天王寺砦の戦での信長と光秀との結束は強かったー藤堂裕「信長を殺した男2」

戦国時代

「本能寺の変」は、明智光秀が、信長のイジメに逆恨みしたか天下が欲しくなったかした後先考えない衝動的な犯行で、その後、信長の仇をとって天下を平和に導いたのが、豊臣秀吉であった、っといった通説に真っ向から反論している明智光秀の子孫を名乗る「明智憲三郎」氏の著作をコミカライズした、「信長を殺した男〜本能寺の変 431年目の真実〜」シリーズの第2弾。
前巻では、足利義昭を「本圀寺の合戦」で、三好三人衆から守り抜き、信長の信頼を勝ち得た光秀が、浅井長政との死闘を演じる姉川の合戦を経て、比叡山の焼き討ちで主導的な役割を果たすところまでが描かれていたのですが、第2巻では、甲斐の虎「武田信玄」の攻めや本願寺との長い闘争の中で、信長軍の謀将であり主将として織田軍の中心となっていく姿が描かれます。

【構成と注目ポイント】

構成は

第7話 甲斐の虎
第8話 信長包囲網
第9話 本願寺
第10話 天王寺砦
第11話 流浪
第12話 煕子

となっていて、将軍義明の信長包囲陣が動き、甲斐の虎「武田信玄」が動きます。

その破壊力が凄まじいことは、宮下英樹さんの「センゴク」をはじめ多くの歴史コミックで同様で、家康が三方ヶ原で、信玄の軍略のうかうかと乗せられてしまい、徳川軍が粉砕されるところは、やはりセ戦国最強の軍隊といえますね。この凄まじさに打ちのめされ、弱気になる信長に

と光秀が語りかける言葉から、この主従の結束の強さを感じます。

この後、武田信玄没し、将軍義昭が京都を追放され、義昭が策謀した「信長包囲網」は瓦解していくのですが、ここで信長の最大の敵・本願寺との死闘がはじまります。
まず本願寺顕如がうった手は、紀州雑賀衆の頭領・雑賀孫市らによる木津城攻略、そして天王寺砦攻めです。天王寺砦は本願寺のある上町台地に地続きで南に位置する砦で、本願寺攻略の織田軍の要ともいえる戦略拠点です。
ここを守備するのが本シリーズの主人公・明智光秀で、このあたりにも、信長からの信頼感の厚さが伺いしれますね。

ここへ攻めかかる本願寺勢は、雑賀孫市率いる5千人と下間頼廉率いる門徒勢1万です。鉄砲による射撃に優れた狙撃兵の集団と、信仰のおかげで死ぬことを怖れぬ最強の歩兵集団が光秀軍へ襲いかかります。
あわや陥落かと思われた時、信長自ら3千の兵を率いて援軍にかけつけます。

しかし、先頭を駆ける信長に対し、孫市の銃口が火を吹き、信長も足を撃ち抜かれ負傷してしまいます。たしか、この鉄砲傷が化膿して、信長は生死の境を彷徨ったはずで、この負傷から生還したことが信長の運の強さを物語っていると思います。

雑賀衆と門徒衆に取り囲まれ絶対絶命の「天王寺砦」なのですが、織田軍の精鋭たちが集合したこの機をとらえて、一気に顕如のいる石山本願寺の本陣目指して突撃します。このままでは、陣を突っ切られ主将・顕如が危ないと見た、頼廉と孫市は一転、退却し、本陣の守備に回ることとなり、光秀は急死に一生を得ることとなります。

織田信長が自ら軍を率いて大勢の敵方に立ち向かった戦は「桶狭間の戦い」と「天王寺砦の戦い」だけで、信長の戦は、長篠の合戦のように装備をがちっと固めて戦を行う一方で、浅井勢に反旗を翻された金ヶ崎の戦のように不利な事態が起きると即座の撤退をしたりという風に、けして危ない橋を渡らないことが多いので、かなり異色の「戦ぶり」です。本書では、光秀の命を助けるためといった描写が目立つのですが、「天王寺砦の戦」も「桶狭間の戦」と同じように捨て身でかからないといけないほど、本願寺攻めの中で重要性があったと考えるべきなんでしょうね。

主君・信長自らの救援で窮地を脱した光秀なのですが、この戦までの無理がたたったのか「風痢」今でいう赤痢にかかってしまいます。赤痢は戦後間もないころまで、子どもの死亡率の高い疫病で、この戦国時代に罹った場合は、かなりの確率で死を覚悟しないといけないものであったと推測されます。光秀の場合は、妻・煕子の手厚い看護で一命をとりとめますが、代わりに彼女が感染し、亡くなってしまうことになりますね。

この光秀の妻の煕子と彼女の妹で信長のお気に入りの女官・ツマキの死が、今後の「本能寺の変」を決定づけたのかもしれんですね。

【レビュアーから一言】

光秀が赤痢に罹患中に熱にうなされて、越前逃亡中の追想がでてきます。このシリーズでは、美濃の斎藤道三に追われて落ち延びたことになっていて、ここはNHKの大河ドラマとはちょっと違うシナリオになってます。

このシリーズの特徴は、残虐な織田信長と裏切り者の明智光秀というイメージに真っ向から逆らう展開なので、豊臣秀吉がボロボロに描かれているのはいうに及ばず、武田信玄や斎藤道三も征服欲に憑かれた猛獣のような武将に描かれています。ここらは、岐阜県や山梨県の戦国ファンには不満があるかもしれないですね。

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