仕事の打ち合わせや会議の時には、雰囲気にのまれてしまってまったく発言できなかったといった経験をお持ちのビジネスパーソンは多いのでは?。特に仕事に真面目に取り組んでいる人ほど、会議の準備もきちんとやり資料も整えたのに、緊張したせいか力が全然発揮できない悩みが大きいのではないでしょうか。
そこで、フリーランスでありながら世界のVIPへのインタビューをこなし、経済キャスターとしても活躍中の筆者がコミュニケーションの秘訣についてアドバイスしてくれるのが本書『谷本有香「アクティブリスニング なぜかうまくいく人の「聞く」技術」(ダイヤモンド社)』です。
【構成と注目ポイント】
構成は
はじめに
第1章 「アクティブ・リスニング」は3つのステップで、うまくいく
第2章 「準備のスキル」で本番を最高の状態で迎える
第3章 「本番」では「傾聴」と「問答」の組み合わせで120%の結果を!
第4章 「フォロー」で関係をつなぎ、より大きな結果を出す
第5章 「アクティブ・リスニング」を磨くトレーニングと応用法
となっているのですが、本書の最初のほうで筆者が提案する「アクティブ・リスニング」は「聞き上手」になることではない、と念が押されていて
相手に気持ちよく話してもらい、こちらの考えもさりげなく伝え、信頼関係をつくりながら、自分の目標を実現していく
ことが「アクティブ・リスニング」とされていて、「聞く」と「話す」がセットになっていることに注目しておくべきでしょう。
ここは、本書中でも「話下手の人は話すことを気にしすぎ」と表現されていています。人は誰でも「話たがり」なので、そこをうまく使いながらコミュニケーションをしましょう、ということですね。
なので、「アクティブ・リスニング」では、効果的に「聞く」と「話す」ことが大事で、「準備→本番(傾聴と問答)→フォロー」の3ステップで進めることを提案しています。
筆者によるとコミュニケーションが苦手とか話下手と思っている人は、特に「準備」の段階が十分でないことが原因のことが多いようで、準備のスキルを14個提示しているのですが、僕が特に大事かな、と思ったのは
・自分がめざす目標をまず明確にする
・「目標」までの中間点をいくつか設定する
・相手との違うや共通点から、自分の強み(相手とのちょっとした違いでいい)を見つける
・相手に刺さるテーマや話題か、ライバルと違う切り口は、自分の強みと関連付けてあるか、をチェックして「質問」を考える
・質問をおおまかな台本にまとめてみる
といったところでしょうか。相手とのインタビューや協議についてあらかじめシミュレートしておく、というイメージですね。
この下調べは、相手の部下に接触したり、相手の経歴やバックグラウンドについて調べることも推奨されているので、単純に話し合うテーマだけでなく、相手の行動パターンをシミュレートするところまで及んでいるので、半沢直樹の友人・渡真里ばりの情報収集力が必要になるのかもしれません。
そして、この「準備」をうけて次は「本番」です。ここでは「傾聴」と「問答」という二つのスキルの融合系になりますが、まず「傾聴」で注目すべきは
・本番前に相手と笑い合っているシーンを想い受けべる、というイメージトレーニング
・初対面の相手は、名前を10秒で怯え、繰り返す
・相手の声が大きくなったり、姿勢が前のめりになるような相手の強調したい「ツボ」に敏感
に反応する
といったところですね。「傾聴」というのは、相手あってのことなので、相手の心理状況に密接にあわせていく必要があるということは覚えておかないといけないようです。
ただ、一方で日本人の場合は「ずっと目を合わせて話をするのを苦手とする人が多いので、アイコン宅はやや控えめに。相手の口元や額に視線を合わせたり、時には手元に視線を落とす」といった小技が大事なこともあるようです。
そして、「傾聴」で相手の言いたいことを十分に引き出したら、今度は「問答」による誘導の場面です。ここでは
・質問っぽい質問をせず、慣れないうちは「それで?」の繰り返しで切り抜ける
・話の流れをさりげなくコントロールする「切り返し質問法」や相手の話をいったん切ってペースをおとしたり視点を変える「場面転換法」を必要に応じて使う
・難しい質問をするときは繰り返したり、二社択一で聞く
・グッドコップ(良い警官)とバッドコップ(悪い警官)を使い分ける
といったテクニックが紹介されているので詳しくは本書のほうで。
このほかインタビューや面談が終わってしまったらそこで関係性は御終い、ということが多い中で、これをきっかけに長く続く御贔屓にしていくためのフォローの仕方であるとか、効率的で効果的に、アクティブ・リスニングを身に付けるためのトレーニングの方法がアドバイスされていて、かなり「お得」な一冊になっていると思います。
【レビュアーからひと言】
新型コロナウィルスによって、「面談」というものが「リアル」だけでなく「オンライン」へも広がっているので、今までなんとなくやっていたコミュニケーションのテクニックをさらに磨いていくことがビジネス現場ではさらに求められて来ている状況です。筆者の提案する「アクティブ・リスニング」の価値も上がってきているように思うので、本書でその一端でも学んでみてはいかがでしょうか
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