時代は「正解する力」を求めていないー山口周「ニュータイプの時代」

世代の違いというのは、今に始まったことではなく、古代エジプトの頃から言われていることでいわば恒久的な話といえるのですが、、インターネットやAIといったテクノロジーの飛躍的進化によって、世代による差ではなく、考え方や行動様式の違いが、今ほど大きな問題として取り上げられるのは、世界史的には産業革命時以来、日本史的には明治維新以来のことといえるのではないでしょうか。この問題について、ビジネスでの戦略からキャリア戦略や組織戦略まで幅広く取り上げているのが、本書『山口周「ニュータイプの時代」(ダイヤモンド社)』です。

構成と注目ポイント

構成は

 はじめに
  「20世紀的優秀さ」の終焉
  「正解を出す力」に、もはや価値はない
  オールドタイプは現代の問題を拡大再生産している
  ニュータイプは問題を「発見」できる人
 第1章 人材をアップデートする6つのメガトレンド
  ーニュータイプへのシフトを駆動する変化の構造
 第2章 ニュータイプの価値創造
  ー問題解決から課題設定へ
   1.問題を解くより「発見」して提案する
   2.革新的な解決策より優れた「課題」
   3.未来は予測せずに「構想」する
 第3章 ニュータイプの競争戦略
  ー「役に立つ」から「意味がある」へ
   4.能力は「意味」によって大きく変わる
   5.「作りたいもの」が貫通力を持つ
   6.市場で「意味のポジション」をとる
   7.共感できる「What」と「Why」を語る
 第4章 ニュータイプの思考法
  ー論理偏重から+直感の最適ミックスへ
   8.「直感」が意思決定の質を上げる
   9.「偶然性」を戦略的に取り入れる
   10.ルールより自分の倫理観に従う
   11.複数のモノサシを同時にバランスさせる
 第5章 ニュータイプのワークスタイル
  ーローモビリティからハイモビリティへ
   12.複数の組織と横断的に関わる
   13.自分の価値が高まるレイヤーで努力する
   14.内発的動機とフィットする「場」に身を置く
   15.専門家と門外漢の意見を区別せずフラットに扱う
 第6章 ニュータイプのキャリア戦略
  ー予定調和から偶有性へ
   16.大量に試して、うまくいったものを残す
   17.人生の豊かさは「逃げる」ことの巧拙に左右される
   18.シェアしギブする人は最終的な利得が大きくなる
 第7章 ニュータイプの学習力
  ーストック型学習からフロー型学習へ
   19.常識を相対化して良質な「問い」を生む
   20.「他者」を自分を変えるきっかけにする
   21.苦労して身につけたパターン認識を書き換える
 第8章 ニュータイプの組織マネジメント
  ー権力型マネジメントから対話型マネジメントへ
   22.「モビリティ」を高めて劣化した組織を淘汰する
   23.権威ではなく「問題意識」で行動する
   24.システムに耽落せず脚本をしたたかに書き換える
となっていて、それぞれの項目ごとに、「ニュータイプ」と「「オールドタイプ」の行動パターンと思考法を対比して論じるスタイルになってます。

最初にとりあげておかないといけないのが、「時代認識」のところで、本書では
①飽和するモノと枯渇する意味
②問題の希少化と正解のコモディティ化
③クソ仕事の蔓延
④社会のVUCA化
⑤スケールメリットの消失
⑥寿命の伸長と事業の短命化
という6つの事象が現代動かしているトレンドとされているのですが、本書が書かれたのが2019年で、まだ新型コロナウィルスの感染拡大がない頃なので、現在はこのトレンドがさらに進行したと考えるべきなんでしょう。特に、2019年までは、見通せた経済発展の問題がとても不透明化しているし、さらにVUCA化に至っては、さらに倍加している状況と言わざるをえなくなっていて、その意味で、本書の「予見性」は増加している感じがします。

そして、こうしたところを踏まえて、筆者のいう「オールドタイプ」と「ニュータイプ」の「動き」の違いが論じられていくのですが、いくつかあげると

今日の社会では、ソリューションが過剰にあふれかえる一方で、肝心要の「ソリューションによって解消した課題」が希少になりつつあります。このような社会にあって、いたずらにテクノロジー主導のイノベーションを追究するのは、時代遅れのオールドタイプの思考・行動様式だと言わざるを得ません。
一方、ニュータイプは手段としてのイノベーションやテクノロジーにはこだわりません。手段ではなく、常に「解きたい課題」にレーザーのようにフォーカスを取るのがニュータイプだということです。

であったり、

モノが過剰にあふれる一方で、意味が枯渇している社会にあって、若者が「モノ」に対してハングリーになれないのは当たり前のことです。
このような時代にあって、ひたすらに金銭やモノを褒美としてチッラつかせながら、意味を与えることもなく他人をコントロールしようとするのは典型的なオールドタイプのマネジメントパラダイムであり、今後は有効に機能しません。
一方で、ニュータイプは「意味」を明確にします。常に大きな背景として「意味」を震災ながら、その前景にクリアすべきタスクと目標を示すのがニュータイプです。

と、「ニュータイプ」の特徴を明確化している一方で、「オールドタイプ」に向けては、かなり辛辣で、思い当たる側からはかなりの反発もありそうな感じです。

もっとも、当方が感じたところでは、年代的な部分はあるにせよ、いわゆる「世代の対立」論ではなくて、 ニュータイプとオールドタイプの差は「世界観の差」「判断基準の差」であるので、意識の持ち方とか学習であるとかによって埋められるところもある気がしています。ここは単純な「若者賛美論」のベクトルでとらえないほうが良い気がしているのですがどうでしょうか。

とはいうものの、今まで、世の中を動かす意思決定に大きな力をもっていた「オールドタイプ」にとっては

VUCA化する世界において経験の価値はどんどん目減りしていくことになります。そのような世界にあって「経験・知識の差」と「意思決定の権限」を相関させ、ヒッポ(一番給料の高い人の意見=Highest-Paid Perdon’s Opinion)のシステムを採用するオールドタイプの意思決定スタイルを継続していくことは、極めてリスクが大きいとい言わざるをえません。

というところをみると、かなり危機的な状態を覚悟しないといけないようです。もっとも、かなりの組織では、この意思決定システムに代わる有効なものが存在しないか、うまく機能していないということも事実と思うので、さてこの状況をどうすんだ、ということへの解答は私たちが出さないといけないでしょうね。

本書では「ニュータイプ」と「オールドタイプ」の対比が、24項にわたって展開されているので、オレはどっちだ、と気になる人は目を通してみえてゃいかがでしょうか。(案外に、気にならない人は必読かもしれません。)

レビュアーからひと言

「オールドタイプ」「ニュータイプ」といっても、くっきりと色分けされているものではなく、たいていの人は典型的「オールド」から典型的「ニュー」の間に、グラデーションを持ちながら存在する、ということだろうと思います。本書の最後のところに

ゴンブリッチによれば、「新しい時代への転換」はオールド対応がかつて目指した由奈「ファンファーレを伴ったシステムのリプレース」によってなされるのではなく、誰もが気づかないうちに「人間の見方」が変わることで起きます。

ということらしいので、こうしている間にも、ゆっくりと「変化」は起きているのでしょう。さて、あなたのポジションはどこですか?

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