「隠れ家」カフェの名探偵は名パティシエでもあるー似鳥鶏「難事件カフェ2 焙煎推理」

街中の繁華街が近く周囲に高層ビルが立ち並ぶ駅前近くにある、カウンターとテーブルが三つあるだけの小ぶりの”隠れ家的”カフェ「Priere」を舞台に、店の経営者。惣司季と、元警察庁のキャリア官僚で推理担当の惣司智の二人をメインキャストに切り広げられる半・安楽椅子探偵風ミステリーの第2弾が本書『似鳥鶏「難事件カフェ2 焙煎推理」(光文社文庫)』です。

前巻で、県警本部長の命を受けて、智を警察に復帰させようとしつこい説得を続ける、県警秘書室の巡査・直井楓(通称「直ちゃん」)の人をのせる巧みな技術によって、警察が抱える迷宮入り間近の難事件を解決する推理提供が定番となった二巻目です。

「隠れ家」カフェの中で事件の謎はすべて解けるー似鳥鶏「難事件カフェ 1」
街中の繁華街が近く周囲に高層ビルが立ち並ぶ駅前近くにある、異世界に「すぽん」と引っ込んでいるような出で立ちの、カウンターとテーブルが三つあるだけの小ぶりの”隠れ家的”カフェ「Priere」を舞台に展開される、半・安楽椅子探偵風ミステリーの第

構成と注目ポイント

構成は

第1話 最高の仲間 奇跡の友情
第2話 理想は不存在
第3話 焙煎推理

となっていて、最初のプロローグのところで、この物語の舞台となるカフェ「Priere」をみつけて、おずおずと入店してくる女性の独白からスタートします。平凡な毎日をおくっているらしい彼女が、元気いっぱいの「直ちゃん」らしき序スェ胃に圧倒されつつも、店や季と智の兄弟に関心を持っていく様子が描かれています。この独白は、巻中にいくつか挿入されているのですが、実は、最後のほうも事件の重要なヒントになるので、気を抜かないようにしてくださいね。

第1話 最高の仲間 奇跡の友情

第1話の「最高の仲間 奇跡の友情」の事件は、小学校の頃から仲のいい4人の友人同士のうち、一人が同泊した別荘の一室で殺されるという事件が起きます。事件がおきたのは、人里離れた海べりの崖際に建てられた別荘の中で、4人が同じところに泊まっているので、そのうちの一人を狙って殺すのは不可能に近く、内部の犯行では、という疑いがかけられます。しかし、この4人はいずれも上流階級の子弟ばかりで、金にも困っておらず、さらに将来性もあるという青年ばかりで、互いを信頼しあっているという状況です。
この難題に対して、智は庭にある古井戸を使えば外部犯でも犯行が可能なことを立証するのですが、犯罪の陰に、被害に巻き込まれた4人の「意識しない」傲慢さゆえの事件であったことと、彼らへの復讐もあわせて面倒をみることになります。

第2話 理想は不存在

第2話の「理想は不存在」では、都心まで2時間かけて通勤しているOLが、いつもの乗降駅でない駅のタクシー乗り場近くのトイレで、腹部にナイフを刺されて倒れているのが発見されます。彼女は、事件のショックで当時の記憶を無くしていて、犯人手がかりはない、という状況です。彼女に一方的に好意をもち、フラれた後、執拗にSNSで嫌がらせをしていたストーカーっぽい男が容疑者として浮かび上がるのですが、彼は犯行が起きた当時、同じ路線の反対方向の電車に乗っていたというアリバイがあって・・、という展開です。
この容疑者のアリバイ崩しが主な推理となるのですが、アリバイを作り上げたのが、被害者のある性格傾向による行為だった、というところがキモになりますね。

第3話 焙煎推理

第3話の「焙煎推理」は、兄弟の営むカフェを訪れた、喫茶店開店間近の男性から、開店予定の店の料理を試食して批評してほしい、という依頼をされるところから始まります。その店は、1階でカフェ、2階で彼の妻の経営する古書店という設えになっているのですが、このカフェで出されたコーヒを口にした全員が「不自然な苦味」を感じて吐き出してしまいます。外部からの忍び込んでしかけた形跡もなく、犯行はその試食会にいた、依頼してきた喫茶店経営者夫婦とその一人息子、季・智兄弟と直ちゃんのうち誰か、ということになるのですが・・・、という展開です。
最初、「季」は「智」を犯人として疑うのですが、実際には、依頼者である・・という筋立てなのですが、その犯人が犯行をしかけた理由に驚かされることになりますね。

第3話の最後まで読んだところで、プロローグのところで始まった、女性の独白が続きます。実は、その結末は別の事件につながるもので、ということで、ここから先は原書のほうで。

レビュアーから一言

第1巻と同様に第2巻でも、それぞれの話にまつわるお菓子のエピソードが出てきます。第一巻では、スポンジにジャムを挟んだシンプルなケーキである「ヴィクトリアン・サンドウィッチケーキ」、メレンゲに様々な材料を加えてオーブンで焼いて膨らませた「スフレ」と菊科の植物で、頭痛の鎮静作用や安眠機能があるとされる「カモミールティー」、砂糖とバターで炒めてkラメリゼした果物の上からタルト生地をかぶせて焼いた「タルト・タタン」、日本ではスポンジかタルト生地の土台、フランスではメレンゲの土台の上にマロンペーストを絞った「モンブラン」のウンチクが語られていました。
第2巻では、フルーツを主体に、ムース、コンポート、ジュレ等を層状にグラス内で重ねた「ヴェリーヌ」、独特の甘さで、好悪が両極端になるドリアンを使った「ドリアン・アイスクリーム」のサンデーといった「変わり種」がでてくるので、話の合間の箸休めに絶好です。

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