鄭和、本国へ帰還。建文帝亡命の罪はどうなる?ー星野之宣「海帝 7」

コロンブス・マゼランといったヨーロッパの大航海時代の百年以上前、アジアの大国・明の三代皇帝・永楽帝から第五代・宣徳帝の時代にかけて、7回のわたって派遣された明の大艦隊の指揮をとって、アフリカまで到達した、異色の宦官「鄭和」の大航海を描いた「海帝」シリーズの第7弾。

前巻で、アラビア商人側に味方するモルディブ諸島を支配する女王と対決し、アル・ラマーというロケット砲に苦戦しながらも、火龍出水という巡航ミサイルで応戦してモルディブ軍を退けた鄭和艦隊であったのですが、その後、インド北部でヴィジャヤナガル王国との戦闘を経ての明国への帰還が描かれるのが本巻です。

構成と注目ポイント

構成は

第48話 必ずまた
第49話 大海に
第50話 死んだらどうなる?
第51話 帰港
第52話 拝謁
第53話 見た!
第54話 真の姿
第55話 第二次更改

となっていて、まずは圧迫を受けている「カリカット」に助力してのヴィジャヤナガル王国の軍勢との戦闘場面でスタートします。ここでも前巻と同様に、鄭和艦隊の義技術の粋を集めた「火龍」と、チベットの高僧である、後のダライ・ラマ一世の超能力によって、敵方を圧倒することに成功します。

ヴィジャヤナガル王国軍を退け、カリカット王国の支持をとりつけて母国へ帰国の途につく鄭和艦隊なのですが、ここで帰国後の鄭和の生命を脅かすのが、途中で捕らえた海賊の「陳祖義」です。彼は、帰国後は、鄭和が建文帝親子を匿っていたことを永楽帝に密告して助かろうと考えています。
明国に帰国すれば、皇帝によって処刑されてしまうかもしれない鄭和を助けるため、艦隊内の炊船兵たちが反乱を起こすのですが、これは鄭和自らの命令で鎮められるます。艦隊司令官としては模範的な行動なのですが、明の首都・応天府では、友人の西廠長官・王啓光を鄭和によって葬られた、東廠長官・蔡全人が着々と鄭和糾弾の手をうってきているので、この清廉潔白な行動が吉とでるか凶とでるかは微妙なところですね。

鄭和の命が助かるかどうかは、海賊・陳祖義の明国皇帝・永楽帝直々の審問の場に持ち越されます。もし、鄭和が処刑されるような気配となれば、ただちに彼の奪還を狙う「黒市党」や鄭和艦隊の兵士たちが城外に控える中、皇帝の裁断は・・・、という展開なのですが、結末は、原書のほうで。

少しネタバレすると、もともと初代・洪武帝から皇帝位を「正統」に譲られたのは「建文帝」で、永楽帝がその正統性を主張しようとすれば、建文帝の存在を根本から否定しないと正統性が保てない、ということと、中国東北地方で、モンゴル相手にともに戦ってきたことを軽視していた蔡全人の「見込み違い」で、宮廷内で権力闘争に背明け暮れていた彼と戦の先頭に立ち続けていた鄭和との違いがはっきりしたということなのかもしれません。

というのも、永楽帝は明のそれまでの皇帝たちとは違って、外征に積極的で世界帝国を目指した人物で、皇帝即位後も、自ら北方への親征も行っています。宮廷内でごちゃごちゃ自らの権勢拡大に熱心な人物よりも、艦隊を率いて南方諸国をおさえてくれる鄭和のほうが「使いみちのある」臣下であったことは間違いありませんね。

レビュアーから一言

今巻までで、第7次まで行われた鄭和の遠征のうち、第2次までが描かれることなりました。第2次までの遠征は、初代皇帝・洪武帝の融和政策から、侵略戦争も辞さない積極外交へ転じた永楽帝の対外政策の南方部分を受け持ったもので、苦労はあったものの、威勢のよいものでありました。これ以後、鄭和艦隊は南方諸国の政治問題に深く首を突っ込んでいくことになりそうで、様々な波乱がありそうですね。

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