旅行自粛の今はグルメ旅本で世界の美味を味わおうー岡崎大五「腹ペコ騒動記」

自分が行く旅行、特に「ツアー旅行」に参加する場合は、「空気を読む日本人」の性格がもろにでてしまって、無茶なことは慎む場合が多いのだが、旅行記として他人の旅行の「ヨタ話」を読む場合は生真面目な視察旅行みたいなものを期待する読者はいないはず。
かといって、ちゃぶ台をひっくり返してしまわれるのも、それはそれで興醒めなもので、ほどよく乱暴で、少し涙が出る程度にボラれて、といった塩梅が大事なのだが、バックパッカーから添乗員に転じた経験のある筆者の本書『岡崎大五「世界満腹食べ歩き 腹ペコ騒動記」』はまさにそのツボにハマった旅行記であります。

【構成と注目ポイント】

構成は

その1 社会主義国キューバの食卓
その2 日式ハマグリと北朝鮮の喜び組
その3 バルという名の食卓
その4 バンコクの朝、蛭、夜
その5 サハラ砂漠腹ペコツアー
その6 タラをめぐる冒険
その7 サーフ・トリップ
その8 シルクロードを行く 前編
その9 シルクロードを行く 後編
その10 アムステルダム・プチステイ
その11 インドかぶれ
その12 おいしい記憶
その13 みそ汁だけ注文すればいい
その14 日米交流の宴
その15 タジン、クスクス、シシケバブ
その16 ジャングルの夢
その17 世界で一番チキンが大好き!
その18 イギリスにはB&Bとパブがあるのだ
その19 どうしたって麺食いである
その20 戦う国の人々のおもてなしの心
その21 ロマンティック街道の魔法
その22 仏教が育てたベジタリアンと、カレーパンの謎
その23 イスタンブールのキョフテ・パーティー
その24 台湾式満腹弾丸ツアー
その25 ホイアンの冬

となっていて、南アメリカとアフリカ以外を制覇するグルメ主題の「旅行記」です。

今のコロナ禍が私達の「旅」から奪ってしまったのは、気ままに好きな土地を訪れる自由とともに、その地で出される、なんてことはないが旨い料理を好き勝手に味わうという自由。
例えば、一人一人二食付きで2500円ぐらいのキューバの安宿(現地では高価なほうらしいが)での

この夜の献立は、レタスとトマトのサラダ、真っ白いごはんに煮豆とビーフステーキである。ステーキはほどょい硬さで普通にうまい。煮豆に手を付ける。豆は黒インゲン豆。あずきより一回り大きい。少々煮崩れている。ごはんに混ぜて口に運んだ。
豆の丸みのある甘さが口中に広がった。ゆっくりと噛む。やわらかい豆が米粒にまとわりついて、豆と米、二種類の甘みが重なり合ってくる。
鼻からはほんのりとビネガーとコリアンダーの香りが抜けていった。
やさしいうまさにうっとりとした。
砂糖など使っていないようである。素朴な味が、かえって素材の味を繊細に伝えてくれる。パエリアやリゾットに愛用されるバレンシア米だから余計に合うようである。

といった、「アロス・コン・フリホーレス・ネグロス」というキューバ版フェジョアーダや、マレーシアのマラッカで食する

丼には麺の上に小さめの焼豚と小松菜が載り、硬めの麺は軽く油を絡めてある。雲呑スープと分けて注文する人がほとんどだ。付け合せの青唐辛子の酢漬けをぶち込み、麺を啜った。
あっさりとした味、小麦のほのかな香り、豚ミンチも入っているようで、焼豚とともに旨味が広がり、青唐辛子がいいアクセントになる。徐々に胃に収まる重量感。
薄日のスープを飲んで、アツアツの分厚い雲呑をホフホフいいながら食う

という雲呑麺など、外国人向けの気取ったレストランでは味わえない、ご当地のグルメがの数々が登場してくるので、おもわず唾を飲み込んでしまうこと間違いないのですが、現在は食そうと思っても、現地にいくことも難しくなっているのが寂しいところですね。

もちろん、グアテマラで密入国者に疑われたり、添乗員時代の娘と二人連れの頑固親父の展開するトラブルの解決とか、いつもの「添乗員」シリーズの風合いのある話もたくさんあるので、筆者の定番のハチャハチャ「旅行記」も楽しむことができます。

【レビュアーから一言】

本書の旅では、治安のいい先進国といわれるところだけでなく、独裁国家で治安は安定しているが公務員への賄賂の横行するトルクメニスタンとか、ちょっと危ない国への旅をします。
特に戦火の治まらないアフガニスタンで独立運動に参加しているの場「パシュトゥーン人」の族長の息子の

「もとは、一人九二年にイギリスが勝手に決めた、デュラント・ライン(パキスタンとアフガニスタンの国境線)がそもそもの間違いさ。国境をインダス川にしておけば、パシュトゥーン人が国境で分断されることはなかった。中途半端な場所に国境を作ったから、パシュトゥーン人は自国を建国できず、パキスタン、アフガン両国とも不安定になっている」
小柄な男がこの地域の実情を話してくれる。
パシュトゥーン人は、アフガニスタン人口の半数近くを占めるが、居住するのは東部から南部に限られており、アフガン全上を統治するのは至難の業だ。

といったあたりは、日本国内にいては聞けない世界の紛争の「裏事情」といったところでしょうね。

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