鬼刑事・迫田の痛恨の迷宮入り事件を再捜査せよー加藤実秋「メゾン・ド・ポリス5」

退職した警察官専用のシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」で暮らす、元警視庁副総監・伊達有嗣、元刑事課の刑事・迫田保、元科捜研の藤堂雅人、元事務官の高平厚彦という一癖も二癖もあるメンバーと、シェアハウスのギャルソンを務める元警視庁捜査一課の刑事・夏目惣一郎、都内の柳町北署の刑事・牧野ひよりが、市中でおきる事件に「勝手に」首をつっこんで、現職捜査官そっちのけで事件を解決していく、定年オヤジ・パワー炸裂のミステリー「メゾン・・ポリス」シリーズの第5弾が『加藤実秋「メゾン・ド・ポリス 退職刑事と迷宮入り事件」(角川文庫)』です。

今巻では、本シリーズ一「昭和な」匂いを感じさせる元刑事課の刑事・迫田保が迷宮のまま退職した痛恨の事件の再操作が始まるほか、元警視庁副総監の伊達が「メゾン・ド・ポリス」をつくった理由が明らかになります。

【収録と注目ポイント】

収録は

第一話 ストーカーで開幕! 迷宮入り事件を追うおじさん軍団
第二話 犯人は縄文人!? 藤堂の科学推理が冴える
第三話 消えたフルートとシェアハウス誕生の理由
第四話 絡み合うナゾ おじさん軍団がたどり着いた真相は!?

となっていて、まずは台東区の簡易宿泊所でテレビの音量をめぐる客同士のトラブルで、片方の男性が包丁で刺殺されるという事件が起きます。

そして、この被害者が十数年前に、メゾン・ド・ポリスの一員の元刑事課の刑事・迫田保が、在職中に関わりながら未解決のままとなった「菖蒲町医師強盗殺人事件」の被害者の老医師の高級腕時計をつけていたことが判明します。この事件では、医師と死亡した夫の診断ミス・トラブルでもめていた患者の妻が容疑者として調べられるのですが、結局、犯人は捕まらず迷宮入りしたというものです。そして、刺殺事件のことを聞いた迫田はじめメゾン・ド・ポリスの面々は、迫田の唯一の汚点の事件の再捜査を「勝手」に始めるのですが、その聞き込みに回った当時の関係者の女性の妹から、医師殺人事件で容疑者となった女性の息子が事件直後、「母親が”ママは取り返しのつかないことをしてしまった”と言っていた。医師を殺したのはやっぱり母親だ」と言っていたという情報を得ます。さて真相は・・・、というのが最終話の謎解きにつながっていきます。

そのあたりはひとまず置いといて、第一話の事件は、この医師殺人事件の聞き込みに行ったイベント企画会社に勤務する「橘麻里」という女性へのストーカー事件の解決です。挙動がおかしい彼女の話を聞くと、2ヶ月前から尾行されたり、じっと見られたりしているようで、留守中に自宅に侵入されてこともある、とのこと。しかし、彼女に訴えで会社のほうも、若い社員をボディガードに付けたこともあるのですが手がかりなし、頼まれたメゾン・ド・ポリスの捜査陣の前にもそういう人物は現れず、とうとう「ひより」が囮となることにしたところ・・・、という展開です。ストーカー被害と、住宅侵入が別の動機なところが謎解きのヒントですね。

第二話は、女子大生の女の子が恋人からプレゼントされたブランド物のバックをひったくりにあい、それが原因で怪我をした上にPTSDになっている事件の解決。彼女は精神的に不安定になっていて、恋人の男性がそばにいないと途端に不安になる状態なのですが、実はその理由は・・・、という筋立てです。彼女の彼氏が病室に見舞いにやってきても、SNSで長時間席を外したり、といった怪しい挙動がヒントになりますね。真相究明の決めては、元科捜研の藤堂の靴から採取した土の分析です。

第三話は、メゾン・ド・ポリスの近所の町内会である「さくら町町内会」での防犯イベントでの盗難事件です。この町内会の役員に頼まれて、防犯イベントでの講演や防犯の実演をすることになったのですが、その会場で同じように出演することになっていた、素人クラッシク・オーケストラのフルートが盗難にあいます。その控室には1千万円クラスのバイオリンもあり、現金も置かれていたのですが、あえて4~50万円クラスのフルートだけが盗まれているので、金目当ての犯行とも思えません。さて、犯人の目的は?、と」いったところです。この話で、「菖蒲町医師殺人事件」で容疑者になっていた女性の勤務先が沖縄のリゾート会社であったり、彼女が学生時代にアルバイトしていた神社の巫女さんの仕草のあたりは覚えておいてくださいね。

最終話では、頻発しているマンホールの蓋とか墓地のステンレス製の花立などの金属泥棒の疑いをかけられたホームレスの男性たちの濡れ衣を晴らすのと、この巻の主題の事件である「菖蒲町医師強盗殺人事件」の真相が明らかになります。そして、金属泥棒の事件のほうの聞き込みで、ホームレスたちが時折アルバイトをシているリサイクルショップへ行くのですが、ここの女性経営者の昔話にでてくるホームレスの男性の暴行殺人事件が「菖蒲町医師強盗殺人事件」で、容疑者となった女性の息子の言った「ママは取り返しのつかないことをしてしまった」という、今回の再捜査のもととなった発言の真相が明らかになるのですが・・と言う展開です。ネタバレを少しすると、本筋の「菖蒲町医師強盗殺人事件」ではなく別の事件の犯人がごろりと出てくるのが、この作者らしいところですね。

【レビュアーから一言】

今話では、伊達元副総監の元部下の息子の本庁の特命班の警部・玉置が登場し、彼が父親を嫌いつつも警察官になった理由のあたりも、この巻の味付けのひとつなのですが、その彼が、「ひより」の捜査能力を高く買うシーンが最後のほうで出てきます。メゾン・ド・ポリスのメンバーたちも、彼女の成長の証をみるようで嬉しくなるのですが、ひょっとすると次巻以降で、「ひより」の刑事としてレベルアップした姿が見られるかもしれませんね。

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