「連続殺人鬼 カエル男ふたたび」のネタバレと読みどころをレビュー
名前の頭文字の五十音順に殺人を重ねていくことで埼玉県飯能市の住民を恐怖させた猟奇的殺人者「カエル男」こと「有働さゆり」が、埼玉県警の凶暴な顔つきながら博識と鋭い推理力で知られる渡瀬警部と、推理より先に体が動く熱血漢・古手川刑事によって逮捕され、被害者の関連性も判明し、事件が解決したと思われていた中、「え」で終わった連続殺人が再び「カエル男」によって始まる「連続殺人鬼 カエル男」の続編が『中山七里「連続殺人鬼 カエル男ふたたび」』（宝島社文庫）です。
構成と注目ポイント
構成は
一 爆ぜる
二 溶かす
三 轢く
四 破砕する
五 裁く
となっていて、まず、前作で自分が「カエル男」と思い込み有働さゆりに操られ、古手川刑事に暴行した「当真勝雄」が前作の事件で実行犯だった「有働さゆり」を操っていた精神科医・御前崎教授の自宅を訪問するところから始まります。
「さゆり」の心理操作が巧みであったせいか、五十音順の殺人リストの「お」のところにある「御前崎教授」を殺害するためにやってきた、というわけですね。彼は、そのためにハンマーとビニール紐を用意していたようですが、事件のほうは御前崎邸で大規模な爆発事故がおき、御前崎教授のものと推測される頭皮の破片が発見され、さらに「カエル男」の犯行声明も発見されます。さらに、御前崎教授が備忘録がわりにしていたノートが紛失していることから、このノートがこれからの殺人のリストになるのでは、と心配されることになります。
今度は前の事件の真犯人・有働さゆりに心理操作されたままの「当真勝雄」が自分がカエル男であるとの妄想にとらわれたまま、五十音順の連続殺人の続きを始めたのでは、と皆が恐れている中、次の事件がおきます。それは、熊谷市の携帯の武本校っ場でおきるのですが、その工場で勤務している派遣社員・佐藤が工場内の硫酸プールの中で、首から下が溶けている状態で発見されます。第二の事件の被害者の名字の頭文字は「さ」なのですが、ここでカエル男の「カ行を飛ばしてサ行からはじめる」という犯行声明が工場の入り口ドアに貼ってあるのが発見されます。
唐突に「サ行に飛ぶ」という犯行声明に信憑性が疑われたところなのですが、「し」を頭文字にもつ被害者が出ます。それはJRの神田駅で、「志保美純」という女性が、電車に撥ねられ、ここでもカエル男の犯行声明が発見されたことから、カエル男の連続殺人が今度は「サ行」の頭文字をもつ人々がターゲットになること、さらに前作では飯能市だけに限られていた犯行の範囲が関東圏内に広がったことが判明し、警視庁と千葉・埼玉県警との連携不足や、法務省や国会議員からの横やりの指示などもあって、捜査はどんどん混乱していくことになりますね。ここで、出てくるのが、中山、ミステリーでおなじみの「鶴崎管理官」で、「切り裂きジャックの告白」と同じような大混乱を、捜査本部にもたらすことになりますね。
そして第四の事件の被害者は、松戸市の病院勤務で精神科医の「末松健三」です。この男は、御前崎教授の娘と孫娘が殺害された時に、犯人の精神鑑定を行っていた医者で、ホームレスらしき人物に勤務帰りに拉致され、廃材を破砕する機械に足からゆっくりと砕かれるという拷問のような殺され方をします。
一方、カエル男の連続殺人周辺の人物たちにも大きな変化がおきています。前作の犯人であった「有働さゆり」の弁護士に、あの有能な悪徳弁護士・御子柴礼司が雇われ、検察側が戦々恐々となるなか、なんと有働さゆりが収監されていた医療刑務所を脱走します。今巻の連続殺人の犯人と思われる当真勝雄と彼の精神的捜査者のう動作ゆりが合流すれば、さらに凶悪な殺人が起きることが予測されるところですね。
さらに、御前崎教授が人を操っての殺人を計画した元凶となった彼の娘と孫娘を殺害した古沢も医療刑務所からの出所が間近になっています。どうやら彼は心身喪失を偽っていて、刑法39条を使って刑を逃れようとしているようですね。彼が巧妙に詐病をつかって、検察や裁判官、そして刑務官たちを騙している様子は読者の怒りを買うこと間違いなしですね。
そして、古沢が出所してきた時、最後の事件がおきるのですが、その真相は・・というところで詳細は原書のほうで。
レビュアーからひと言
御子柴礼司が「「有働さゆり」の弁護を引き受けたのは、報酬や国選という理由ではなく、彼女が御子柴が医療少年院に入所しているときに、彼が改悛するきっかけとなった「ピアノ演奏」をした人物だからのようですね。このへんは、「御子柴シリーズ」の最初の物語「贖罪の奏鳴曲」に出てくるので、興味のある方はそちらもお読みください。
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