マルチタスクの嘘にひっかかるなーゲアリー・ケラー「ONE THING」

ひところ、物事を成功させるためには視野を広くもって、同時にいろんなことをしかけていくマルチな取り組みじゃないと駄目だ、と言われてことがあったのだが、その風潮に真っ向から竿を差して逆らい、「一点集中すること」の効果を訴えているのが本書『ゲアリー・ケラー「ONE THINGー一点集中がもたらす驚きの効果」(SBクリエイティブ)』です。

【構成とチェックポイント】

構成は

01 一つのこと
02 月まで届く驚異のドミノ効果
03 成功事例に見る「一つのこと」
PART1 嘘ー私たちを惑わし、つまずかせるもの
04 「すべてのことは等しく重要」という嘘
05 「マルチタスクは効率的」という嘘
06 「規律正しい生活が必要」という嘘
07 「意志の力は常に万全」という嘘
08 「バランスのとれた生活が肝心」という嘘
09 「大きいことは悪いこと」という嘘
PART2 真実ー生産性へのシンプルな道
10 的をしぼり込む質問
11 成功の習慣
12 優れた答えへの道
PART3 目覚ましい成果ー秘められた可能性を解放する
13 目的を持って生きる
14 優先事項に従って生きる
15 生産性を目指して生きる
16 三つの誓い
17 四人の泥棒
18 旅
エピローグー「一つのこと」を活かす

となっていて、最初のところで筆者が強調するのは

「一つのこと」に的をしぼって生きればいいのだ、「一つのこと」は成功の核となるものである、目覚ましい成果の出発点である。

ということ。これに従ってPART1で「成功するためのカギ」といわれる6つのことを「嘘」だと粉砕します。

例えば「すべてのことは等しく重要」ということについては

たとえ100もの仕事を片付けたとしても、それは一つの意義ある仕事に及ばない。すべてが等しく重要なのではなく、成功は最も多くの仕事をした者が勝つゲームではない
と、「やることリスト」は役立たずだ、と言い切る乱暴さであり、「マルチタスク」は「一度に二つ以上のことをしようとすると、自然に焦点が分散し、成果のレベルが下が」り、
成功するために規律正しい人間になる必要はない。事実、一般的に考えられているほどすべてに規律正しくなくても、成功することはできる。理由は単純だ。成功するためには、正しいことを行う必要があるが、すべてを正しく行う必要はないからだ。

といった具合で、ここだけ聞くと、「学校の先生」が怒り心頭に達しそうな発言でありますね。

ただ、筆者の言いたいのは、全体的なバランスを心がけていくことによって、自分の持っている集中力とか時間といった精神的なリソースが分散されてしまうことの危険性で、

「優れた質問」の次は「優れた答え」を見つけなければならない。
答えには三つのレベルがある。「すぐにできるもの」「背伸びしなければできないもの」「可能性があるもの」の三つだ。
(略)
成功者はこの(前の)二つを退ける。並外れて素晴らしいものが出に入るかもしれないときに、ありきたりのものに甘んじる気はなく、「優れた質問」をし、最高の答えを望むのだ

という「可能性」への力の限りの挑戦ですし、

最優先事項とは、最も重要なことをなしとげるために、まさにいま実行できる「一つのこと」である。多くの「優先事項」があるかもしれないが、深く掘り下げれば最も重要なものが一つ見つかる。それが最優先事項、つまり「一つのこと」だ

といった具合の持てる力の「一点集中」ですね。このあたり、スマートに投資効率を考えて、危険分散していく、「アメリカ風」っぽいビジネススタイルとはちょっと違っている気がします。

そして、我々の生産性を削いでいく4つの大敵は

①「ノー」が言えない
②混乱を恐れる
③不健康な習慣
④後押ししてくれない環境

ということのようで、「何かにイエスというなら、何かにノーと言わなければならない」であるとか「「一つのこと」に専念すれば、それだけ混乱が生じる。・・・だが、決して周囲の事情の犠牲になってはならない。自分の「一つのこと」に毎日専念すれば、最後には目覚ましい成果が得られる」というアドバイスは、かなり強いメッセージです。

【レビュアーからひと言】

アメリカのビジネススタイルは、マルチタスクで複数のことにスマートに関わって仕上がて行くようなイメージがあったのですが、そんなものばかりでなく、結構がっつりとした根性系のものもあるんだね、という印象です。テクニカルな手法や分析論が多い、ビジネススクールものばかり読んで、心が冷え込んできたら、本書で心の内燃系を燃やしてみてもいいかもしれません。 

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