先の見えないビジネス環境には「OODA」が有効ー原田勉「ウーダ・マネジメント」

有効なビジネスモ手法として「PDCAモデル」が多くの分野で採用され、多くの企業や公共体で使われるようになっているのですが、最近、新型コロナウィルスの感染拡大によるビジネス環境の激変などの「非常事態」の際には、後手後手にまわったり、新たな事象に対応できなかったりといった機能不全をおこしている状況が見られるようになっています。こういった状況をなんとかするビジネス手法として、米国海兵隊で採用され、湾岸戦争など現代戦で顕著な成果をあげている「OODA]というマネジメント・システムを解説・紹介してくれているのが本書『原田勉「ウーダ・マネジメント」(東洋経済新報社)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第1章 「観察」は最強の武器になる
第2章 OODAマネジメント
第3章 「観察から始める」を仕組み化する
第4章 「直観で判断する」を仕組み化する
第5章 「適応問題を解決する」を仕組み化する
第6章 OODAマネジメントの事例研究

となっていて、「OODA」というのは、「観察(Observe)」「情勢判断(Orient)」「意思決定(Decide)」「行動(Act)」の一連の行動の頭文字をとったもので、まず注目しておくべきは、ビジネスの世界で金科玉条のように扱われている「PDCA」と違うのは、どちらもミッション(目標、目的)を与えられるのは同じでも、「計画(Plan)」を出発点とせず、「観察(Observe)」から始まるところですね。
つまり、「計画」という形での「理想型」を描き、現状をそれに沿わせていくのではなくて、あくまで、「観察」ででてくる現状と理想の差の埋め方に専心するということで、極度に「現場主義」のやり方であるようです。それは、

私は経営の本質とは、自転車操業にあると考えています。ここでいう自転車操業とは、資金繰りに追われた経営ということではありません。そうではなく、自転車は漕ぎ続けることを止めれば倒れてしまうということです。

といったところに端的に現れているように思います。特に、「PDCAサイクルを回す」というやり方が形骸化すると、「計画」のところに力が入って、実行場面や成果検証の場面では力尽きていることがあるのは間違いなくて、そういうPDCA機能不全の場合に、有効なビジネスモデルといっていいと思います。

さらに、この「OODA」が一番機能を発揮するのは、「未来の可能性の範囲が見えているが確実なものがわからない場合」か「まったく未来が読めない場合」とされているので、afterコロナ、withコロナといわれながらも、先の見えないビジネス環境が続く中で、どう手をうっていったらいいかが必要になる現在にマッチした「方法論」といえると思います。

この「OODA]」システムの具体的な運用方法を概説すると、

①観察

「スクリーニング化」)情報を持っている者がもっていない人に贈るシグナルを誘発して情報祖引き出す)、「焦点化」(観察する対象を選択・限定する)、「起承完結化」(ビジネスのマーケティングから成約までをプロセス化する)、「ヴァーチャル化」(情報の異パン的な法則を見出す)による現状の「観察」をする。

②情勢判断→意思決定→行動

観察の結果に基づいて、目的・願望を実現するための作戦を練り、それを系統的に検証しながら、実行していく。ここでは、「失敗を怖れて時間をロスことよりも、多くの失敗を重ねて素早く学んでいくことのほうが重要」とされています。

このOODAシステムの特徴点は「情勢判断」「意思決定」「行動」が途切れなく、あるいは一体的に行われることで、このあたりが「P(計画)」→「D(行動)」→「C(効果検証」→「A(改善)」という流れが個々に区別されて存在するPDCAシステムとの大きな違いかもしれません。

本書では第3章から第5章にわたって、「OODA」」システムの詳細な運用方法が書いsつされています。

さらに、第6章では、アイリスオーヤマや東レ・ユニクロなど、個々の企業の具体成功事例が掲げられているので、参考になるところも多いと思います。

「OODA」の手法を実践するには、もっとテクニカルなところも必要なので、本書を読みながら実践してみるしかないのですが、PDCAに限界を感じているマネージャーや経営者の方は、一読してみてはどうでしょうか。

レビュアーの一言

PDCAモデルがほとんどの場合に適用できる万能モデルのように言われていたのですが、さすがに定番化が浸透した上に、新型コロナなどの影響によるビジネス環境の大変化で、他のツールも必要になってきた感じですね。PDCAは引き続き安定した分野や定型仕事での効果がは認められるのですが、これからは「OODAシステム」の出番が増えるのかもしれません。

Bitly

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