最強の「東大女子」二人が”勉強”を語るー中野信子・山口真由「「超」勉強力」

「勉強」という言葉を聞くと、なぜか頭の中にもやがかかったり、学生時代の記憶がよみがえってきて暗澹たる気持ちになる人も多いかもしれません。
その意味で学歴的にも、経歴的にも「最強」の部類に属する「勉強女子」二人が勉強法について、自分の経験と方法論について余すところなくしゃべり合ったのが本書『中野信子・山口真由「「超」勉強力」(プレジデント社)』です。
とはいっても、世間一般で想像する「血のにじむような努力」とか「愉しみをすべて断ち切っての勉強」といったものではなく、ある意味あっけらかんとした「勉強術」になっているのは間違いないところですので安心してください。

構成と注目ポイント

構成は

はじめにー中野信子
学ぶ、知る、生き延びるー中野信子【思索編】
前進はいつも勉強とともにー山口真由【思索編】
脳が喜ぶ学びの技術ー中野信子【実践編】
反復と継続の極意ー山口真由【実践編】
好きを追究した学生時代ー中野信子×山口真由 STUDY_01
才能の伸ばし方ー中野信子×山口真由 STUDY_02
流動化する社会を生きるー中野信子×山口真由 STUDY_03
おわりにー山口真由

となっていて、二人とも東京大学という日本で一番偏差値が高く、「賢い学生さん」の通学する学校の出身者ながら、「わたしは小さなころからかなりの面倒くさがりで、とにかく「無駄なことをしたくない」と考えて生きてきました。」という中野信子さんと「私はなぜか集団生活からはじぇてしまうタイプでした。理由はわかりませんが、みんなができることをやろうとしても、いつもあまりうまくできません」という山口真由さんが紹介する「自分たちなりの勉強法」であるので、そんじょそこらの受験優等生の勉強法でないことは間違いないところです。

それは例えば、中野信子さんの

わたしが受験生のときに気付いたのは。成績がよかったのに、途中からどんどん成績が落ちていく人がけっこういたことです。そんな人たちを目にして、わたしは「『努力そのもの』が楽しくなりはじめると成績が落ちるのではないか」という仮説を立てました。つまり、 勉強ができるようになることではなく、がんばることが楽しくなってしまう というからくりです。
(略)
なんらかのスキルを本気で身につけたいのなら、無駄なことをしていてはいけないし、 努力そのものを楽しむという罠にハマってはならない のです。  むしろ、 最短距離で能力を上げる戦略を実行すべき なのです

といったところや山口真由さんの

無理をする必要も背伸びする必要もありません。自然にうなくdけいることや、好きな方法で戦うことこそが重要なのです。そして、そんな土俵が用意されていないのなら、自分でそこに土俵をつくってでも、得意な方法で戦えばいい。わたしは、これが仕事や勉強の王道だと思います。

というところに現れていて、どちらかというと唯我独尊というか、我が道を行く戦法なのですが、学生時代はともかく、いろんなアドバイスがとびかってくる社会人になってからの戦法としては、これぐらいのわがままさが必要なのかもしれません。

こうし自由気ままさは、「安定」していた時代よりも、いままで倒産するとは思ってもいなかった企業が倒産したり、安定していた業界が斜陽になったり、という「不安定」な「現代」にこそ有益な考え方で、中野信子さんの

そんな世の中の流れを鑑みると、わたしは基礎学力が大事だという点にはもちろん同意しますが、はたして受験や試験勉強に打ち込んで学歴や資格を得たからといって、それで安泰とはいえないと感じるのです。  そうではなく、 自分で自分を「よろこびとしての学び」に到達させる力こそが、これからの社会を「生き延びて」いくうえで問われている のではないでしょうか

という言葉は沁みますね。

もっとも、彼女たちが効果的な「勉強法」として推奨する、覚えたことを忘れないようにするには「自分ごと化、すなわちエピソード記憶にするのが有効」とか

まず テキストの目次を見て、自分なりの大まかなロードマップのようなものをつくってみましょう。そうしていったん学ぶべき全容を把握したあとで知識を肉づけしていくと、勉強が進むごとに頭のなかで知識が有機的に結びついていく のです。

であったり、

わたしは、「 知っていることが8割、知らないことが2割」という基準でテキストなどを選んでいます。
(略)
では、まったく新しいことを学習するときは、どうすればいいでしょうか?  そんなときは、 問題集の答えを先に丸読みしてしまいましょう! 教科書なら、理解できなくてもいいのでとにかくすべて読み通してみましょう

といったところは、気軽にマネするわけにはいかないかもしれませんが・・。

このほか、「study1」「study2」のあたりは、勉強はできるんだが、一風変わっていて、フツーの人たちとのコミュニケーションをしていくのに苦労していた彼女たちの、学生時代の悪戦苦闘が語られているので、コミュ障に悩んで斬る人は、人生の道標として参考になる気がしますので御一読をおすすめします。

レビュアーからひと言

この二人の主張は、エリート研究者や成績の良かった優等生の発言ともおもえない、乱暴なキレの良さを持っているのは間違いなくて、最後の章のところで述べられている、

AI時代はクリエイティブな仕事が生き残る」なんていわれるけど、実はそうではないような気がする。
(略)
誰でもできる仕事って、実はさほど取って代わられていないものだから。要するに、クリエイティブかどうかなんて関係なくて、まず人件費を削らなければならない現場から取って代わられるということだよね。
(略)
結論はやっぱり「自分がやりたい仕事」をするのがいちばんいいということになる。みんながやりたがらない仕事から代替されていくのだから、やりたがらないことを無理にやっていてもさほど意味がないかもしれないよね。それよりも、自分のやりたいことを突き詰めていくほうがいい。

であったり、

これからは上からの押しつけがましさのようなものが、組織をはじめいりいろな場所から消えていくはず。・・・そんなこともあって、価値観が固定的な組織は人気がなくなっているんじゃないかな

といったところで如実に現れているような気がします。特に、現代における仕事論や人気のある組織についての切り取り方としては、一・二を争う秀逸さではないでしょうか。先行きの見えない世の中でモヤモヤしている人には、スッキリ感が味わえる一冊です。

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