母親ゆかりの帯である正絹爪掻本綴袋帯「あやさくら」が年月を経て意識をもつようになった付喪神「桐葉」と、彼女の”ご主人さま”的立ち位置のはずなのだが、完全に下僕扱いされている主人公「加賀見一也」、一也の幼馴染で学級委員長のメガネっ娘女子「近石千里」、古事記に一行しかでてこない影の薄い古代神「くくり姫」とその従者の巫女・黒曜をメインキャストにして、ひきよせられてくる妖怪や人の想いが結集した「あまそぎ」といった怪異を、加賀見一也は「すそはらい」として調伏していく、コメディータッチの「陰陽師」物語の第3弾。
前巻までで、この地域を治める神様「くくり姫」の命令で、呪詛をはらい、あまそぎを鎮める「すそはらい」となった一也と、彼をサポートする付喪神「桐葉」とともに、本格的に「あまそぎ」と対決し始めるのが本巻です。
構成と注目ポイント
構成は
第12話 思い出と幼馴染 1
第13話 思い出と幼馴染 2
第14話 吊り天井固め
第16話 手紙 1
第17話 手紙 2
第18話 手紙 3
となっていて、第12話と第13話は、一也の通学する学校でやたらとカップルになる男女が増えてきて、しかも、一也と偶然廊下でぶつかった女子生徒との間で、
といったメニューが登場するなど、学校内が、完全にリアル・ギャルゲー状態になってしまいます。
おまけに、一也と幼馴染の「ちさと」も、このゲーム状態をひきおこしているであろう「あまそぎ」の宿主の大門ひろしという男子生徒の虜になっていて、という状態で、ちさとの心を取り戻すため、一也が立ち上がるのであった・・・という筋立てです。とはいうものの、一也の行動はちさとの好感度をあげるには一進一退という感じで、なかなか思うようにいきません。最終的に、彼女の心を動かしたのは、汚い二体の人形で
ということで、ここは幼馴染の特権活かしまくり、というオチですね。
第15話から第16話までは、このお笑い系呪術ストーリーには珍しく、ちょっとシリアスな「あまそぎ」の話です。
話のほうは、現在の3年生で、元1年5組の生徒が一人でいると「名護えいこ」という女子生徒が現れて何事かを詰問します。その詰問する内容はうまく聞き取れないのですが、実はその女子生徒は2年前に校舎の屋上から身を投げて自殺していて・・という設定です。
この「名護」という女の子は、本来おとなしい子だったのですが、クラスで人気者の「仁科」という男子生徒のファンクラブに入っていて、いつからか、そのファンクラブの子たちからいじめの対象になっていたのですが、自殺する少し前から性格が変わって、活発でやたらずけずけものを言うようになっていたらしい、ということがわかります。そして、詰問を受けた生徒からの聞き取りでは、彼女は「手紙はどこ」と聞いているようなのですが、手紙の詳細とその理由はわかりません。
そして、調査を続ける一也と桐葉の前に、その「名護えいこ」の亡霊らしきものが」アラられるのですが、それは「えいこ」の化身ではなく、遺髪を媒介にした「かみおに」というあまそぎです。この「あまそぎ」を生み出したのは一体誰で、その目的は・・・といったところがこの話の謎解きとなりますね。
謎解きのヒントは、この怪事件をおっかけている「奈中井ななこ」という1年生の女子生徒で、彼女と「名護えいこ」との関係がキーになりますね。事件の真相には、「名護えいこ」ちゃんの妹思いの自己犠牲が隠れているので、ちょっとホロッとくるかと思います
そして、まがいものではなく、本物の「あまそぎ」と初対決する一也の戦いぶりは・・・という展開です。
今回もアクションシーンのほうは、原書のほうでお楽しみくださいね。
レビュアーから一言
今回は「あまそぎ」との本格対決ということで、かなり派手なアクションシーンが展開されるのですが、それとあわせて、アダルト・ギャルゲーにとりつかれた「ちさと」が過激に、一也に迫ってきたり、といったサービス・シーンもあり、かなり幅広めに楽しめる仕立てになってます。
ちなみに、本のページ調整の関係で、第15話は第四巻のほうに収録されているようなのであしからず。
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