市立高校シリーズのメインキャストたちの謎解きの拾遺集ー似鳥鶏「家庭用事件」

某市立高校の美術部のたった一人の部員で、なにかと揉め事を引き寄せる体質の「葉山くん」を語り部にして、ヒロインは、演劇部の部長で、葉山くんの女王様的存在の「柳瀬沙織」。サブキャストに演劇部所属の演出兼照明担当の「三野小次郎」、吹奏楽部所属の小動物系キャラの「秋野麻衣」、そして、天才にして大変人キャラの「伊神恒」が探偵役を務めて、高校内でおきる謎の事件を解決していく、「市立高校」シリーズの第7弾が『似鳥鶏「家庭用事件」(創元推理文庫)』です。

収録と注目ポイント

収録は

「不正指令電磁的なんとか」
「的を外れる矢のごとく」
「家庭用事件」
「お届け先には不思議を添えて」
「優しくないし健気でもない」

となっていて、まず第一話の「不正指令電磁的なんとか」は、葉山くんが高校1年生の1月頃、第1弾の「理由あって冬に出る」の「壁男」事件と前後するあたりの事件と思われます。この「壁男」事件で、葉山君は、演劇部の部長の柳瀬さんと仲良くなり、名探偵としての才能も目覚めたわけですが、今回は、映像研究同好会とパソコン研究同好会の間で、それぞれの作品制作の主役として、「柳瀬さん」争奪戦を始めているのに巻き込まれることとなります。
この時期、映像研究同好会は3年生の追い出し記念の映画を、パソコン研究同好会はサウンドノベルをつくっているのですが、撮影時期や時間がかぶってしまうという事態になっています。そこで、二つの同好会が話し合って、柳瀬さんのスケジュールを調製したのですが、もともと、映像研究同好会が先鞭をつけていたので、そちらを優先する「契約書」を、それぞれの撮影責任者である映像研の辻さんと、パソ研の三宅さんがかわすのですが、後で契約書をみるとそれぞれの立場が入れ替わっていて、パソ研有利な契約署になっています。画面で契約書を確認し、その場でプリンターで印刷しのに何故・・という謎解きですね。葉山くんは偶然その場に居合わせ立会人とされたことをきっかけに、この謎解き、つまりは、パソ研の三宅さんの仕掛けたトリックに挑むことになります。

第二話の「的を外れる矢のごとく」は葉山くんが2年生となった5月に、弓道場で起きた事件です。その頃はちょうどテスト期間中で部活動は休止の時なのですが、その時に弓道場に誰かが自転車で侵入して、弓道場に置いてあった的紙を貼る「的枠」をいくつか盗み出す、という事件が発生します。もっとも、的枠自体は、千円から二千円ぐらいのそんなに高価なものではないし、かなり使い込んでいるものだったので、なぜ、わざわざ忍び込んで盗んだのか、という謎解きですね。ネタバレを少ししておくと、弓道場への侵入は、的枠目当てではない場合もあるよね、というところです。弓道場はそんなに広大とはいえないので、自転車を乗り回せばぶつかることもあるわけで、というところですね。

第三話の「家庭用事件」は、葉山くんの自宅マンションで起きる事件です。彼は母親と妹と暮らしているのですが、母親が夜勤の時は、中学生の妹の分もあわせて夕食をつくっています。この日も、葉山くんが夕食をつくり、妹はお風呂に入っている時に、突然、停電がおきます。停電は葉山くんの家だけ起きたようなのですが、配電容量も大きくて今まで停電になったこともなく、さらにその時は電気をくう家電も使っていないのに何故・・という謎解きです。
葉山くんの妹がモデル体型の美人で、マンションの彼の部屋の横には年頃の男の子が住んでいる、といったあたりがヒントになるでしょうか。

第四話の「お届け先には不思議を添えて」は、第5弾の「いわゆる天使の文化祭」などでも話題に出ていた、映像研究会のVHSビデオの紛失事件の顛末です。事件が起きたのは、期末テストも終わった7月中旬ごろ。映像研究会のOBの「福本さん」という男性が突然訪ねてきて、映像研が長年の部活動で撮りためたVHSテープを、保管と保存のためにDVD化を提案してくるところから始まります。DVD化は、彼の大学の後輩が格安でやってくれるそうで、保管場所の確保に苦労していた映像研究会の会長となっている、葉山くんと同じクラスの「辻さん」は喜んで承諾します。しかし、テープの数は100本以上あり、そこに居合わせた、葉山くんと、演劇研の「ミノ」がしっかり手伝わされるということに。もっとも「ミノ」くんは、演劇研のVHSも一緒にDVD化してもらう約束をとりつけているので、まあ貸し借り無しというところでしょうか。
ところが、その送ったビデオの一部がテープのびのびの状態になって、返送されてきます。どういう事情でそうなったのか、DVD化してくれる福本さんの後輩の人に問い合わすと、送り返されたビデオはそもそもそちらに届いていない、といいます。さらに、ノビノビになったビデオの一部を復元して再背してみると、映像研の所蔵のビデオとは全く別物で・・・という事件の謎解きです。
少しネタバレすると、そのすり替えられたビデオには、残っていてはマズイ映像が映っていて、その消去を狙ったようなのですが、そのビデオすり替えには、実は葉山くんの知り合いが一枚かんでいて、という筋立てです。

第五話の「優しくないし健気でもない」は、葉山くんの妹・亜梨紗ちゃんの同級生・河戸美悠ちゃんの2歳上のお姉さん・河戸真菜さんに起きたひったくり事件です。彼女は、家から遠いのですが、新宿にある塾に通っていてその帰り道の夜11時頃、バイクに乗った者に後ろからバックを引っ張られるひったくりにあいます。そころが、そのバッグはすぐ先の角を曲がったところに、何も盗まれていない状態で、しかも、くすんでヘタったシロフクロウのぬいぐるみが入れられて発見されるという、奇妙な事件です。
謎の解明のため、いつものように伊神さんに相談すると、彼は、真菜さんの彼氏も含めた関係者の名前を顔写真を送るよう、柳瀬さんとミノくんに指示してくるのですが・・といった筋立てです。葉山くんが調査を進める過程で、妹の通学している学校が中等部と高等部が併設されている少人数の学校であったり、真菜さんの彼氏が抱いている印象と、実際の真菜さんの印象が真逆であったり、といったことがわかってくるのですが、今話の謎には、葉山くんの妹・亜梨紗ちゃん、今話の事件の関係者である河戸真菜さんと妹の美悠ちゃんに共通する「あること」が関係していて・・、という展開です。葉山くんと妹が実は、「手話」で会話していて、といったところがこの話のポイントですね。

レビュアーからひと言

今巻は、このシリーズの第1弾から第6弾までの時系列の中で、こぼれた話を拾い集めた拾遺集といった感じでしょうか。映像研のDVD紛失事件といった事件名が先行していたものや、葉山くんのいままではっきりしなかった家庭環境とかが見えてくる構成となっているので、シリーズの他の巻を読んでから、取り掛かるのをおススメします。

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