ぐ「フランス・ブルボン」家は、当時、オーストリアと組んで、プロイセン・イギリスと戦った「七年戦争」で破れて、ルイ15世の権威が失墜しつつある頃で、3つの派閥に別れて対立していた頃です。

ルイ16世とマリー・アントワネットの結婚の4年後にルイ15世は天然痘で死去しているので、まさにルイ15世の治世の最後のほう。少し、世の中が荒れている気配の漂いはじめた時代ですね。

そして、アントワネットは実は本来はフランスに嫁ぐ予定ではなく、ナポリ王に嫁ぐ予定の九女が急死し、そのかわりにフランス王太子に嫁ぐ予定の十女カロリーナが代役となったため、アントワネットにお鉢が回ってきたもので、天然の気の強いアントワネットではなく、当初の予定どおり、母親の女王・マリー・テレジアによく似たカロリーナが嫁いでいれば、歴史が変わったかも。と本書でも「歴史のif」が語られています。

十女カロリーナは調べてみると、かなり気の強い女性のようなので、フランス革命は未然に沈静化されたかもしれないし、一方、彼女が王党派を率いて、革命派と血で血を洗う内戦が続いていたもしれませんね。

さて、フランス王家内の対立に巻き込まれる形で、マリー・アントワネットの婚礼衣装に罠が仕掛けられます。オーストリアで採寸されたアントワネットのサイズを書き換えて、丈のあわない衣装を晴れの舞台に着用させて、アントワネットに恥をかかそうという企みです。

で、このアントワネットの危機に、デュ・バリー夫人に依頼された「ローズ・ベルタン」が立ち上がります。ドレスに使われた余り布を使って、足し布をつくり、それを現場で縫いつけてしのごうという作戦をとるのですが、実際にアントワネットのドレスの採寸をしたところ、余り布だけでは足りないことがわかります。

さぁ、ベルタン、この危機をどうする、というところで、第2巻で登場したシャルトル公爵夫人のパンティエーブルの助けを求めます。ベルタンは彼女に、当時とても高価だったレース布とダイヤモンドを貸してくれと頼むのですが・・・、といった先の詳細は本書のほうで。

【レビュアーから一言】

今回のアントワネットの婚礼衣装に仕掛けられた罠は、本書では、ルイ15世の娘の三姉妹の率いる、反オーストリアの派閥の仕業という設定になっていて、これをきっかけにフランスとオーストリアの同盟関係にヒビが入る、といったこともあり得たかもしれません。
派閥の領袖の三姉妹にそこまでの意図があったかどうかはわからないところですが、もし、この嫌がらせで、フランスとオーストリアの同盟が解消されていたら、フランス革命の行方も変わっていたかもしれませんね。

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