飼育員探偵が動物園の人気動物の闇に出会うー似鳥鶏「迷いアルパカ拾いました」

楓ケ丘動物園のアミメキリンの飼育員「桃くん」こと桃田くんが、コジラセ系のツンデレ美人獣医・鴇先生、爬虫類館の変態飼育員・服部くん、動物園の広告塔のアイドル飼育員・七森さやちゃんたちと、動物園の動物たちの周辺でおきる珍事件の解決をする動物園ミステリーの第3弾が『似鳥鶏「迷いアルパカ拾いました」(文春文庫)』

前巻きでは、鴇先生の昔の職場と、昔の恋人の悪事を見抜いて、日本国中がバイオテロに巻き込まれることを防止したのですが、今巻では、七森さんの大学時代の親友を巻き込んだ事件に挑みます。

構成と注目ポイント

構成は

第一章 迷いアルパカ
第二章 腹減りハムスター
第三章 ふらつきペリカン
第四章 戦う飼育員

となっていて、まずは楓ケ丘動物園の裏の道に、迷子のアルパカが出現するところから始まります。前巻といい、今巻といい、普段なら日本の路上にいるはうのない動物に楓ケ丘動物園関係者が出くわす出だし設定が続くのですが、今巻では、このアルパカを保護して一時飼育している「アフリカの草原ゾーン」のコーナーに二人の侵入者が現れて、事件性を出してます。
ただ、本命の事件はこちらではなくて、七森さんの大学時代の友人が、彼女やゼゼミが同じで動物園関係に勤めている同級生に「おかしなことはおくていないか?と聞きまわった後、行方不明になった、というものです。

で、こういうことがあると簡単に「荒事」に乗り出すのが「鴇先生」で、「七森」さんと「桃」くんを引き連れて、行方不明になっている同級生・花里千絵のアパートの部屋に侵入するのですが、エアコン点けっぱなしで、飼っているゴールデンハムスターの餌や水もほとんどなくなっているという状態で、突然に家に帰れなくなったという状況を表しているようです。
そして、彼女のアパートで見つけた手帳のメモ書きから、彼女が誰かに付け回されていた情報を得るとともに、彼女のアパートを訪ねてきた。お友達と称する自称・「鈴木」と名乗る男性や、アパートに残されていた名刺から、彼女が取材を依頼したフリーライターの祖父江と協働して、彼女の行方捜しを始めるのですが・・・といった展開です。

ここでヒントになるのは、彼女の勤務先の「動物プロダクション」で、鴇先生や桃くんが訪ねると、彼女が突然姿をくらましてしまったことに腹を立てている様子で、桃くんたちを追い返すのですが、かなり柄が悪くて、「怪しい」感、駄々洩れの雰囲気ですね。

さらに、調査を進めていくうちに、桃さんたち楓ケ丘動物園のメンバーだけでなく、自称・鈴木くんや祖父江さんも何者かに襲撃されて怪我をしたり、スマホやPCが破壊されたりといった被害をうけることとなり、何かの犯罪が絡んでいる気配が濃厚になります。

そして、花崎千絵の行方捜しと並行して、アルパカの飼い主捜しをすすめるために、アルパカを飼育しているいくつかの動物園を訪ねます。訪ねた鷹待山ファミリーパークや見城市動植物園では、芸達者で昔人気のあった、カピバラやペリカンを見つけるのですが、その動物たちが、桃さんが「黒い携帯」を取り出した途端、逃げ出していきます。ここから、花咲の勤務していた動物プロダクションが隠していることと動物たちの共通点、そして花先が姿を消した理由に気付くのですが・・・、という展開です。

ここで読者を安心させておくと、花咲千絵は犯人たちに拉致されていたわけではなく、危険を感じてホテルに身を隠していたことがわかり、彼女が姿を現してから謎が明らかになっていくのですが、ここで実は「味方」と思っていた人物が、実は犯人側だったことが明らかになるのですが、詳細は原書のほうでご確認を。

レビュアーからひと言

今回の事件のメインは、楓ケ丘動物園のアイドル飼育員・七森さやの同級生の失踪に端を発した、動物プロダクションの悪事を突き止めていく話なのですが、その陰に、経営難に悩み、人気動物頼みとなる動物園の苦境が垣間見えて、事件が解決しても何か苦いものが残るような感じですね。一時期、地域活性化の切り札としてあちこちに出来上がった動物園や水族館も多いだけに、軽いタッチが売り物の筆者のミステリーも、ここらはちょっと重くなっている感じがします。

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