定年後の生き方のコツは「自分流」と「雑談力」ー斎藤孝「55歳からの時間管理術」

30代、40代の頃は会社内での出世を目指し、同期と張り合ったり、ライバル会社とのしのぎを削ったり、とがむしゃらに働いてきたビジネスパーソンも50歳も過ぎると、体力の衰えも感じ始めるとともに、会社人生のあがりポジションを見えてきて、ちょっと立ち止まったり、これからの人生の過ごし方に思いをはせたり、といったことが多くなるもの。そんな悩める、ベテランのビジネスパーソンに、幅広い分野できらっと光る話をしてくれる筆者が「人生後半戦」の過ごし方をアドバイスしてくれるのが本書『斎藤孝「55歳からの時間管理術」』です。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 人生の中に55歳を位置づける
第2章 55歳の時間割は、自分で自由に決めていいい
第3章 55歳からの時間管理術①ー仕事は社会貢献と考える
第4章 55歳からの時間管理術②ー好きなだけ趣味と教養に没頭する
第5章 55歳からの時間管理術③ー雑談力を磨いて社交を楽しむ
第6章 この人の追い方を見よー人生の先達の老年期に学ぶ

となっているのですが、基本的なスタンスは

暇になるとはゆとりができるということでもあります。これまで忙しさを言い訳にして、取りかかれなかつたことにチャレンジする、またとない機会がめぐってきたと言えるのです。これを生かさない手はありません。
ついに手に入れた自由な時間をどうやって過ごせば、人生を充実したものにできるのか―。それが本書のテーマです。

ということで、誰でもやってくる「山の下り」のところをいかに充実して人生をおくっていくか、のアドバイス本といっていいでしょう。

最初に注目すべきは、「寿命」の考え方で、55歳ともなると、誰しもこれからの人生いつまで生きられるか、ということを考えざるを得ないのですが、これについて筆者は「自分の寿命は自分で決め」ればいいとし、

私がここで思うのは、自分で寿命を定めてそれに向かって生きている途上の死であれば、それは「ing」、すなわち現在進行形の生の中で亡くなることなのではないか、ということです。たとえば90歳まで生きると決めれば、90歳までの人生が常に進行形で進みます。常に「ing」であり続け、そして「ing」の中で亡くなるということです。

と、ある種、乱暴な提案がされていることですね。たしかに、こう考えたほうが人生の残りの時間を、ちびちび削って生きていくより、よほどアグレッシブに生きれそうな気がします。さらに、筆者は、「55歳とは、人から評価されることが終わる年令」でもあり「人から査定されるのはもう終わり。これからは天から評価される、すなわち天命を知る時期」とも言っていて、「天命を知れば、心が自然と落ち着きます。それは、心の中の焦りを排除するということ」が一番大事な心構えのようです。

そうした考えに立つと、第3章から第5章を中心に語られる、55歳からの過ごし方で、ぽいんととなるところを二つあげておくと、まず、「自分」ということをキーワードするのが大前提で、そこに立脚しながら

単純に言ってしまえば、やらなければならない物事に1・2・3と優先順位を振って、その順番にやつていけばよいのです。
(略)
大事なのは、一番やりたいことからやつていくことです。

ということが提案されています。ただここで注意したいのは、これには「予定をポンポン入れること」と「締め切りを設けること」がセットになっていて、悠々自適に暮らすイマージとはちょっと違うところですね。筆者は「生活の中で、ある程度の負荷がかかったほうがいい」とも言ってますので、「好きなことを、忙しくやっている」というイメージなんでしょうか。

もうひとつは

55歳の男性がこの先生きていくために必要な力を一つだけ挙げるとすれば、私は「雑談力」だと思います。これが20代ならそうではありません。20代は、まずは仕事をきちんとすることが大事ですから、必要なものは「段取リカ」や「まねる力」となるでしよう。しかし55歳以降は、「雑談」の生活に占める割合が、どんどん大きくなつていくのです。70歳、80歳を過ぎれば、雑談がより重要性を増します。

ということで、ここは「男は黙って・・」の傾向の強い、昭和な男性は心を入れ替えたほうがよさそうです。

雑談力を上げる話し方のポイントは

①手短で軽やかな発言を心がけること。一つの話は15秒ほどで納める
②話の内容もできるだけ明るくする
③場面に応じた距離感を掴む

ということのようですが、このあたりは筆者の他の本でテクニカルなところを勉強してみてもいいかもしれません。

このほか、第6章では、夏目漱石、孔子、ブッダ、良寛・一休・松尾芭蕉といった偉人たちの老い方について解説されているところは、お好みでお読みください。

【レビュアーからひと言】

人生100年時代が到来しつつある中で、55歳といえばまだその半分ぐらいなのですが、職業生活ということでは、通常のビジネスパーソンは60歳というのが一つの区切りであることはまだまだ変わってません。ということは、それ以降の人生の半分を「職業」や「会社」というものに寄っかからないで生きていかなければいけないわけで、本書はそのよき案内本となるのではないでしょうか。

もちろん、55歳以降も人生の中心を「ビジネス」におく生き方もあるのですが、その時も、本書でいう「人から査定されるのはもう終わり。これからは天から評価される、すなわち天命を知る時期」という道標は参考になる気がするのですが、いかがでしょうか。

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