テクノロジーを”キー”に未来を見通せー佐藤航陽「未来に先回りする思考法」

物事が大きく変化してから、「まさかこんな風になるなんて」と自分の先見性のなさや、先の見通しの甘さを後悔し人はいませんか。「未来」っていうのは、たいてい自分の思っているところと別のゴールに向けっていくか、横のほうにそれていくものです。

未来を少しでも見通したいと思っているあなたに向けて、フォーブス誌「日本を救う起業家ベスト10」に選ばれたメタップスの創業者・佐藤航陽氏が「社会が進化するパターンを見抜き、状況が変わっても未来を見通すことを可能にする」思考法を教えてくれるのが本書『佐藤航陽「未来に先回りする思考法」(ディスカバートゥエンティワン)』です。

構成と注目ポイント

構成は

はじめにーなぜ99.9%の人は未来を見誤るのか
第1章 テクノロジーの変化には一本の流れがある
第2章 すべてを原理から考えよ
第3章 テクノロジーは人類の敵なのか
第4章 未来に先回りする意思決定法
おわりにーBe a doer,not a talker(評論家になるな、実践者たれ

となっていて、まず注視しておきたいのは、本書の書かれたのが2015年の頃で、新型コロナウィルスの感染拡大のような不測の事態は発生していない時の著作であることから、「はじめに」のところの

未来が予測しづらいから、予測を放棄し、変化にすかさす対応する。一見理にかなったこの戦略は、もはや戦略として意味をなしません。変化を見抜くことが難しい時代だからこそ、社会全体のパターンを見抜き、的確に未来を予測し、先回りできた企業と個人が最終的には勝利を収めます。
といったあたりに、若干の修正を施す必要がでてくるのかもしれないのですが、不測の実態が起きたことにより、本書の「予測」の大事さは改めてクローズアップされたような気がしています。

というのも本書が指摘する「テクノロジー」の「人間の拡張」「人間への教育」「掌から宇宙」へという3つの本質は、今回、リアルでのやりとりやアナログでの意思疎通が大きく制限されるという事態の発生で、より影響度を増し、テクノロジーによる私たちの社会の変化が、いや応なしに、急激に加速されたのは、例えばリモートワークやWeb会議があっという間に大増殖した事態を見れば明らかですね。

なので、本書で語られる未来の潮流、例えば

まず考えられるのは、分散型社会システムへの変化です。分散型とは、中心が存在しないことを意味します。近代のハブ型社会のとうに代理人に情報を集約させなくてもそれぞれのノード同士ですぐに情報の伝達ができるのであれば、ハブが存在する意味はありません。

であったり、

分散型の時代においては、選挙や議会すらも中抜きの対象になりえます。政治の世界に入るよりも、機動性も柔軟性も高いビジネスの世界で勝負したほうが、結果的に、早く問題を解決できるかもしれません。

といったことは、私たちがビフォー・コロナの時に考えていたよりも、もっと速度で実現していく可能性が高い、と思っておいたほうがよさそうですね。

そして、本書でAIについて語られる

「人間は人口知能にとって代わられる」という議論には、たびたび欠落しがちなある問いがあります。それは「そもそも人間とな何か」です。
(略)
テクノロジーの性質を考えたとき、人工知能路人間を対立軸で考えることは近視眼的であるといわざるをえません。
なぜなら、今後、テクノロジーの進化によって、「人間の機械化」と「機械の人間化」が同時に進んでいき、人間という存在そのものもテクノロジーによって変化してくからです。
(略)
テクノロジーとは、単独で存在するものではなく、最終的には人間そのものと融合することが運命づけられたものです。「人工知能か人間化」という単純な対立軸で考えるべきではないでしょう

といったあたりを読むと、「新しいテクノロジー」に対して、ディストピアの側面をまず強調する方々は考え方をもう少し柔軟にしないといけないことを痛感すべきですね。

さらに、本書が提案する「未来に先回りする思考法」として

短期間で大きな企業をつくりあげた企業経営者に会うと、意外な共通点があることに気付きます。実は、彼らが、コミュニケーション能力が高く、リーダーシップや人望にあふれるスーパービジネスマンであることは稀です。そのかわり、彼らが共通して持っているのが「世の中の流れを読み、今どの場所にいるのがもっとも有利なのかを適切に察知する能力」です。

として、重要なのは

①常に原理から考える
②テクノロジーの現在を知る
③タイミングを見極める

の3つなのだそうですが、詳細のところは原書で学んでくださいね。

このほか「一回一回の成否に一喜一憂せずに、パターンと確率ができるまで「実験」だと割り切って量をこなすことが重要」とか「ロジカルシンキングは、他人を説得する際には絶大な力を発揮する一方、物事の成否を見極めるには、実はそれほど役に立ちません」といった先の見えない中を泳いでいくアドバイスもしっかりありますので、それぞれに探してみてください。

レビュアーからひと言

今、どんな昭和な人でも覚えてしまったZoomにしても、1年前にはテレビ会議自体が際モノ扱いされてたのですから、隔世の感があります。本書でアドバイスするように、未来を見通して待ち構えておくことが成功の秘訣のようです。
その上で、本書の最後のところで筆者は

現代は「行動する人」が多くを得る時代です。
(略)
知識は、得た瞬間に陳腐化をはじめます。また知識を詰め込んで聞くすることの価値も、ネットのおかげでどんどん薄れています。
これからの時代を生き残るためには、変化の風向きを読み、先回りする感覚が常に必要です。そして、その方法は検索しても出てきません。

と、とにかく行動して実践の場にでることを推奨して締めくくられています。とはいっても、何の目当ても、道標もなく「行動」だけしていては、泥の中に潜り込んでいくだけなのは、ほとんどの人が経験済のこと。本書を、いい「コンパス」にしながら、先の見えない現在を漕ぎ渡っていきたいですね。

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