昭和型リーダーシップから脱却するにはー「スタンフォード式最高のリーダーシップ」

「働き方」が時間外勤務の削減や、ダイバーシティと言った側面から考え方の変革の必要性に直面し、さらには、今回の新型コロナウィルスの感染拡大によるリモートワークの増大といった物理的な大変化の中で、今一番、その在り方が問われているのが「リーダーシップ」というものではないでしょうか。
一頃までの「オレについてこい」ばりの昭和的なリーダーシップをいまだに崇拝しているしては少ないだろうが、かといって、それに変わる考え方ははっきりとしてこない、そんなところが多くのチーム・リーダーの本音というものでしょう。
そんなチームリーダーたち自らのリーダーシップの方向性を模索していくうえで、参考となるのが本書『スティーヴン・マーフィー重松「スタンフォード式最高のリーダーシップ」』です。

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグ リーダシップの原則「We are Leader」
0章 残酷な集団
 ーなぜ組織に「境界線」があるのか?リーダーを取り巻く現実
1章 Assertive Lederが人を動かす
 ー求心力ある先導者
2章 Authentic Leadership
 ー人心を掴む「土台」を築く
3章 Servant Leadership
 ー本物の「信頼」を手繰り寄せる
4章 TransFormative Leadership
 ーチームに「変容」をもたらす
5章 Cross-Border Leadership
 ー持続的な「最良の関係」を確立する
エピローグ リーダーの特権と責任

となっていて、筆者はスタンフォード大学で教鞭をとる心理学者で、東京大学の大学院でも講義をした経験のある人らしく、とかく「リーダーシップ論」というと、自分の主張や成功例を熱く語る、といったものが多いのだが、本書の論調としては学識的で穏やかな論述がされているのが本書の特徴。

さらに本書が書かれた動機は「0章」のところに述べられているのですが、それは

会社の幹部が社員にはわからない自分たちだけの「符牒」を使って会話する場合、そこには地位と強固に結びついた特権意識がある。
そういったケースでは、「みんなにわからなくてもいい。我々がわかっているから大丈夫」という考えを伴うことが多い。情報を独占したり、大切なことや大きなミスを隠したり、重要なプロジェクトを独断的に進めたりする「間違ったリーダー」になりかねない

たとえばプレイング・マネジャーの中には「自分を中心にチームを動かそう」と考える人も存在する。「自分が成果を挙げれば、それが組織のためにもなる」という発想に陥ってしまうのである
(略)
強すぎるリーダーは、たとえ小さなチームであっても「トリクルダウン理論」を持ち込む危険をはらんでいる

となっていて、最近の働く環境やオフィス環境の変化のよって、従来型の「リーダーシップ論」のあちこちが綻びてきている感じを持っているビジネスパーソンの問題意識と同一軌道にあるといっていいですね。

で、こうした問題意識に立ってのリーダー論なのですが、まず提示されるのは「1章」の「アサーティブ・リーダー」。よくいうアサーティブとは積極的・自主的といった意味なのだが、けして、強権的なリーダーではないことにい注意しておこう。このあたりは「欧米型リーダー」が陥りがちな弱点であることを指摘していて、外資系企業出身者のリーダー論の中には時折、こういう傾向を示すものがるので、類書を読むときの注意ポイントですね。かといって「リーダーは弱くていい」という極論もまた間違いで、要は「エゴと謙虚さ、強さと弱さ、バランスがうまくとれていること」であるらしいのでここはチェックしておきましょう。

じゃあ、弱さを認めつつも信頼されるリーダーになる方法は、というところは2章の
「Authentic Leadership」にところに詳述されているのですが、それを磨くには

①「弱さ(Vulnerability)」を認める
②「役割性格」を超える
③「人」と比べない
④自分の「生涯の大きな目的」を見つける
⑤「超・集中状態」になる

という「5つの方法」があるとされているのですが、ビジネス本で詳細なネタバレは良くないので、ここから先は本書で御確認を。

さらに「5章」のところの、モチベーションについての考察で

外的モチベーションは役に立たないどころか「害がある」ことがわかった。特に創造性と主体性が必要なシゴトでは「ボーナスを出すからいい企画を出せ」という外的動機付けがやる気を損ね、結果も出ないことにつながる

として「内的モチベーション」を重視することを主張し、その引き出す方法として

①「仕事の目的」と「メンバー個人の目的」をつなげる
②リーダー自身が変化し、「ロールモデル」になる
③メンバーが自分の仕事に「主体的」に取り組めるようにする
④「メンバーの強みと弱み」を理解する
⑤メンバーの能力を高め、変化を促す「チャレンジ・タスク」を与える

という5つの方法があげられているので、本書で詳しいところを確認してみてはいかがでしょうか。

このほか、本ブログで書いた「withコロナ時代のリモートワークに必要なリーダーシップとは」で紹介した「サーバントリーダーシップ」についても詳しく書かれているのでご参照ください。

【レビュアーからひと言】

最近、こうしたビジネス書のクオリティ証明として「スタンフォード大学」が使われることが多くて、正直、ものによっては「・・・・」というものもあるのだが、本書はスタンフォード大学ものの正統に近い感じで、一つの方向に偏することなく、青売ることなくといった「リーダーシップ」論であるので安心して読んでいいですね。さらに、日本での講義経験や研究生活もあることから、日本固有の文化に根差す課題についても分析されているところが、よその国のことを単純にひっぱってくる「出羽守」本と一線を画すところです。

Bitly

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