恵平は女子中学生の闇を晴らすー内藤了「TURN」

信州の山間の村から東京へ上京し、警視庁に就職した「東京駅」大好きの、新米女性警察官・堀北恵平(通称「ケッペー」)が、東京駅近くの丸の内西署で研修中に遭遇する怪奇事件の謎を、50年以上前の「うら交番」の警察官のアドバイスを受けながら解いていく「東京駅おもてうら交番」シリーズの第4弾が『内藤了「TURN 東京駅うらおもて交番・堀北恵平」(角川ホラー文庫)』です。

地域課と刑事課の研修も終了したケッペーは、今巻から生活安全課の研修が開始し、東京駅での捜査がすくなくなったため、今までのようにベテラン靴磨きの「ペイさん」や、老舗和菓子店の現役女将でホームレスの「メリーさん」の助けを借りるのが少なくなってしまっているのですが、研修中に遭遇した事件を解き明かしていくなかで、仲が良くなった同じ丸の内警察署の新米刑事の平野や鑑識の桃田と「私設」チームを組みながら、事件の謎を解いていくのが今巻です。

【構成と注目ポイント】

構成は

プロローグ
第一章 生活安全課研修
第二章 SOS
第三章 TURN BOX
第四章 死神と呼ばれる検死官
第五章 東京駅うら交番
第六章 丸の内一丁目工事現場にいける男性不審死事件
エピローグ

となったいて、プロローグの「永田刑事」の話のところでは、信州の田舎でおきた、村人を殺して、首を切った上に「肝」を抜くという「肝取り勝太郎事件」という猟奇事件の聞き取りをするところからスタートするのですが、これは本編での謎解きにも関係してくる話ですね。そして、今回、なんと永田刑事は女生徒行方不明事件の捜査のときに、私服で捜査中の警察官を、犯人と誤って絞殺してしまうという殺人を犯してしまうのですが、引き継ぎ本編との関わりは不明なままですね。

で、本編のほうは、今までの刑事課とは全く業務が変わって、防犯研修の手伝いをしているケッペーが、知り合いの同僚刑事・平野から東京駅前の工事現場でおきた転落死事故のことをきくところから開幕します。その事故は、酔っ払ったユーチューバーが工事現場に入り込んで、転落死したもので、そのユーチューバーは、壁とか階段をスパイダーマンみたいに飛び跳ねる「パルクール」のプレイヤーの動画で稼いでいた人物だったものですから、監視カメラの画像から酔って調子にのってパフォーマンスしているうちに足を踏み外して落ちたのだろうという検死結果なのですが、これが後々、本巻の事件に関連してくるので注意しておいてくださいね。

事件は、ケッペーたちが補導パトロール中に出会った女子中学生のグループにおきます。ケッペーたちは、東京駅の近くでグループの一人がお腹が痛くなって困っている女子中学生たちに遭遇し、彼女に着替えの服と生理用品を買ってやって帰宅させるのですが、その腹痛を訴えていた女子生徒が帰宅途中に、下腹部からの出血多量で急死するという事態がおきます。そのグループの一人の生徒からケッペーが聞いた情報では、その死んだ女子生徒は妊娠していて、先輩から教えてもらったサイトから経口堕胎薬を入手して、それを呑んだところ、出血がとまらなくなったのだ、ということです。
自分が気付かなかったため、女子生徒を死なせてしまった、と悔やみ、この情報をもとに捜査をしようとするケッペーに対し、生活安全課の指導警官は、不確かな情報だと捜査することに反対するのですが・・・、という展開です。
もちろん、ケッペーがおとなしく捜査を諦めるわけがなく、同僚の平野と桃田と協力して極秘捜査を展開し、女子生徒たちに経口堕胎薬を売りつけるとともに、死んだ胎児を「引き取る」商売をする「闇サイト」の存在をつきとめるのですが、このサイトの管理者が前にでてきた工事現場から墜落した人物ではないかという疑いがでてくるとともに、死体に隠された事件性を見つけ出す「死神」と呼ばれる女性検死官によって、この墜落した男が当時泥酔状態で工事現場でパフォーマンスができる状態ではなかったことがわかり、一挙に事件が大掛かりなものになっていきます。
生活安全課の「お局」刑事の猛反発を受けながらも、頑固に捜査をする「ケッペーちゃん」の頑固さがいじらしいですね。

そして、今回の謎解きのヒントとなる「うら交番」の柏村巡査部長のサジェッションは、プロローグに出てきた「肝取り勝太郎事件」なのですが、ここで、人間の肝は「薬」として珍重されていた、というほうの情報に惑わされないでくださいね。鍵のほうは、「米搗き屋」をしていて金には困っていなかったはずの人物が、多額の報酬につられて「肝取り」をしていた、ということで、現代の事件の方では、被害者の意外な一面が明らかになっていきます。

【レビュアーから一言】

前巻の最後に、「うら交番」に行った警察官は1年以内に死んでしまう、という話を「ダミちゃん」のマスターから聞いて、「うら交番」の柏村にアドバイスを受けにいくのもおっかなびっくりの平野と恵平なのですが、今回は旨いと評判の「ほうじ茶」のほかに、安倍川餅もごちそうになります。機械ではなく、臼と杵でついたもので

網の上の餅は見る間に膨らみ、焦げ目が裂けて白い玉がせり上がり、プッと小さく息をした、柏村は火を止めて、湯を張った丼に餅をくぐらせ、黄な粉を入れた皿に取る。
(略)
柏村は自分のデスクに着いて、豪快に餅を食べ始めた。
恵平もそれに倣った。ひと口かじると餅はとろけて皿に落ち、蜜状になった黄な粉を引き寄せていく。煎った大豆を粉にしたのが黄な粉だと思い出させるその味は、甘みと塩味のバランスが申し分なく、腑に落ちる美味しさだ。

という具合で、現代では失われた「昔の味」ということでしょうか

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