退職した警察官専用のシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」で暮らす、元警視庁副総監・伊達有嗣、元刑事課の刑事・迫田保、元科捜研の藤堂雅人、元事務官の高平厚彦という一癖も二癖もあるメンバーと、シェアハウスのギャルソンを務める元警視庁捜査一課の刑事・夏目惣一郎、都内の柳町北署の刑事・牧野ひよりが、市中でおきる事件に「勝手に」首をつっこんで、現職捜査官そっちのけで事件を解決していく、定年オヤジ・パワー炸裂のミステリー「メゾン・・ポリス」シリーズの第４弾が『加藤実秋「メゾン・ド・ポリス 殺人容疑の退職刑事」（角川文庫）』です。
【収録と注目ポイント】
収録は
第一話 誘拐犯は宇宙人？不思議少年＆おじさん軍団
第二話 院内捜査！？ネットバッシングの意外な真相
第三話 独居老人を狙う罠 惣一郎が囮捜査に挑む
第四話 おじさん軍団、ピンチ！殺人容疑の退職刑事
第五話 今明かされる四十三年前の真実 おじさん軍団、北へ
となっていて、まず第一話は、小学生の少年の父親の、出勤前に宇宙人に連れ去られたという訴えに隠された謎を解決する話。父親をさがしている少年に出会った、メゾンのメンバーたちは人肌脱ごうと、父親の勤務しているレストランに行くと、その父親はちゃんと出勤していている。さては、この少年の虚言か、あるいは夢でも見たのか、となりそうになるのだが、ここで、レストランの人気メニュー「神戸牛のステーキ200ｇ 880円、ライスセット」に、グルメの藤堂が疑惑を抱くところから謎がほぐれていきます。
第二話は、オジサンメンバーたちが人間ドックを受診している最寄り駅近くの総合病院のクレーマー事件の解決。そこの病院で診察中に、病院の院長の孫娘から、最近、病院の口コミサイトに、毎日大量の悪口の書き込みが投稿されるようになった、という相談をうける。その書き込みは診療科の悪口だけでなく、院長や、その孫娘のプライベートまで貶めるような内容の様子。美人の若い女性が困っているのを見ると放っておけない、メゾンのメンバーが乗り出してきて・・・という展開。
書き込みの犯人らしき、診察方法にイチャモンをつけることの多い、若年性アルツハイマーの男性患者がいて、犯人は彼か、あ彼の家族ではと調査をすすめるのだが、彼は診察の時のことを忘れることが多く、投稿に書いてあるような詳細な悪口は書けないようなのだが、という謎解きですね。
第三話は、独居の裕福な老人の悩み事や、ぐちを聞いてあげる、コミュニティサイトに関する事件です。発端は、ひよりが通っているバー「ICE MOON」のバーテンダーの知り合いの女性から持ち込まれた謎解きで、彼女の父親は最近亡くなったのだが、遺品を調べていると高価な時計や現金も死亡前の3ヶ月ぐらい前から１０万単位で引き出されていることが判明するさらには、時価３００万相当の絵画も紛失していることもわかり・・というもの。その父親の生前のメールを調べると、「彩香」という若い女性と何度か会っていることがわかる。彼女は「ココロひろば」という悩み事やグチを３０分500円で聞くネットサービスの提供者であることが判明。
どうやら、このサービスを利用している裕福な高齢者はたくさんいて、規定の料金以外の物品や金銭のやりとりもある様子。この真相を調べるため、惣一郎が、彩香と接触するのだが・・・という展開。
第四話では、メゾンのメンバーで、一番の強面の「迫田」さんが、障害殺人の容疑者として引っ張られてしまいます。彼は、コンビニの若い店員と、タバコを買う時に少々揉め、さらに後日、近所の焼き鳥屋で、友人と騒いでいるそのコンビニ店員に遭遇し、再びトラブルになりそうになります。
なんとか、その場は無事に済んだのですが、その夜、その店員が近くの神社で転落死しているのが発見され、迫田さんが疑われることに。彼の危機を救うため、メゾンのメンバーが立ち上がり・・・という展開です。
最終話は、夏目惣一郎の幼い頃に記憶にまつわるもの。彼は、幼い頃に両親と死別しているのですが、それは両親と彼とが夜間に車で崖下に転落した事故によるもので、その時の記憶を失ったままです。
この話で、孤児となった彼を親代わりに育ててくれた男性がガンで病死したため、遺品整理のため、数十年ぶりに故郷へ帰ってくるのですが、そこで町長選挙の対立に巻き込まれ・・という展開です。この夏目の幼い頃の話は初見だと思います。
【レビュアーから一言】
それぞれのメンバーの過去のトラウマや家庭の問題なども無事前まきまでで解決し、定年警察官たちの「勝手な」捜査もまずます円熟味を発揮しています。しかし、第四話で検挙された迫田がやるように、「良い警官、悪い警官」の手法で尋問する後輩たちを撹乱するようなことは、先輩として謹んだほうがよいと思いますね。
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